中国人通訳に通じない「しょっちゅう」「ハードルが高い」「反り」元ソニーマンが教える「中国メカ設計事情」(2/3 ページ)

» 2018年05月29日 13時00分 公開
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小学生と話すように

 それでは、これらの言葉を使わないようにして会話をしなければならない、ということになりますが、非常に難しいことです。特に会議などで会話が弾むと、これらの言葉にいちいち気を付けて会話をし続けることはとても困難です。では、どうすれば良いのでしょうか。

 日本企業の部品を扱うほとんどの中国メーカーには、中国人の日本語通訳がいます。しかし、この人たちは通訳の資格を持ったプロではありません。ほとんどの人たちは、中国の大学で日本語学科を専攻し、日本語検定1級(最高レベル)を持っている程度のレベルです。中には卒業後に日本に住んだことがある人もまれにいますが、その期間はせいぜい2年程度です。

 一般的に日本語のできる外国人の使用する日本語の語彙数は、1万語といわれています。そして日本人の大人の使う日本語の語彙数は5万語であり、小学6年生は1万〜1万5千語といわれています。つまり日本語通訳の日本語レベルは、小学校6年生レベルと同じということになります。私たちはこの事実をしっかりと理解して、日本語通訳と会話を進める必要があるのです。

 私は4年半中国に駐在していたので、中国人との会話には慣れています。中国人には、「小田さんの日本語は分かりやすい」と何度も言われたことがあります。ところが、こんな出来事がありました。

 先日、中国人の友達と久々に会って食事に行った時の話です。この方の日本語レベルは中の上レベルです。以前は中国語と英語で会話をしていたのですが、「日本語会話のレベルがかなり上達した」ということだったので、日本語だけで会話をしてみました。ところが、私の「分かりやすい日本語」を話すスキルが落ちていたので、完全な意思疎通が難しかったのでした。

 このような状況で私が気を付けるべきことは、「小学生の子どもと会話している」と思うことです。小学生の子どもがいるお母さんが、子どもと会話が成り立たない、ということはありません。私たちが小学生くらいの子どもと会話するように、やさしい言葉や言い回しに気を付ければ、会話はちゃんと通じるのです。

図3 図3 子どもに分かりやすく話すお母さん

中国人との会話で注意すべきこと

 ここまでは、私が中国人との会話で気を付けていることをお伝えしました。しかし実際の仕事においては、会話だけで情報を伝えることはほとんどありません。後から「確かに言ったハズなのに」になりかねないからです。

 よって、次に挙げる2つのことを注意しています。

 1つ目は、会議では必ずホワイトボードに書きながら、もしくはプロジェクターで投影しながら会話を進めるということです。また現物、写真、表を見ながら会話をします。「あれ」「それ」「数個」「来週中」などの表現は禁物です。具体的にモノを見て会話し、具体的な言葉で文字化をします。

図4 図4 会議は必ず書きながら進める

 2つ目は、基本的に「電話はしない」ということです。電話では、お互いに共通のモノを見ながら話すことができないので、情報の伝達率は極端に落ちます。以前、私があるメーカーで金型の打ち合わせをしました。この打ち合わせでは、初めて会う日本語通訳が対応をしてくれました。日本語レベルは上の中レベルです。ほとんど問題なく打ち合わせは終わりました。

 その後、会社に戻ったところ、どうしても打ち合わせした内容から変更したいところが1箇所あったので、すぐさま日本語通訳に電話をしました。「先ほど打ち合わせした部品で、3つある穴の下にあるリブの寸法ですが……」と会話を進めようとしたのですが、先ほどの通訳がこの私の言葉を全く理解してくれなかったのです。このとき感じた通訳の日本語レベルは中の下レベルでした。とても、先ほどの打ち合わせと同じ通訳とは思えない日本語レベルでした。結局、図面に赤字で記入しメールで送って、変更内容を伝えました。

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