オール広島でイノベーションの好循環を――イノベーション立県(広島県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第7回。独特かつ多彩な産業集積を強みにイノベーション立県を目指し、人材育成から企業経営のコツまで、あらゆる視点から支援する広島県の取り組みを取り上げる。

» 2017年12月28日 09時00分 公開
[MONOist]

イノベーションの概要

 広島県は2011年7月、「ひろしま産業新成長ビジョン 〜イノベーション立県を実現します〜」を策定した。同県では、2010年の「ひろしま未来チャレンジビジョン」で、「雇用や所得を生み出す『新たな経済成長』を本県発展のエンジンと位置付け、積極的に推進する」としており、県が持続的に発展していくために、「県として、将来を見据えた成長の道筋を明らかにするとともに、県と企業などが、その方向を共有し、一丸となって取り組んでいくことが必要不可欠」との考えから策定されたものだ。

ひろしま産業 新成長ビジョン(画像クリックで拡大) ひろしま産業 新成長ビジョン(画像クリックで拡大)

 2014年度からは、「ひろしまイノベーション・ハブ」を開始。これまでに31回開催している、新しい事業にチャレンジする起業家の経験などに学ぶセミナー「イノベーション・トーク in ひろしま」や若手イノベーター発掘・育成プログラム「イノベーターズ100広島」、ハッカソン・アイデアソンなど、さまざまな活動を展開している。2017年3月には、イノベーション拠点「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」を開設。ワークショップエリア、セミナーエリア、Fabエリア、マルシェエリアが整備され、前述したイベントやセミナーなどに利用されているほか、コーディネーターやFabアドバイザー、コンシェルジュが利用者をサポートする。

 2015年度には、大都市圏などに集中している「経営」や「新規事業展開」などに精通した経験豊富なプロフェッショナル人材を、広島県に還流する仕組みづくりのために「プロフェッショナル人材マッチング支援事業」を開始し、県庁内に「広島県プロフェッショナル人材戦略拠点」を開設。その他「中小企業などプロフェッショナル人材確保支援事業補助金」の運用、県内の地域金融機関や経済団体、産業支援機関、民間人材紹介会社などと連携した協力体制として「広島県プロフェッショナル人材戦略協議会」の立ち上げ、また創業を支援する公益財団法人ひろしま産業振興機構内の「ひろしま創業サポートセンター」設置、2016年4月には、「広島県・今治市国家戦略特別区域 区域計画」に基づいて「広島県スタートアップ人材マッチング支援センター」を開設するなど、手厚く幅広い支援体制を敷き、オール広島でイノベーション立県に向けて取り組んでいる。

イノベーションの地域性〜広島といえば……

 広島県では、「ひろしまの国内外での認知・評価を高めることで,魅力ある地域として『選ばれる』」ことなどを目的として、2014年に「『ひろしま』ブランドの価値向上に向けた取り組み方針」を作成した。それに先立ち、広島県居住者と首都圏居住者に対して行ったブランド調査によると、広島県といってイメージするものとして、両居住者ともに「原爆ドーム」「カープ」「もみじまんじゅう」「宮島」といった資産が登場している。この結果は私たちのイメージとそう遠くはないだろう。

世界遺産にも選ばれている安芸の宮島こと厳島神社 世界遺産にも選ばれている安芸の宮島こと厳島神社

 この調査の結果などを基に、ひろしまの多彩な資産を分類した4つのコンセプトは、「自然と都市が融合した暮らし」、「平和への希望が集う場所」、「内海と山々が織りなす食文化」、「創造性あふれる次世代産業」。コンセプトブックには、「広島には、江戸時代末期まで盛んだった『たたら製鉄』、中世の海洋交通により発展した造船など、モノづくりの土台があり、その上に軍需産業の発展とともに優秀な人材や技術が集まり、時代のニーズに対応した多様な産業を集積してきた。独特の産業集積は、鉄鋼、造船、自動車、繊維、木工、食品加工、サービス業などさまざまな分野において、独創的なビジネスモデルや製品の開発などで世界的に活躍する企業を多数生み出した」(以上、要約)とある。地理的にも九州、四国、山陰、関西エリアの拠点となる位置。広島には、イノベーションの歴史と土壌があるのだ。

ここに注目!編集部の視点

 広島県には、企業規模にかかわらず、また分野を問わず、オンリーワン企業やナンバーワン企業が多い(「企業のための広島県ガイド」というWebサイトに一覧が掲載されている)。つまり、イノベーション、起業のお手本がたくさんあるということだ。

 それを強みに、加速しようという徹底した取り組みは、例えば、ひろしま創業サポートセンターの支援によって、2013年度からの2年間で674件が創業するなど、具体的な成果をあげている。企業のための広島県ガイドに掲載されている、広島県知事 湯崎英彦氏のメッセージには、以下のように書かれている。

さまざまな可能性を持つ本県のモノづくり技術と培われた開発力、チャレンジ精神やフロンティア精神にあふれた県民性は、国内外のさまざまな企業の皆さまとの連携・相乗効果により、絶え間ないイノベーションの好循環を生み出す可能性があるものと信じています

アイデアを形にするだけでなく、プロフェッショナルとのマッチングなど、事業として継続するための支援も受けられる広島県。いつの日か、広島のイメージとして、原爆ドームや宮島と並んで「イノベーション」が登場することになりそうだ。

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