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» 2018年06月26日 10時00分 公開

小寺信良が見た革新製品の舞台裏(10):水蒸気蒸留が違いを生み出す、日本発の加熱式たばこ「Ploom TECH」 (5/5)

[小寺信良,MONOist]
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たばこカプセルに秘められた「Ploom TECH」の技術

―― カプセルのパッケージには「メビウス」の名前がついていますけど、この中に入ってるたばこ葉は、いわゆるメビウスのものなんでしょうか。

岩崎 たばこカプセルの中にはたばこ葉を顆粒状に形成したものが入っていまして、これはPloom TECH専用にブレンドしたものになります。必ずしもメビウスと全く同じたばこ葉というわけではありません。ただし、メビウスのスムーズなテイストというコンセプトは継承していますので、メビウスはいわばコンセプト名ということになります。

―― 1つのカプセルで何回ぐらい吸えるんでしょう。

岩崎 カプセル1つで約50回吸えるようになっています。紙巻きたばこ1本がだいたい7〜8回吸えますので、1カプセルで約7本分ぐらい吸えることになります。

―― しかし、いっぺんに7本分も吸わないんじゃないですかね?

岩崎 Ploom TECHの特徴は、喫煙を中断したいときは、そのまま途中で放置して構わないというところにあります。他のたばこだと、急に呼ばれたら吸いかけを捨てて行かなきゃいけないんですけど、これだと途中でやめてもすぐ再開できるので、会議の直前にパパッと吸って会議に行って、またパパッと吸ってとかできるので、無駄がないとおっしゃるお客さまもいらっしゃいますね。

―― その50回吸ったというのは、どうやってカウントしているのでしょうか。

堀井 交換タイミングは、底部のLEDが青く点滅して知らせます。バッテリー側に空気流入を検知するセンサーが入っていて、空気が入ったら1回とカウントします。人によって1回でいっぱい吸う人もいれば、一瞬スッと吸う方もいらっしゃるので、それもうまくカウントして、一番適切な交換タイミングを知らせます。ですから人によっては50回以上だったり、以下だったりするかもしれませんね。

―― Ploom TECHは日本発の加熱式たばこなわけですが、生産はどうしているのでしょうか。

岩崎 Ploom TECHの開発設計は日本で行いましたが、バッテリーの生産については電子たばこの生産で多くの知見を持つ中国に委託しています。

 実は、Ploom TECHを製品化する上で最も重要な技術はたばこカプセルに秘められています。約50回、変わらない味で吸い続けられるようするには、カプセルの構造やたばこ葉の顆粒のサイズをどうするかなど、さまざまなノウハウが必要になるのです。そのため、たばこカプセルの生産は日本で行っています。販売地域を徐々に広げる形で展開を拡大したのは、たばこカプセルの生産体制の整備を進めていたからという事情もあります。

―― このたばこカプセルにしろカートリッジにしろ、消耗品なので使い終わったら捨てていいんですよね。捨てるものにしては、作りが良すぎる感じがありますが……

堀井 そうなんですよ。実はお店の灰皿に捨てていったら、店員さんが忘れ物かと思って追いかけて届けてくれたという話もありまして……。これをどのように廃棄するかは自治体によってもルールが違ってきますし、われわれとしてもリサイクルを含め、今後の課題だと受け止めています。

―― 例えばこれを「ガジェット」だという見方をすると、だいたい1年ごとにモデルチェンジしてどんどん買い換えるような感覚になるんですが、たばこ業界ってそういうスパンでモノを売る業界とはちょっと違いますよね。

岩崎 他社も含め、実はこれらのデバイスは、細かいマイナーチェンジ繰り返しております。大幅なアップデートは確かにもっと長いスパンになるんですが、ガジェット感もやはり重要だと思っておりますので、そこは絶えず改善をしていくつもりです。

―― JTとしては、加熱式たばこの登場で、今後の市場比率というのはどのようになると予想されていますか?

岩崎 2020年頃には、加熱式たばこはだいたい30%ぐらいのシェアを占めるだろうと見ています。やっぱり紙巻きたばこは独特の味わいですとか、そこに強いロイヤリティーを持たれるお客さまもいらっしゃいますので、今のこの勢いが必ずしも続くとは考えておりません。紙巻きに残られる方、移行される方、それぞれ分かれてくるのかなと考えています。

―― 近年では、喫煙に対する社会的な風当たりが相当強まってきています。加熱式たばこによって、JTとしてどういうフィニッシュを目指していらっしゃるんでしょうか。

岩崎 たばこに対して問題視される面もたくさんありますので、その解決に取り組み、愛煙家の方が気持ちよく、ストレスなくたばこを楽しめる姿を作ること。加えて吸われない方も、迷惑を感じることなく、お互いが気持ちよく過ごせること。たばこ文化の健全な育成、発展というところが、フィニッシュですね。



 IQOSによって「加熱」された加熱式たばこブームに乗って、Ploom TECHは一定の認知度を得た。だが実際には、加熱式たばこの中でもPloom TECHは独自の方式をとっており、味わいに違いがある。

 実際に筆者のまわりの喫煙者に評判を聞くと、IQOSに比べるとニコチン感が足りず物足りないという声もある。他の高温加熱方式と比較して匂いがほとんどない、いつでも吸っていつでもやめられるなどのメリットはあるが、これまでは「IQOSと同じようなモノ」として波に乗ってきた部分もあり、その違いを訴求しすぎると、波からこぼれ落ちてしまう可能性もある。かじ取りが難しいところだ。

 そこはJTも認識しており、2018年2月にはIQOSと同じ高温加熱方式にも参入することが発表された。さらにPloom TECHの進化版として、低温加熱方式の別タイプも投入する予定だ。つまりJTとしては、加熱式たばこ内での細分化を進め、高温加熱と低温加熱どっちがいいのかの二元論でやっていくつもりはないということである。

 個人的には、たばこともまた違うIQOS独特の匂いはなかなか慣れないものがあり、Ploom TECHの無臭は歓迎したいところではある。しかし、日本の税制はそうなっていない。むしろ加熱式たばこも普通のたばこと変わらないと言う認識のもと、課税していく方針だ。

 低温加熱方式は、従来の喫煙習慣と社会の関係を考え直す可能性のあるいい技術ではあるのだが、紙巻きたばこ同様の吸いごたえを求める喫煙者には、そのメリットが見えづらい。この技術がどのような居場所を見つけるのか、あと数年は辛抱して見ておく必要があるだろう。

筆者紹介

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小寺信良(こでら のぶよし)

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手掛けたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

Twitterアカウントは@Nob_Kodera

近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)


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