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» 2018年08月31日 06時00分 公開

夢膨らむ「空飛ぶクルマ」、MRJも苦労した耐空証明が事業化のハードルに車両デザイン(2/2 ページ)

[齊藤由希,MONOist]
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1kmの移動コストは数十円、空を飛んで移動する必然性は

 29日の会合では、新しい空飛ぶモビリティによる移動サービスの料金設定について質問が寄せられた。これに対する各社の回答は具体的だった。「有人パイロットの場合で1km80円を想定している。パイロットなしになれば人件費の分をさらに浮かせることができる」(Temmaの福井氏)という意見の他、ヘリコプターの遊覧飛行などを提供するAirXは「遊休機の稼働率を上げることで、タクシーやハイヤーと同等のコストでヘリコプターを飛ばせるようになった。稼働率次第では鉄道レベルまで下げられるのではないか」と試算する。

 Uberはサンフランシスコ―サンノゼ間を例に、地上を配車サービスで移動した場合と、uber AIRで移動した場合のコストや所要時間を試算して公表している。垂直離着陸機の場合、43.3マイル(約70km)を15分で移動できるという。導入初期はコストが129ドル(約1万5000円)だが、需要の拡大などに伴ってコストは最終的に20ドル(約2200円)まで下げられると見込む。一方、現在の配車サービスで移動すると、56.9マイル(約90km)で1時間40分を要する。価格は、相乗りではないuberXで111ドル(約1万2000円)、相乗りのuberPOOLでも83ドル(約9200円)となっている。

 東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授の鈴木真二氏は「1km何円で飛べるかという単純な話だけでなく、空飛ぶ乗り物を使わなければならない必然性を説明できることが重要だ。人を運ぶ乗り物を新しく作るのはチャレンジングな取り組みになる。これが必要だということを分かってもらうことが欠かせない。自由に空を飛ぶことは夢のようなことだが、経済性を無視してはいけない。本当に騒音が少ないのか、電動だからといってCO2排出量がゼロというわけでもない」と言及した。

 また、東京大学の鈴木氏は、空を飛んで移動することの効率についても疑問を投げかけた。同氏によれば、移動速度や乗り物の仕組みによって物理的な効率が異なり、時速500km以上の速度域から空を飛ぶことの効率が出てくるという。「船が効率的なのはゆっくり移動する時で、速く移動しようとすると効率が下がる。鉄道やクルマがより速く効率的な移動手段になるが、ここで飛行機は同列ではない。浮上するためにクルマや鉄道にはない余分なエネルギーを使うからだ。このように効率ですみ分けされている中で、ヘリコプターは速さのための乗り物ではなく、空中で停止したり、ゆっくりと飛んだりすることに意味がある。そうしたポイントを見出していくことが不可欠だ」と説明した。

求められる航空機と同じ安全性

 具体的な利用場面や料金設定まで話が広がったものの、実現に向けた課題は多い。その1つが安全性の評価だ。航空機は、運航する国ごとに安全性や環境性能を保証する「耐空証明」や型式証明を取得する必要がある。三菱航空機らが開発する「MRJ」も耐空証明の取得に手間取った(※)

(※)関連記事:MRJの納入が延期される原因とは? 将来に向けて見えてきた課題

 「航空機と同じ基準を求められるといつまでも飛ぶことができない」(Drone Fundの千葉氏)と懸念を示す声もあったが、都市部の上空を飛び交う以上は航空機と同等の安全性が要求されることは避けられない。国土交通省 航空局 安全部長の高野滋氏も「(新しい空飛ぶモビリティは)航空機に該当する。耐空証明にどう対応していくかは大きな課題になると認識している」とコメントした。

 東京大学の鈴木氏も人を乗せる安全面のハードルの高さを指摘し、「無人で荷物を運ぶ大型ドローンなど、安全基準をクリアできるところから段階的に取り組む必要がある。いきなり都市部で人を乗せて飛ぶのではなく、ステップを踏んでいくことが不可欠だ。耐空証明のハードルは高い。どうすれば実用化にたどり着けるか、真剣に考えなければならない」と提案した。

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