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» 2018年08月23日 10時00分 公開

よくわかる「標準時間」のはなし(7):作業時間測定の基本、ストップウォッチ法とは (1/3)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第7回は、作業時間測定の最も基本的な手法として広く知られる「ストップウォッチ法」について説明する。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]

 前回は「標準時間の設定手順」について説明しましたが、その中で標準時間設定の前提条件として標準作業方法を決めることが大切であると説明しました。「作業測定」を行う前に、考えられる最も良い作業方法を見つけ出し、いわゆる生産性向上を阻害している要因を取り除き、作業を標準化した後に「作業測定」を開始することになります。

 最善の作業方法を見つけ出す「方法研究」は主として技術的な側面を指しますが、「作業測定」は、作業者の行動そのものを測定するために「方法改善」よりも作業者から大きな抵抗を受けがちになります。特に、「作業測定」の基礎的手法でもある「ストップウォッチ法」が作業者に不信を抱かせてしまうという残念な結果となってしまう場合も過去に多くありました。作業者に対してその測定値を押し付けてしまい、「作業測定」に対する不信感を招いてしまったのです。測定結果から把握されたロス時間の改善を積極的に推進することも同時に行わなければ作業者の協力が得られず、生産性を高めていくことは難しくなります。

 「方法研究」は、どのような場合でも「作業測定」に先駆けて実施すべきです。「作業測定」の意義は、いかなる原因のものでも、損失時間の内容とその大きさを明らかにして、避け得る“ムダ”の全てについて除外していくといった前提を解決してこそ「作業時間測定」を行えると考えるべきです。まずは、「作業測定」の際に、このことについて十分に承知しておかなければなりません。

 「作業測定」の手法には各種ありますが、今回は直接観測法でもある「ストップウォッチ法」について説明したいと思います。この方法は、「作業測定」の中で最も基本的な手法ですので、標準時間を勉強しようとする人にとっては、必ずといっていいほど熟達しておかなければならない測定技法でもあります。

1.ストップウォッチ法の概要

 「作業測定」の中でも「作業時間測定(時間観測法)」は、「ストップウォッチ法」ともいいます。ある作業の所要時間を、ストップウォッチを用いて直接測定して作業時間を求める方法で、最も広く用いられています。1サイクルの作業時間が短い場合、作業が標準化されている場合、作業の繰り返し回数が多い場合、さらに作業の分割が作業時間の観測前にできている場合に、作業を作業動作に従って適当な長さの要素作業に分けて観測・分析し、その作業の標準時間(ST:Standard Time)を設定する方法をいいます。

2.ストップウォッチ法の手順

 ストップウォッチ法は、大まかには、作業を要素区分し、作業しているところを見ながらストップウォッチを用いて実際に時間測定を行います。そして、測定データの整理、計算、レイティング、統計的処理などを施して標準時間の決定を行います。一般的には、測定対象の作業が決定すると、「作業時間測定」は次のステップで行います。

(1)分析目的を明確にし、測定する作業を決める

 作業時間測定の対象には、繰り返しの多いサイクル作業を選ぶことが一般的です。特に、全製造コストに占める比率の多い作業にまずは着目すべきです。次に、被測定者となる標準的な作業者を決定します。

(2)情報を集める

 作業内容、作業者、作業条件など、対象作業の作業内容や時間測定に関係する情報を全て集めて分析用紙へ記録しておきます。

  • 作業環境
  • 被加工物の材質など
  • 作業者の技能水準、経験
  • 機械の精度、型式
  • 被加工物の機能、加工精度
  • 加工工程の要点

(3)要素作業に分割する

 作業をよく観察して、要素作業とその切れ目を確認します。次に、作業方法を要素作業ごとに分けて、作業順序を含めて観測用紙に記録します。作業をどの程度の大きさに分けるかということは、作業の性質によって異なりますが、おおむね次のような一般原則によって分割します。

  • 他の要素作業との区分が明確にできること
  • 正確に測定ができる程度に短い時間であること
  • 手作業時間と機械時間は区分する

(4)作業時間の測定を行う

 観測の目的に必要十分な観測回数を決めます。改善のためであれば10〜20回くらい、作業時間の長い作業であれば5回前後です。次に、ストップウォッチを用いて、各要素作業の経過時間を測定し記録していきます。次の項目も参考にしてください。

  • ストップウォッチ、観測板、分析用紙などを準備します
  • 作業要素ごとに分けて、経過時刻を記録します
  • 正規外動作の記録も行います
  • 作業条件、例えば切削回数なども記録しておきます
  • 観測中または観測直後に、思い付いた改善着眼点などを観測用紙の余白や別紙へ記入しておきます

(5)レイティングを行う(観測時間値を標準速度に換算する)

 作業測定が終了したら、時間の測定結果とあらかじめ決めてある標準の作業ペースと比較して、被測定者である作業者の作業ペースについてその場で「レイティング」を行います。

 これは後で、作業時間の測定値から標準値(標準時間)を見いだす際の基準となります。作業の観測時間は、作業者の技能水準などによって影響されますので、そのままを「標準時間」として使用することはできません。この観測値を標準の作業時間に換算する必要があります。これを「レイティング」といいます。つまり、「レイティング」とは、作業の観測時間を標準の技能をもつ作業者の作業速度を100%として評価することです。「レイティング」については、次回に詳しく説明したいと思います。

(6)正味時間の決定

 測定した時間から、個別時間の中で原因が明らかな異常値の除外、その他の処理をして測定値の整理を行った後に、観測した各要素時間値の平均時間を計算し、レイティング係数を乗じて正味時間を算出します。

(7)標準時間の決定

 各要素作業の正味時間を合計し、正味時間に必要な各種の余裕時間を加えて標準時間とします。

  • 諸例数:習熟係数、ロット係数
  • 余裕時間:作業余裕、職場余裕、疲労余裕、個人余裕

 まとめますと、標準時間(ST:Standard Time)は次のように計算されます。

標準時間=観測時間×レイティング係数×(1+余裕率)

(8)三者協議

 観測結果を開示して、作業者、現場の監督者とともに、観測結果や改善の方向、気づいた点などについて素直にありのままを話し合います。ここでは、必ずしも完成された案を得るということではなく、主に現場の問題点などを聞く程度に留めます。話し合いの終わりに、両者に対して協力を感謝し、その後の協力も丁寧に要請しておきます。

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