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» 2018年06月26日 10時00分 公開

小寺信良が見た革新製品の舞台裏(10):水蒸気蒸留が違いを生み出す、日本発の加熱式たばこ「Ploom TECH」 (2/5)

[小寺信良,MONOist]

加熱式たばこはなぜ日本で注目されるのか

JTの岩崎譲二氏 JTの岩崎譲二氏

―― このブームというのは、世界的なものなんでしょうか。

岩崎 日本と諸外国とでは、全く状況が違います。実はこれだけ加熱式たばこが盛り上がっているのは、ほとんど日本だけなんですね。

 これには幾つか要因があるんですけれども、まず諸外国では加熱式たばこではなく、「電子たばこ」の利用が拡大しています。ただこちらは、日本では薬機法の関係でニコチンが入っておりませんので、吸いごたえや満足感という意味では、たばことは異なります。

―― なるほど。日本では、次世代のたばことなると「加熱式」しか選択肢がないということなんですね。

岩崎 それ以外にも、現在の急速な普及には国民性が大きいといわれています。日本人に多くに見られる周囲に対する配慮の意識もあって、紙巻きたばこではちょっとにおいなどが気になるという方が、どんどん加熱式たばこに移行しています。

 加えて日本人は、機器に対するリテラシーが高いという点もあります。こうしたガジェット的なものも違和感なく使い始められるというところが、大きく諸外国と違うところですね。

―― 確かに。USBで充電せよといわれて、やり方が分らないという人は少ないでしょうね。一方諸外国では電子たばこの方が流行しているのは、どういう理由なんでしょうか。

岩崎 例えば欧州ですと、政府が紙巻きたばこから電子たばこへの乗り換えを促進するという流れがあります。税制の面でも電子たばこは優遇されておりまして、紙巻きたばこよりすごく安いんですね。その点加熱式たばこは本当にたばこ葉を使いますので、税制的にはあまり安くならないというところがあります。

3年で製品化を果たした「Ploom TECH」

―― 加熱式にしろ電子式にしろ、こうした紙巻きたばこ以外のたばこが開発された背景というのは、どういうものがあるんでしょうか。

岩崎 もともとJTのビジョンには「共存社会の実現」というテーマがありました。たばこを吸う人も吸わない人も心地よく暮らせる社会を実現しようという考えのもとに、分煙環境の推進であったり、マナー啓発をやってきたんですけれども、やはり根本的にたばこの抱える問題を解決するには、商品から変える必要があるだろうと。

 そういうミッションに対して、墨田(東京都墨田区)にあるJTの研究開発拠点の研究員がもっときれいなたばこを作れないかということで、2013年に開発をスタートしました。

―― 2013年から開発して約3年で製品化は早いですね。その“きれいな”というのは、煙が出ないとか灰が出ないとか、ということでしょうか。

岩崎 臭いが出なかったり、灰や吸い殻が出ないといったところなんですけど、その解決策は極めてシンプルです。

 とにかく燃やさなければ、匂いも灰も出ない。これはもう分かりきったことなんです。コーヒーも、アイスコーヒーよりホットコーヒーの方が強く匂いがするのと同様に、温度が上がれば上がるほど匂いは出てしまう。

 ただ一方で、紙巻きたばこを燃やさず吸っても味がしないように、燃やさないと味がしない。やはり課題としては、クリーンかつおいしいたばこというところが一番の研究課題だったようです。

 その壁にぶち当たった時にヒントにしたのが「水蒸気蒸留」という原理だったんですね。水蒸気蒸留というのは、ビーカーにいれた水を熱して水蒸気を出し、葉っぱとか植物を通過させることで、その成分を抽出する方法なんです。

燃焼、高温加熱、水蒸気蒸留による低温加熱の違い 燃焼、高温加熱、水蒸気蒸留による低温加熱の違い。水蒸気蒸留は直接葉っぱを加熱しない(クリックで拡大) 出典:JT

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