「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

MaaSを深掘り、新しい街づくりを起点にモビリティと都市交通の在り方を考える和田憲一郎の電動化新時代!(28)(2/4 ページ)

» 2018年06月08日 06時00分 公開

建築家の末光氏と共同検討による「次世代ローカルコミュニティー」とは

和田氏 建築家の末光弘和氏と共同で「次世代ローカルコミュニティー」を検討したと聞いたが、どのようなものか。

柳沼氏 建築家の末光氏からは、モビリティはクルマの概念ではなくもっと自由に考える方が、地域の価値向上に貢献できるとおっしゃっていただいた。次世代ローカルコミュニティーを議論していく中で、これまでのクルマと人の関係と違った関係性をモビリティが持つことによりそこに暮らす人の生活の質を上げ、地域の価値も上がる街づくりにチャレンジすべきだというのが末光氏と私の共通認識となった。

 当社で研究開発を進めている自動運転技術を搭載したクルマは、まずは限定された専用道路でレベル4で走行することを目指している。自動運転車の専用道路として利用可能な道路を、街づくりの段階から敷地に設けることにより、街の中で必要なモビリティサービスをレベル4で実現することができる。末光氏からは、低速のEVが走行する道については、街に住む人との共有空間で、なおかつアスファルトではなく緑道で作ってはどうかといったアイデアをいただき、モビリティのイメージをまとめた(※)

(※)これらのアイデアについては、記事後半の末光氏のインタビューで触れる。

 現在はまだイメージを策定したところであり、これをどのように理解をしてもらい、具体的にどの場所で実現するかなど課題もある。国内に大きな工場を持っている企業などは、工場跡地の利用という点で街づくりなどに取り組む可能性はあると思う。最初の段階では、複数の企業が連携してモビリティを活用できる社宅のような形で提供されていく可能性もあるのではないか。

次世代ローカルコミュニティーを紹介する柳沼氏(クリックして拡大)

バス停までの1kmに困る人へ

和田氏 欧州ではMaaSという、公共交通機関やレンタカー、タクシーなどを組み合わせて人の移動を行うサービスが生まれている。日本ではどのような取り組み、もしくはサービス化が生まれると考えるか。

柳沼氏 まずはどこから始めるか思案のしどころであろう。日本以外ではライドシェアが広がっており、規制や事業環境も地域によって異なる。そのような中で、われわれとしては、もっと地域に貢献するモデルを作りたい。

 例えば、お年寄りの方には1kmの壁というものがある。70歳を越えると1km歩くのが大変だといわれている。バス停まで1km以上ある場合に、パーソナルモビリティを購入してもらうより、地域で車両をシェアするなどして、バスの時刻表と連動して活用できる可能性がある。こうした地域密着型MaaSがありうると思う。

 また自動車が移動の中心になっている地域は、1世帯当たりの自動車保有台数が多いためか、クルマの稼働率が非常に低い。一方で、われわれのように外から永平寺町などを訪問するとタクシーもほとんど無く、移動の足を確保するのがとても大変だ。永平寺町の場合1世帯あたり2台以上のクルマを保有していることもあり、カーシェアのような事業者は存在していない。

 例えば、稼働率の低い軽自動車などを使って永平寺町営のカーシェアサービスを提供できれば、観光客などに貸し出して地域にお金が落ちる仕掛けも作りやすくなる。このような地域の課題解決からモビリティのビジネスモデルを創出していくような取り組みが、これからさまざまな地域で生まれてくることになると思う。

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