「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

自家用車の自動運転は2025年以降? トヨタ奥地氏「NVIDIAでは厳しい」自動運転技術(1/2 ページ)

トヨタ自動車 常務役員の奥地弘章氏が、2018年7月20日開催の「CDNLive Japan 2018」で「自動運転技術への取組み」と題する特別講演を行った。自動運転に関するトヨタ自動車の考えや実現へのキーテクノロジー、課題などが紹介された。

» 2018年08月08日 06時00分 公開
[川本鉄馬MONOist]
トヨタ自動車の奥地弘章氏

 トヨタ自動車 常務役員の奥地弘章氏が、2018年7月20日開催の「CDNLive Japan 2018」で「自動運転技術への取組み」と題する特別講演を行った。自動運転に関するトヨタ自動車の考えや実現へのキーテクノロジー、課題などが紹介された。

 講演では、自動運転の技術に加えて、トヨタ自動車が自動運転技術を使ってどのような社会を実現しようとしているのかが語られた。これはトヨタ自動車が自動車や未来の社会をどのように捉えているかを示すもので、トヨタ自動車の思想が垣間見られるものとなった。

自動運転を可能にする3つの技術と周辺事業への期待

 講演は、このところ自動運転に注目が集まる理由からスタートした。奥地氏は、1939年のニューヨーク万博において、General Motors(GM)が自動運転の概念をジオラマとムービーで紹介していたことを挙げた。当時は夢の技術だった自動運転の実現が見えてきた背景として、3つの技術の発展があるという。

 奥地氏が紹介した3つの技術とは、周辺を認識するセンサー技術、大量のデータを処理するハードウェア技術、そしてAIを中心としたソフトウェア技術だ。ここ数年でこれらの技術が発展したことで、車両の周辺を3次元で詳細に認識できるようになり、これが自動運転の実現を間近にしていると奥地氏は語った。また、これらの技術は自動運転に限らず、他の用途に活用することで周辺事業を拡大できるとした。

 例えば、個々の車両がセンサー技術によって得た情報をセンターに集積してマップを作成すれば、デジタルインフラの整備に利用できる。また、クルマ対クルマの通信は、新たな事業への広がりも期待できる。ABSが作動した場所を集積すると、路面の凍結が予測できるなど、自動運転車からだけではなく一般のクルマからも車両からのデータを集めると精度が高くなる。

 このようなサービスは既に始まっている。例えばワイパーの作動状況と車載カメラによる映像データを組み合わせて、雨の状況をより細かく認識可能にするものだ。これらの利用法は、アイデア次第の面がある。奥地氏は「ベンチャーの方と話していると、面白いアイデアがいっぱい出てくる。こういったことはいろいろな関係産業の方と話をさせていただいた方が良いかなと考えている」とした。

自動運転はツールの1つ、利便性のみを追求すべきではない

 講演では、自動運転に対するトヨタ自動車のスタンスも紹介された。奥地氏は「自動運転がやりたいわけではなく、あくまでやりたいのは交通死亡事故をゼロにすること」だと強調した。また、自動運転が普及することで渋滞が減ったり、燃費の良い走りを提案できるようになったり、環境にも貢献できたりすることを説明。さらに「高齢の方や体の不自由な方に移動の自由を提供することは個人だけでなく社会にも重要」とし、このような背景のもとでまとめられた考え方である「モビリティ・チームメイト・コンセプト」を紹介した。

 このコンセプトは「人とクルマが同じ目的地を目指し、ある時は見守りあるときは助け合う、気持ちが通った仲間の関係を築く」というもの。奥地氏は、このコンセプトを「完全自動運転をやらないという意味ではなく、体の不自由な方に移動の自由を提供するもの」と説明する。その上で「目が見えない方の場合は、完全自動運転になってくる」とした。

 自動車にはドライバーが操る楽しみがあるが、トヨタ自動車の考える自動運転は、その楽しみを奪うものではないという。トヨタ自動車が提供する自動運転では、ドライバーが自分で運転したいのであればそれを認める。そして、その場合にも車両の周囲360度を常に監視し、必要であればサポートをする。

 モビリティ・チームメイト・コンセプトに沿ったシステムでは、ドライバーが危険を察知できない状況を検出すると、ブレーキやステアリングなどの操作に介入して事故を回避する。熟練のドライバーでも、疲れていると注意が散漫になる傾向があるためだ。そして、その後ドライバーの意思によって、完全に自動運転に切り替えることも可能となる。

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