特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年01月16日 10時00分 公開

MONOist 2018年展望:故障予知は前提、“真の予兆保全”を実現するために必要になるもの (2/3)

[三島一孝,MONOist]

故障のデータを作り出す難しさ

 故障予知を進める難しさとして、もう1つ難易度を高めている点が「故障データの少なさ」である。そもそも大型機械や設備が「稼働率」を重視する以上、故障の頻度というのは非常に少ない。先述のOEEの要素にも含まれるが、そもそもの不良率を下げることに製造業は取り組んでおり、米国のGEなどが積極的に活用しているシックスシグマ(欠陥を100万回のうち3.4回に抑える取り組み)など、バラツキと不良を抑える取り組みが定着している※)

※)関連記事:例題で理解する「そもそもシックスシグマって何だっけ?」

 AI関連技術は基本的には学習をベースとしているが、このように故障の回数が少なければ、そもそものデータが少なく、有効な学習を実現することが難しい。では「学習のために機械を故障させるような取り組みをするのか」というと、実際に設備を使用しているユーザー側の工場や設備使用者などにとっては、無駄にコストを増やすことになり、現実的ではないといえる。

 逆のアプローチとして、正しいデータ状況から外れた場合を故障と認定するという方法も可能だが、その場合は意図しない不規則な影響などにより、故障と認定されて止まるという状況を学習によってはじくことが必要になり、これはこれで負担が大きくなる。

故障予知を前提とした製品開発とサプライヤーとの連携

 そういう意味では、故障予知を今後効果的に実現するためには、メーカーが部品レベルから鍵になるセンシングポイントと、基本的な異常データなどを合わせて提供するような動きが必要になる。

 こうしたことが実現可能なのは、自社製品を徹底的に試験できるメーカーだけである。既に自社の製品と故障との相関性があるポイントを徹底的に調べるような取り組みはさまざまな企業で行われている。

 例えば、工作機械大手のDMG森精機は、ドイツの自動車部品メーカーSCHAEFFLER(シェフラー)と協力し、「マシンツール4.0」とした取り組みを2016年に実施した。これはDMG森精機の工作機械に、シェフラーが60個のセンサーを設置。これにより工作機械の稼働データを詳細に取得し、各センサーデータの相関関係などを把握するものだ。実際には60カ所のセンサーから生まれるデータ全てを活用できるわけではなく、さらに有効なセンシングを行うための粒度などの調整も必要となるが、故障予知などに最適なセンシングやデータ、相関関係などを徹底的に分析することで、自社の新たなサービス構築につなげる狙いである。

 メーカーでは自社製品の開発において、多くの試験を実施するが、その中で故障の要件になるような要因を把握して提供することが可能となれば、それが新たなサービスになる可能性も生まれているといえる。

photo シェフラーとDMG森精機が「マシンツール4.0」で具体的に組み込んでいるセンサーの位置 出典:DMG森精機

 既にこうした成果を製品として展開しているのがファナックである。ファナックは電動射出成形機である「ロボショットα-SiAシリーズ」の予防保全を行う「AIバックフローモニター」をPreferred Networks(以下PFN)と共同開発し、2018年1月から受注を開始している。

 これは、射出成形機の消耗品である逆流防止弁の摩耗状態をディープラーニングで評価、予測し、消耗品が「壊れる前に知らせる」という機能である。逆流防止弁の摩耗が進むと、隙間が大きくなり、逆流状況が発生する。この逆流状況のデータ波形をディープラーニングで学習し分析することで、摩耗状況の進行度をスコアリングする。摩耗スコアにより、新品から何mm摩耗したかを判別することができるというものである。逆流防止弁の状況は成形する素材や種類、環境などによって変わるが、通常は分解しないと状況確認ができない。これをAIにより自動化できるようにした。

photo 国際プラスチックフェア2017で披露したAI機能搭載「ロボショット」

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