特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

個人で立ち上げたIoTの非営利団体「OSIoT」の成れの果てIoT観測所(45)(1/3 ページ)

本連載「IoT観測所」では、基本的にアクティブというか、いろいろと普及させようと努力している規格だったり団体だったりを紹介してきた。今回はちょっと毛色を変えて、事実上休眠状態に陥っているものを取り上げよう。

» 2018年05月31日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]

 本連載「IoT観測所」では、基本的にアクティブというか、いろいろと普及させようと努力している規格だったり団体だったりを紹介してきた。今回はちょっと毛色を変えて、事実上休眠状態に陥っているものを取り上げよう。

小規模な非営利団体として生まれた「OSIoT」

 2012年8月、米国カリフォルニア州サニーベール在住のマイケル・コスター(Michael Koster)氏は、Open Source Internet of Things(OSIoT)という非営利団体を立ち上げる。コスター氏は、1983年にARCO Alaskaでハードウェアスペシャリストとしてキャリアをスタートさせ、以後Lockheed、Parallel Computing、IMP、Vicom Systems、Unisys、Sun Microsystems、SIT、Carlson Wireless Technology、SanDisk、Armとさまざまな会社を渡り歩いている。ただし2010年あたりからはエンジニアというよりはアーキテクトとしてさまざまな会社と契約を結ぶといったスタイルである。

 特に2014〜2015年にかけては、Armに籍をおきながらISPO Smart Objectsの委員会に参加するとともに、OMAのLWM2M(LightWeight M2M)やIETF(Internet Engineering Task Force)のドラフト作成にも関わっていたそうで、そういう意味ではIoTの標準化作業を主にやっていた感じに見える。このArm以前の仕事は、フラッシュメモリベースのアーキテクチャのモデリングだったり、ワイヤレスベースのIPデバイスに関わる仕事だったりとあまりIoTには関係ないようだが、こうした仕事とは別にIoTの相互運用性に関して個人レベルでかなり興味があったのだろう。幸いというか何というか、コスター氏は自身で会社を興した経験もあり、小規模な非営利団体を立ち上げることにはそれほどちゅうちょはなかったようだ。かくしてOSIoTが生まれた。

 さてそのOSIoTだが、何を目指して、何を作ろうとしたのか。幸いにも創業メンバーの1人でシステムアーキテクトというポジションに居たプラティク・デサイ(Pratik Desai)博士のスライド※)が公開されているので、ここからちょっと抜粋してご紹介したい。

※)関連リンク:スライド「What is a Thing of the IoT?

 まず博士はIoTの“Things”について、“Computation, Communication, Control”の3つの要素から成立する、と説明する(図1)。さて定義はともかく、実際にIoTを使って、例えばHome Controlをやろうとすると、最初にぶち当たるのが相互運用性の壁である(図2)。

図1図2 (左、図1)CPS(Cyber Physical System)はIoTほどには流行っていないものの、これも広く使われている概念である。(右、図2)物理的な通信手段も、通信プロトコルも、内部のデータフォーマットも何ら互換性が無い(クリックで拡大)

 実際には、大分類(Base Concepts)、中分類(Things Types)、小分類(Things Classes)があって、その先にThingsごとのインスタンス(Instance)がくる形になる(図3)。ここで図2の分類に沿って各インスタンスに対して正しく指示を出す(もしくはインスタンスからの通知を正しく理解する)ために、コアとなるセマンティックゲートウェイ(Semantic Gateway)が必要になると説明する(図4)。

図3図4 (左、図3)この3階層で足りるのか? という問題もあるのだが。(右、図4)意味の解釈をここで行わせる形(クリックで拡大)

 このコアの方針が決まると、周辺となるセマンティックゲートウェイの構造(図5)とかマルチプロトコルプロキシ(Multi-protocol Proxy、図6)、ゲートウェイアズアサービス(Getaway as a Service、図7)、セマンティックアノテーションサービス(Semantic Annotation Service、図8)などもおおむね決まってくる。もちろんこれらは高レベルの概念でしかないから、実装にはいろいろ考えなければいけないことはあるだろう。

図5図6 (左、図5)今だとセマンティックアノテーションサービスをDNN(ディープニューラルネットワーク)ベースで作ろうとかいう話になるのかもしれない。(右、図6)「Topic Router」は何となく分かるが「Message Store」がいまいちピンとこない。一対一変換できない(一対多、あるいは多対一/多対多になる)ケース用だろうか?(クリックで拡大)
図7図8 (左、図7)このゲートウェイアズアサービスは、先の図3で言えば階層間に入る形になるように思われる。(右、図8)「SSN」はSocial Security NumberではなくSemantic Sensor Networkの意味。このあたりはW3Cが2005年に策定した概念をそのまま持ってきた模様(クリックで拡大)
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