パナソニックを100年支え続けた事業とは? その強さの秘訣を探る(後編)メイドインジャパンの現場力(18)(2/4 ページ)

» 2018年07月25日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

工程内の全自動化が進む津工場

 津工場では、これらの技術力を背景としつつ自動化を徹底的に進めており、工程の多くを全自動化していることが特徴である。一方で、カスタム品など多品種少量生産が求められる製品については、人手を中心としたセルラインを用意するメリハリのある体制を作っている。

 吉岡氏は「自動化しやすい部分とそうではない部分があるが、配線器具には共通のものを大量に作るところがあり、共通化ができる部分は自動化を徹底的に進めている。各種設計から、金型、部品、製品組み立てまで一貫して生産するからこそ、全自動化の領域を増やすことができる面もある」と強みについて述べている。

photo 津工場の製造現場の様子(クリックで拡大)出典:パナソニック

複雑な形状を全自動で成形

 具体的に各工程について見ていく。配線器具の製造は主に金属加工による成形部品と、樹脂成形による外形部品で構成され、これらを組み立てることで完成品とする。

 金属加工はプレス加工などが中心で、順送プレス加工などを全自動化している。また、完成部品を収納する容器の自動交換を行う仕組みを採用し完全無人作業を実現している点が特徴だ。

photophoto 順送プレス加工の説明(右)と加工機(左)。手前のコイル材を機械内に送り、プレスを行う。完成した部品も容器を自動交換する仕組みを採用し全自動化を実現している(クリックで拡大)出典:パナソニック

 また、配線器具の中で重要な金属部品として「錠ばね」がある。前編で紹介した「速結端子」を構成する重要な部品だが、複雑な形状の錠ばねを高速成形する「マルチフォーミング加工」を採用している。

photo 錠ばね部品の種類と生産数(クリックで拡大)出展:パナソニック

 マルチフォーミング加工は、連続的にコイル材を自動送りして打ち抜き加工や曲げ成形加工を自動で行う加工方法。金属材の複雑な形状の成形を簡単に行える他、材料のロスが少なくなる点が利点である。津工場では数多くのマルチフォーミング加工機を採用してこれらの錠ばねを製造しているが、津工場内で製造する完成品向けだけでなく、海外工場にも部品として供給しているという。

photophoto マルチフォーミング加工機が並ぶ様子(左)とマルチフォーミング加工機の内部(右)(クリックで拡大)

 工程の全自動化を進めると、機械の停止が大きな悪影響をもたらすことになる。そこでメンテナンス体制なども高度化を進めている。金属加工の重要なカギを握る金型は津工場内で開発している他、メンテナンスも徹底。IoT(モノのインターネット)活用などは「今後の検討課題」(説明員)としていたが、ショット回数や使用環境などを記録することで、壊れる前にメンテナンスを行う予防保全を行っているという。

photo 金型のメンテナンスの様子。予防保全を徹底しているという(クリックで拡大)

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