ドローンではなく小型航空機をクルマ代わりに、法政大が次世代都市航空交通の研究へUAM(2/2 ページ)

» 2018年07月26日 15時30分 公開
[小林由美MONOist]
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小型航空機を身近な存在に

 HUAMが取り組むモビリティとは、居住者や旅行者の公共機関として、日本国内の都市または郊外の低空で、自動車のような“身近な乗り物”としての電動の小型飛行物体である。

HUAMの考えるUAMのイメージ画像:オートデスクのFusion360エバンジェリスト藤村祐爾氏協力

 米国では広大な国土ということもあり、日本と比べて航空機は移動手段として身近な存在である。一部の富裕層に限らず、中流階級の個人でも小型航空機に乗って移動するという。ただしUAMに適用する乗り物としては異なるものであり、現状の航空法に基づいて管制空域内(上空)を飛ぶものであって、建物のすぐ上や建物間(低空)を飛ぶことはない。

 米国ではNASAやウーバーでの取り組みが話題となっている。UAM機体の仕様はまだ粗削りであり、実用化や社会実験はまだまだこれからであるが、社会インフラとしての具体的な計画や、法整備や改正については既に関係省庁を交えた話し合いが始まっている。

 過去の日本においても小型航空機の開発事例は幾つかある。また実際に普段からセスナ機のような小型航空機を乗りこなす人もいるが、大学などの研究や、個人の趣味や道楽が目的である。

 日本においては国土が狭く、かつ人口は都市部に集中する。保守的な空気である日本で、従来なかったような新しい取り組みを進めようとすれば動きは鈍くなり、法整備や関連機関の調整も難航することが予想される。また安全性の評価は厳しく、かつ慎重な傾向である。よって日本における新たなUAMの実現には、数々の独特なハードルが存在することになる。しかしUAMに先行して取り組んでいる米国や欧州でさえも「まだこれから」であることを考えれば、日本がUAMで他国よりも先に成功できるチャンスがまだある。

 航空機の操縦が危険であることは事実である。さらに低空でたくさんの小型航空機が飛び交うようになれば、事故が起こりやすくなることは容易に想像できる。追突や接触などの事故はもちろん、もしも人が集中する都市部に落下すれば被害は甚大なものとなる。よって独自の管制技術の整備も不可欠である。そういった状況を踏まえると、「実際は、都市部ではなく郊外から少しずつ始めることになるのでは」と水野氏は述べている。

 将来、日本の人口が減少していくことが見込まれることから、道路を走行する自動車も減少し、行政が道路整備へのコストを割かなくなるのではないかと水野氏は見ているという。移動手段を自動車から空へシフトさせることで、道路や橋、トンネルなどの地上インフラ整備のコストも減らしていける効果もあると考えているとのことだ。

有人ドローンや空飛ぶクルマとの違いは?

 UAMの機体開発について、現状ではドローンを大型化したアイデアが目立つ。その中であえて航空機に注目する意味について水野氏はこのように話す。「従来のドローンベースでは、ペイロードの点でも航続距離の面でも『人を乗せる』となった時に難しい。ドローンがうまくいっているのは無人かつあのサイズだからであって、人が乗れるサイズとなるとまた別の話だ。航続距離を考えた時にはやはり固定翼がある航空機の形態が良いと考える。一方、その運用を考えた時、ドローンのような垂直離着陸の要素も取り入れるべきとも。その上で、やはり純粋に空を飛ぶべき航空機らしい性能や形状のものを開発したい」。

 御法川氏は「乗り物のカテゴリーの垣根がなくなっていくこともUAMが目指す姿であると考える」と話す。日本でも、自動車メーカーの有志が実現に向けて開発するCARTIVATORの空飛ぶクルマ「SkyDrive」などがある。UAMと空飛ぶクルマの違いについて御法川氏は「現状では明確に定義されていない」としたうえで、「空飛ぶクルマは自動車屋が考える“空間移動する乗り物”で、恐らく全く新しい交通ルール、使い方が設計されてくるだろう。強いていえば、自動車のルール(自動運転など)が発展してくるようなインフラになる可能性がある」(御法川氏)。

 「空飛ぶクルマは100%自動運転になるといわれる。自動車は行先変更や寄り道が簡単だが、空飛ぶクルマとなるとそれが難しいかもしれない。また現状の航空機は決められた安全な一本道を進むようになっている。小型航空機は多少の荷物が運べても、まだまだ移動するので精いっぱいだ。許された空域であれば遊覧飛行できるが、自動車のような融通は利かない。今後、UAMの取り組みが進むことで、航空機並みの性能を持つ空飛ぶクルマや、垂直離着陸して自在に低空を飛び回る小型航空機が出てくる可能性があるだろう」(御法川氏)。

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