「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

100年に一度の変革期、国内自動車ディーラーの進むべき道はIHS Future Mobility Insight(7)(2/4 ページ)

» 2018年09月03日 10時00分 公開

自動車購入におけるタッチポイントの今

 自動車の販売台数は、よほど引きの強い特別なブランドや製品を除いて、タッチポイントとしての役割を果たす店舗の数と大きくは比例する。ディーラー数と販売台数はニワトリとタマゴの関係ではあるが、然るべき投資なくして台数拡大は見込めない。そういう意味では、後発参入ブランドであるレクサスは、展開初期の段階に高所得者が多く居住するエリアに絞って出店を進め、結果として効率よくブランドの浸透および台数を獲得した成功例といえるだろう。

 ただ、このモデルが崩れつつあるのも事実である。過去、訪問販売が一般的だったときはカタログのみで購入の決定は普通であったし、現在も発表前の予約注文は実車を見ずに購入することになる。しかし、ディーラーに行かずとも潤沢な情報が得られるようになった現在、ネットで買い物をすることに慣れ親しんだ世代は、EVや自動運転技術の普及とともにさらに自動車のコモディティ化が進むのと合わせて、いずれ実車を見なくてもクルマを購入することに違和感を抱かなくなる可能性がある。

 一方、自動車メーカーとしては、縮小の一途をたどる国内販売において、一定数の販売台数またはシェアを確保するためには自社のユーザーを囲い込みだけでは足りず、他社からの乗り換えまたは新規のユーザー獲得を促進しなければならない。中国のように爆発的に新規購入者が増えていくような市場では、走行するクルマそのものが宣伝となり、マーケティング活動のかなりの部分をオンラインに託することができる可能性もある。しかし、日本のようにパイが限られ、また小さくなりつつある市場で、オンライン上での宣伝だけではなく、オフラインでいかにタッチポイントを作っていくのかはいまだ重要である。

 実車を見て、または試乗することで、もともと購入しようとしていたクルマとは別のモデルを購入するのは、まま見受けられることである。しかしそのためには、実車に触れる機会を作らないといけない。例えば、日産自動車の電動パワートレイン「e-POWER」は、実際に体感してもらうと非常にユーザーの反応がいいということであり、同社は体感機会増大を目指し積極的にシェアリングやレンタカーを活用している。その効果もあってか、e-POWERを搭載する「ノート」の販売台数は極めて好調である。トヨタ自動車、ホンダもそれぞれカーシェアリング運営を始めており、各社「乗ってもらいたいクルマ」を比較的安価に設定している。

 オンラインとオフラインのハイブリッドの告知活動として、三菱自動車が期間限定ではあったもののWebサイト上で「ナイトショールーム」というインタラクティブな仕掛けを作り、結果ショールームへの来店が増えたという。また、自動車の「体感」に少しずつVRも導入されている。例えばトヨタ自動車は2018年3月末に東京・日比谷にオープンした「LEXUS MEETS...(レクサスミーツ)」でVR機器を用意し、同社社長の豊田章雄氏と一緒にサーキットを走るというエンターテインメントを提供している。海外ではあるが、アウディ(Audi)やPSAグループのDSブランドがVRでカスタマイズも体験できるという施策を打ち出している。

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