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» 2018年04月26日 10時00分 公開

トヨタがインド市場に抱く危機感と本気度――スズキとの車両相互補完に至った理由IHS Future Mobility Insight(3)(2/2 ページ)

[濱田理美(IHS マークイット),MONOist]
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「早急な」てこ入れを求めたトヨタの選択

 これらのようにインド市場は成長が著しい一方で、売れ筋は小型車両であり、さらには他の新興市場向けではなくインド市場に適した仕様と価格が求められる。成長路線を描くのには非常にチャレンジングな市場だといえる。

 トヨタは世界トップの規模を誇る自動車メーカーである。そんなトヨタであっても昨今の激変する、ニーズの多様化が猛烈に進む自動車市場において事業の選択と集中を進めている。

 トヨタが注力している事業領域は、得意のCセグメント以上の中大型車両、EVを含めた電動車両の拡大、そして自動運転やコネクテッドカーなどの先進技術領域である。一方、新興市場の小型車領域に関してはダイハツ工業(以下、ダイハツ)との共同組織「新興国小型車カンパニー」で事業を推進することになっていたが、インド市場に関しては具体的な方針が決まっていなかった。そこに今回のスズキとのOEMビジネスの話が舞い込んだ。

 トヨタとスズキの提携協議に関し、トヨタが最もスズキの恩恵を享受したい市場はインドであったことは当初から明白だった。その一方、グループ内で小型車を展開するダイハツがいる中、どういった形での事業を推進していくのかは注目すべき点であった。

 これまでミドルクラスでの車両展開を行ってきたトヨタは、スズキのインドでの潤沢なサプライヤー網を活用してダイハツ開発の小型車を展開することも選択肢の1つだったと推測される。しかしトヨタは、あえてOEMビジネスという形を今回選択した。

 その要因の1つは、冒頭に挙げたインド市場の成長が著しいことである。冒頭のグラフで示した通り、インド市場は早ければ2020年には日本を抜いて世界第3位の新車販売市場に躍り出る見通しだ。トヨタとしてもライバル勢にこれ以上水をあけられないためにも「早急な」てこ入れが必要だったのだ。さらには、ニーズの多様化の中でトヨタグループとしてインドに再投資を行うよりも、上記に挙げたような他の事業領域に資源を集中させる方がトヨタの持ち味を生かして持続的な成長を行えるという判断を下したのだ。

 2017年11月発表の体制変更について、トヨタ 社長の豊田章男氏は「『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』」とコメントしている※)。今回のインド提携はトヨタの強い危機感と次の100年もトヨタとして生き残っていくための本気度を意味すると捉えている。個人的にも、今後のトヨタへの期待度が増す発表であった。

※)関連記事:トヨタがさらなる体制変更、「生きるか死ぬか」という瀬戸際の戦いに臨む

プロフィール

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濱田 理美(はまだ さとみ) IHS マークイット 日本ビークル・プロダクション・フォーキャスト シニア アナリスト

ティア1サプライヤーの国内外OEM向け営業・マーケティングを経て、2012年より現職。国内の車両生産予測に加え、日系自動車メーカーを中心にグローバル主要各国の生産・販売動向、各自動車メーカーの事業戦略や業界動向の調査・分析を行い、顧客の業務全般をサポート。


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