「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

次世代AUTOSARに照準、世界トップクラスのOSベンダーへ――イーソルCTO権藤氏特集「Connect 2018」(2/2 ページ)

» 2018年01月30日 11時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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アジャイル開発を導入したのは「楽しい環境の中でソフト開発をしたい」から

MONOist APの活動にも用いられているアジャイル開発ですが、国内の組み込みベンダーで採用している事例はあまり多くありません。イーソルではいつごろから導入しているのでしょうか。

権藤氏 イーソルの研究開発部門でアジャイル開発始めたのが2013年で、eMCOSの開発に適用した。社内展開は2015年からで、KPI(重要業績評価指標)の1つにアジャイル開発の浸透率を設定した。現在は、自社開発と受託開発の両方を含めたトータルで浸透率は50%に達している。

 要求が固まっている、変化しない場合のソフトウェア開発はウオーターフォールで問題ない。しかし、IoTや自動運転など、要求が常に変化する場合にはアジャイル開発が必要になる。「要求が変わる」と言ったが、実際のところ本当の要求をつかむのは難しい。しかし何か決めなければ始まらない。だからこそ、トライ&エラーの中で作っていこうということで、問題に正面から向き合ったのがアジャイル開発だ。

 APの活動に取り込んでいるように、欧州の自動車メーカーは既にアジャイル開発を実践している。これに対して日本では、アジャイル開発に向けた取り組みはエンタープライズ分野で止まっているのが現状ではないか。開発サイクルをより小さい単位で区切って早く回していくという意味でアジャイル開発はパラダイムチェンジになるかもしれないが、従来のやり方や知見が役に立たなくなるわけではない。国内の組み込み業界も、忌避せずに正面から取り組むべきではないだろうか。

MONOist アジャイル開発の導入で何が得られましたか。

権藤氏 アジャイル開発を始めた理由は「楽しい環境の中でソフトウェア開発をやれるようにするため」だった。開発規模が大きくなり、コストが上がり、一方で人員は十分にはいない。そんな環境では、やる気が無いと凡ミスが出る。この凡ミスが最も危険だ。

 正直なところ、3Kと呼ばれる組み込みソフトウェア開発の現場は、エンジニアが疲弊し、先行きを感じられず、従って新しい人材が来ない。アジャイル開発を導入したのは、これを変えたい思いがあったからだ。例えば、アジャイル開発では、ゲーミフィケーションによるリワード(報酬)があるので楽しい環境を作りやすい。その手応えは感じている。

MONOist 2018年の目標を聞かせてください。

権藤氏 eMCOSのようにずっと続けてきたことが実を結ぶように、将来に向けた弾込めをしていく。2018年もタフな1年になると思うが、このキツさは夢も希望もないわけではなく、先が見えている中でのタフさだと思っている。当社のコアスピリットにある「楽しいチャレンジ」にのっとり、チャンレンジだけど楽しい1年にしたい。

特集:「Connect 2018」

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 本特集では、ベンダーやユーザー企業、ITやOTなど、さまざまな垣根を超え、全ての物事がつながる「未来」の姿を企業のトップに聞いていきます。

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