「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

創業100年の路線バス会社の危機感、自動運転車で実証実験をスタートモビリティサービス(2/2 ページ)

» 2018年04月16日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
前のページへ 1|2       

「単純に無人化することが目的ではない」

 試乗は無料だが、宇野自動車が用意した非接触ICカードを配布し、キャッシュレス決済を疑似体験してもらう。宇野自動車の乗客の交通系ICカードの利用率は全体の半分程度で、現金で運賃を支払う人も少なくない。カードはFeliCaではなくMIFAREを使用し、コストを抑えた。既存の交通系ICカードを配布するのはコスト面で難しいが、MIFAREは決済システムも含めて安価に実現できることから採用した。

独自のICカードでキャッシュレス決済を疑似体験してもらう(クリックして拡大)

 自動運転バスの導入について、SBドライブ 社長の佐治友基氏や宇野自動車の宇野氏は、単純に無人化することが目的ではないと説明した。「全くの無人では乗客も抵抗感を持つ。現在も、バス乗降時に高齢者が足元に不安を感じたり、転んでけがをしたりすることがあるので、自動運転バスであってもすぐに応対できる車掌のような人間を乗せるべきだ。車掌であれば運転免許がなくても務められるし、ドライバー確保が難しくなっていることの解決にもつながる」(宇野氏)。

 宇野自動車とSBドライブは、山陽団地周辺を走る路線で自動運転バスを使った長期間の実証実験も計画している。山陽団地は1970年代から開発された大規模住宅地で、住民の高齢化が進む。自分でクルマを運転して移動できる住民がいる一方で、運転免許を返納して移動に困る高齢者もいる地域だ。この実証実験では、宇野自動車が中型バスの新車を購入し、SBドライブが自動運転に必要な改造を施す。

 「実際に路線バスとして運用する中で得られた知見はSBドライブに役立つし、自動運転バスの走行実績を積めるのは当社としてもメリットがある。経営環境が厳しくなってからでは新しいことを始めるのは難しい。今から自動運転バスの導入に取り組むことが、今後の競争力になる」(宇野氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.