データムはどうやって決めるの? 3D CADで考えよう3D設計推進者の眼(34)(2/3 ページ)

» 2018年08月24日 13時00分 公開

平面度の定義について

 このパーツの姿勢を決定するということを、「データム」という語句を使用して説明するのであれば、このパーツの「表面」や「平面」そのものの考え方を定義していく必要があります。

 ちなみに、これからは、説明としてパーツと言う語句ではなく「形体」という語句を使用することにします。「形体とは、形(かたち)・ありさま」を示し、サイズ形体などがJIS(日本工業規格)に記載・定義されています(関連記事:最近のJISだと「寸法公差」ではなく「サイズ公差」なのはなぜか)。

 早速例で示しているパーツを形体という言い方に変え、この形体を構成している3面(平面・正面・右側面)を「第1次データム形体」「第2次データム形体」「第3次データム形体」と呼ぶことにします。

データム平面と実用データム形体

 形体の表面をミクロで見た場合、その表面には凸凹(でこぼこ)があると考えることができます。設計上も実際の加工上もこの、平面度0(ゼロ)はあり得ません。平面度の定義について振り返ってみましょう。

 平面度とは、JISでは次のように定義されています。

JIS B 0621-1984

4.定義

4.2

平面度 平面度とは,平面形体の幾何学的に正しい平面(以下,幾何学的平面という。)からの狂いの大きさをいう。

 これだけでは少々分かりにくにのですが、次のように言い換えれば分かりやすいのではないでしょうか。

 「もっとも“出っ張った”部分(凸部)ともっとも“引っ込んだ”部分(凹部)が、その面に上下に離れた2つの平面の間に挟まれた一定の距離にあること」ということなら、分かりやすいのではないでしょうか。

 図の例のような形体で、平面度を考えたような第1次データム平面を図に示すような平面に設定します。

 この形体の表面は凸凹していますが、少なくても3点あれば図のような設置面に接触する、設置面に対してその高さ方向を拘束することができます。この設置面をデータム形体と言います。「定盤」をイメージすることができますね。これが一番初めの基準となるので、第1次実用データム形体と呼ぶことにします。

 この第1次データム形体に直交する2番目の基準になる第2次実用データム形体を図のように設定します。

 第1次実用データム形体に接する形体を第2次実用データム形体に押し当てた時、例えば、“定盤上の”「直角ブロック」に押し当てたような場合には、形体が2点以上接することで、形体の姿勢はそれまであった回転1成分は拘束されることになります。しかしまだ、第1次実用データム形体と第2次実用データム形体に並進する方向には自由度は残ったままです。

 更にこの第1次実用データム形体と第2次実用データム形体に直交する3番目の基準になる第3次データム形体を図のように設定し、これに形体を押し当てた場合、1点以上で形体は拘束され動くことはない、自由度のない状態となり、その姿勢が決まったことになります。

自由度とは

形体(透明)と重心を原点とする直交座標系の例

 話が前後してしまいますが、空間上にある形体の自由度は幾つあるのでしょうか。この時、空間上とは、直交3軸の座標系を持つ3次元空間上に形体が浮いていて、形体の重心とその座標系の原点が一致している状態をイメージしてください。

 この形体は何にも拘束されていませんので、3つのおのおのの座標軸の方向に自由度が3個、それぞれの座標軸の周りの回転自由度が3個、合計6個の自由度を持っていることになります。

 これを「6自由度」といい、力学や機構学などでも良く聞かれる語句です。

三平面データム系

 話を戻すと、形体の姿勢を決めるという事は、この「6自由度を拘束した」ということになります。このように、形体のデータム平面、実用データム形体を考えていくこと、この“幾何学的な直交する三平面”によって構成されている3軸の直交座標系のことを「三平面データム系」といい、機械設計における形体の幾何公差を考える上では基本であると、私としては理解しています。

 また姿勢を決めるということから、実物の測定においても重要なものになります。三平面データム系については、この例のように三平面によって示したものの他に、軸直線・中心面により三平面データム系が構築されるものもあり、図のようになります。

平面・軸直線・中心面による三平面データム系の例

 この三平面データム系ですが、例で第1次、第2次、第3次と言いましたが、設計の意図としては、「最初の基準は何か、その次は」というように、優先順位があることが原則になっています。設計仕様から、また加工手順から、「設計者の頭の中にはその優先順位を思い浮かべているはず……」ですが、もう一度考えてみる必要もありそうです。

 このデータムの話は、まだまだ尽きることはありませんが、機械設計における部品図を作成する上では、寸法(サイズ)公差だけでは、形体に対しての“曖昧さ”が残り、この曖昧さをなくすために幾何公差を設定する上では、何が基準となるのかということを理解してほしくて、データムのお話がしたかったのです。

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