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» 2018年07月09日 11時30分 公開

IoTは製造業の工場と製品に何をもたらすかMONOist IoT Forum 福岡2018(後編)(2/2 ページ)

[三島一孝,MONOist]
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JASAが取り組むIoTによる新たなモノづくりの価値

 ランチセッションに立った組込みシステム技術協会(JASA)の竹田氏は、製品に組み込むソフトウェア、組み込みソフトウェア開発の観点から、IoTによる新たな製品開発について紹介した。同セッションはアイティメディアのEE Times Japanにおける連載「JASA発IoT通信」の内容を抜粋したものとなっている。

photo 組込みシステム技術協会(JASA)技術本部 IoT技術高度化委員会 委員長の竹田彰彦氏

 JASAでは「IoT技術高度化委員会」を組織しIoT時代における「組み込みソフトウェアおよびデバイスの開発」について議論を進めてきた。その中で企業の枠を超えて新たな製品の形や必要な技術について研究してきたという。

 具体的には「ドローンWG」「エモーションWG」「IoTスキル検討WG」「エネルギーハーべスティングWG」「組み込みIoTモデリングWG」の5つのWGを設置して活動を推進してきた。「WGにはさまざまな企業から参加してもらっているがこの企業側の考えを厳密に適用すると共創は進まない。それぞれの責任は一時横に置いて、これらでどういう技術が適用可能かを純粋に話し合う場としている」と竹田氏は述べている。

 例えば、ドローンWGでは、ドローンの完全自律飛行を実現するのに必要な技術として「衝突・墜落回避システムの搭載」「無線制御不能状態の回避機能」「ADAS(先進運転支援システム)と同様な自動運転制御」「充電ステーションの整備」の4つの技術を製品に組み込む必要がある。これらを実証する場として、神奈川県横須賀市で、横須賀リサーチパーク(YRP)と協力し、横須賀ドローンフィールドでの無線性能実証検証などを行うなど、さまざまな検証を進めているという。

 また、IoT時代の人材育成に向けての取り組みでは「IoTに必要なスキル」を定義。これらの必要な要素を抽出して1つのキャンバスに配置した「IoT/IoEキャンバス」を用意し、これらで必要なスキルや要素などを検討できるようにした。さらに「IoTは技術的要素だけでは、製品の機能や性能が決定されることにならず、ビジネス面での条件が必要になる」(竹田氏)とし、「IoT/IoEキャンバス」と同様の思想の「IoTビジネスキャンバス」を考案。これらを組み合わせることで、求める要素やスキルなどが理解できるようにしている。さらにIoTによる新たなビジネスモデル創出に取り組む中で、スキルマネジメント協会が提唱する新イノベーション理論「I2モデル」などを紹介した。

IoTやAIの具体的な活用と成果を訴えた日立システムズ

 「MONOist IoT Forum in 福岡」では、ここまで紹介してきた基調講演、特別講演、ランチセッションに加え、3本のセッション講演も実施した。その様子をダイジェストで紹介する。

 日立システムズは「日立システムズ IoT・AIビジネスの取り組み」をテーマとし、スマートファクトリー化におけるIoT、AI活用のポイントと具体的な成果について紹介した。

photo 日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 事業部長の前田貴嗣氏

 日立システムズ 産業・流通フィールドサービス事業グループ 産業・流通インフラサービス事業部 事業部長の前田貴嗣氏は「IoTやAIに対するさまざまな要望が高まってきている。特にAIへの期待は高い。ただ、もともとのデータを取得するところが大変である状況は変わらない。現状は『見える化』までの案件が多く、その後の処理は人手を入れるしかないのが現状」と述べる。

 ただ、従来は人手で行ってきたデータ分析についてはAI活用により大幅に向上できることが分かってきたという。「製造業では当たり前の4Mの要素に合わせた分析テンプレートを活用することで、時間を30%削減することができた」(前田氏)とする。

 一方でスマートファクトリー化で必要なセキュリティについても重要性を訴えた。前田氏は「セキュリティ被害が大変なのは、被害を受けた企業は競合や顧客が稼働している中で1社だけ止まることになる点だ。周辺に大きな影響を与えて、競争面で負けることになる」と影響の大きさを主張し、図研ネットウエイブと取り組むセキュリティソリューションを紹介した。

「データ活用のポイント」を訴求したSAS Institute Japan

 SAS Institute Japanは「スマートファクトリー実現に向けた製造現場のデータ活用について」をテーマとし、製造業における「データ活用のポイント」について解説した。

photo SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT&Advanced Analyticsグループ マネージャーの松園和久氏

 SAS Institute Japan ソリューション統括本部 プラットフォームソリューション統括部 IoT&Advanced Analyticsグループ マネージャーの松園和久氏は「製造現場におけるデータ活用の範囲は多岐にわたり保全、製造、品質、生産などさまざまな部分で活用が可能だ。その中で、データ活用で得たアルゴリズムを実装し業務の改善に直結させていくことが重要だ」と同社が訴える「アナリティクスライフサイクル」の価値を訴える。

 さらに、データ分析には「データの収集」「データの分析」「システム化」の3つの領域でそれぞれ課題を抱えているとし「データ収集では必ず因果関係を含む形でデータを取得する必要がある。結果だけや、原因だけでは、有効な分析はできない」と松園氏は述べる。さらにデータ分析においても「データサイエンティストがいないという問題はあるが、現場の業務は現場が一番よく分かっているはず。現場の人が中心となり、ツールやITシステム部門、データの専門家などのサポートを受けながら進める形が理想だ」と松園氏は語った。

PTCジャパンが訴える「ARで埋めるコミュニケーションギャップの価値」

 PTCジャパンは「インダストリアルの現場にデジタル情報の力を授けるARソリューション Vuforia Studio」をテーマとし、IoT化で増えるデータと人の間のコミュニケーションギャップを問題提起。これを解決する手段として「AR(拡張現実)」を活用する意義を訴えた。

photo PTCジャパン 製品技術事業部 IoT/Manufacturing技術本部のシニアIoTプリセールス・スペシャリストである西啓氏

 PTCジャパン 製品技術事業部 IoT/Manufacturing技術本部のシニアIoTプリセールス・スペシャリストである西啓氏は「IoTによるデータの蓄積については数多くの企業が訴えているが、その情報をどう伝えるのかという点はあまり提案されていない。その伝える点のギャップを埋めるのがARだ」とARの価値を述べる。

 具体的には「もっと見える化」「指導案内、作業指示」「遠隔操作」の3つの価値があるとする。「もっと見える化というのは現物に重ね合わせて表示することでさらによく分かるという点である。作業指示についてはデジタルの良さを生かし何度も繰り返せることから教育などでも利用できる」(西氏)とし、米国のキャタピラーやボーイングなどで使われている事例を紹介した。

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