標準時間の設定手順よくわかる「標準時間」のはなし(6)(2/4 ページ)

» 2018年06月12日 10時00分 公開

2.標準時間設定の手順

 いわゆる最も一般的な標準時間を設定するためには、次のような基本的な8つのステップを経て設定します。

2.1 標準時間の設定ステップとその内容

(1)作業時間を調査・分析し、設定すべき工程を確定する

 経営的に、いろいろな不具合の発生源となって利益の増加を阻害していて、ボトルネックになっている機械設備や作業工程のみを対象とする場合もあれば、ある職場全体を対象とする場合もありますし、その都度の目的によって決定します。いずれにしても、標準時間の設定対象の選定に当たっては、どのような場合も共通することですが、設定される標準時間を「標準時間資料」として一般化してまとめて、その適用範囲を広げていくような考慮をしておくことが必要です。

 ちなみに、「標準時間資料」とは、仕事を作業あるいは要素作業に分け、同種のものを集めて、寸法、重量、使用工具などの変動要因と所要時間との関係を明らかにしたものです。

(2)設定しようとする標準時間の精度を決定し、それに見合った測定方法を選択する

 作業測定の方法には、ストップウォッチ(Stop Watch)法を始めとして、WF(Work-Factor Plan)法、RWF法(Ready Work-Factor Plan)、MTM(Methods-Time Measurement)法、先の標準資料法などのいろいろな手法がありますが、それぞれ長所短所があります。例えば、RWF法は、0.06秒単位で設定されますが単位が小さ過ぎて約1分程度の標準時間を見積もるのに60分前後の時間を費やすために、設定する手間が非常に大きくなます。このようなことから、要求される精度に合わせて最も経済的な測定手法を選択する必要があります。

(3)予備的な調査を行う

 分析対象の作業が決定したならば、その作業に要求されている品質水準、使用材料、作業方法、使用する機械設備、治工具類、作業者の技量などの制約条件についてあらかじめ調査しておきます。

 またこの時、調査の目的や意義について正しく作業者に理解してもらい、作業者の協力を十分に得られるようにあらかじめ準備しておく必要があります。現場の監督者自身が測定する場合ももちろんですが、特に時間研究の専門家が測定するような場合は、現場の監督者は双方の間に入って作業者の教育に努めるよう協力していくことが大切です。

(4)観測対象の作業内容を何回か観察する

 作業中に発生するあらゆることを記録していきます。現状分析の段階は、現状をありのままに、つまり、発生する全ての事象を“肯定”して、忠実に分析記録していきます。

(5)標準作業方法を決める

 上記の“(3)予備的な調査を行う”と、“(4)観測対象の作業内容を何回か観察する”で得られた資料を基に、現在行われている作業方法や手順が最も合理的な方法であるか否かを検討します。この段階では、全てのことを徹底的に否定する態度をとっていきます。改善とは、最少の手段を用いて、最大の効果を達成することにあります。そのためには、あらゆる行為や活動を不要なものとして否定して、排除し、その後に排除できなかったものを簡素化していきます。

 このような場合、一般的には、下にある表1の「改善の4原則;ECRS」が活用されます。不要な動作を排除したり、必要な動作についてはもっと良い方法に組み合わせたり、幾つか考えられる方法の中から最も良い方法を選び出してその方法で作業ができるように作業条件を整備したり、その新しい方法に慣れるように細部の確認や試行・訓練を行ったりします。これらのような手順を何回か繰り返して「かくありたい(かくあるべき)」という標準作業方法、つまり現状で可能な最善の作業方法を決めます。

表1 表1 改善の4原則;ECRS(クリックで拡大)

 この「改善の4原則」の思考過程に基づいて作業や工程の設計を着実に推し進めていくことが、一見遠回りのようでも、好結果を得るためには必須の原則といえます。

 現状の作業方法を標準作業に改善していく際の基本的な考え方を表2「標準作業作成のためのチェックリスト」に示しておきました。これは、一例ですので参考にして職場に合ったチェッリストを作成しておくといいと思います。

No. 内容
1 並べておく必要がないものは、乱雑置きの方が良い。
2 パレットや台車などの置く位置が悪いために、“歩行や運搬”が発生しても一切認めない
3 治工具にガタができて、そのためにムダな動作や作業が発生していて、それが簡単な修正で補修できる場合でも、その“ムダな動作や作業”を認めない
4 部品などの加工不良が時々発生していて、その再製時間が余裕時間の範囲であっても一切認めない
5 男女の差や体格差によって発生する無効作業であっても、一切認めない
6 作業技術の習熟不足によるムダな作業も一切認めない
7 ……
表2 標準作業作成のためのチェックリスト(例)

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