「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2018年01月30日 10時00分 公開

IHS Future Mobility Insight(1):本当に望まれているのは「自動運転」なのか「予防安全」なのか (3/4)

[松原正憲(IHS Markit Automotive),MONOist]

自動運転技術の普及見通し

 次に、自動運転技術の普及見通しをデータからひもといてみよう。まずは下の表を見てほしい。

世界規模の自動運転技術の普及見通し 世界規模の自動運転技術の普及見通し。普及が着実に進むのは「予防安全」に関わる機能だ(クリックで拡大) 出典:IHS Markit

 これは世界における自動運転技術の新車搭載率の実績と予測である。2016年の実績を見ると、最も搭載率が高いのは「駐車アシスト(視覚、音声ガイド)」で63.0%となっている。これは、車載カメラで車両後方を映し出すバックモニターが北米市場などで義務化されているためだ。

 その次にくるのは「自動緊急ブレーキ」だが、搭載率は13.3%と一気に低くなる。さらに、「ブラインドスポット」「自動ハイビームコントロール」といった予防安全機能、「自動車線維持」などの自動運転機能の搭載率は10%にも満たない状況だ。

 自動緊急ブレーキの開発は各自動車メーカーが注力しており、その進化も著しい。事故原因でいちばん多いといわれている歩行者/自転車の巻き込みや飛び出し、出会い頭の事故を低減させるためには、センサーだけでは不十分だ。見通しの悪い交差点でも十分に機能するセンサーは、現時点では存在しない。

 将来的には自動車同士/自動車とインフラの相互通信で、あらかじめお互いの存在を認知してブレーキをかけるといった機能が必要になるだろう。今後一般道で自動運転車が“多数派”となった場合、必須の仕組みとなることは間違いない。

 普及価格帯の車両の場合、予防安全機能は搭載されていても、自動運転機能が搭載されていない。確かに、各社の最高級ライン(プレミアムブランド)には“自動運転”と呼称する機能が搭載されつつあるし、アウディ(Audi)のように新型「A8」でレベル3の自動運転システムの採用をうたう事例もある。

 ただしそれは、自動車市場全体のほんの一握りでしかない高級車市場にとどまる話だ。普及価格帯の車両への自動運転機能の標準搭載を推し進めている日産自動車でも、5ナンバーミニバン「セレナ」に採用した自動運転システム「プロパイロット」の機能は「同一車線自動運転技術」であり、レベル3の機能である「自動レーンチェンジ」は搭載していない。

 今後、5〜6年のスパンで普及が着実に進むのはレベル0の予防安全だと予測する。高級車についてはレベル2〜3の自動運転システムを導入する予定が報じられているが、絶対数としては少ない。これでは“普及”という観点での評価が難しいし、幅広い普及に向けた兆候が見られないのも現実である。

 もっとも、こうした機能は技術的に不可能なのではなく、搭載していないだけだ。次回でも詳説するが、自動運転車に関する法整備や制度設計は遅れている。また、快適性ではなく「安全な乗り物を提供する」という意味では、自動レーンチェンジよりも、人間同士がアイコンタクトで道を譲り合うといった“あ・うん”の呼吸の方が(現時点では)優れていると言わざるを得ない。

 ちなみに国/地域別で見ると、欧州の標識認識や高度駐車アシスト機能の搭載率は、他地域と比較して高い。しかし、日本/米国/韓国はほとんど横並びだ。なお、中国は自動化された運転支援/予防安全機能の装着率は低い。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.