学生フォーミュラ2018、前例のない事態の中で阪大が優勝、海外の大学が健闘学生フォーミュラ2018

自動車技術会は2018年9月4〜8日、静岡県袋井市・掛川市内の小笠原総合運動公園(通称「エコパ」)で「第16回 全日本学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)を開催した。今回もガソリン車(ICV)と電気自動車(EV)の2部門を設置し、実施した。今回の参加総数は98チーム(国内64チーム・海外17チーム)。今回の総合優勝は大阪大学。

» 2018年09月10日 15時00分 公開
[小林由美MONOist]

 自動車技術会は2018年9月4〜8日、静岡県袋井市・掛川市内の小笠原総合運動公園(通称「エコパ」)で「第16回 全日本学生フォーミュラ大会」(以下、学生フォーミュラ)を開催した。今回もガソリン車(ICV)と電気自動車(EV)の2部門を設置し、実施した。今回の参加総数は98チーム(国内64チーム・海外17チーム)。今回の総合優勝は大阪大学(以下、阪大)。

エンデュランスで走る大阪大学

 阪大の優勝は第8回以来の8年ぶり。第14回と15回では、総合6位入賞を逃しており、今期目標として「総合6位入賞」を掲げていた。車両設計においては、「定量的な目標設定の下で、軽量化と低重心化を実現し、信頼性確保」といった、シンプルかつ基本に忠実なテーマとしており、車両重量は前年比で18kg減となった。最終日のエンデュランス(22kmの耐久走行)では雨天の中の走行ながら3位と健闘し、オートクロス(ハンドリング性能の審査)とコスト(製作費用計算)では2位だった。静的審査のプレゼンテーションは13位であったものの、他の審査は全て5位以内をマークし、安定感ある成績を残した。

エンデュランスで走る京都工芸繊維大学

 前回の優勝校である京都工芸繊維大学(以下、京都工繊大)は2位となり、かつて上智大が成し遂げた3連覇(第4〜6回大会)を逃した。動的審査のオートクロスとエンデュランスでは1位、スキッドパット(8の字走行)では2位と好成績を収めたものの、静的審査のプレゼンテーションが21位、動的審査のアクセラレーション(加速性能の審査)が20位と、各審査結果にやや落差が見られた。同校は今回、スズキの4輪バギー用の単気筒エンジンと小型タイヤ、KW(カーヴェー)製のダンパー、サイドディフューザーを搭載して挑んだ。

 3位は名古屋大学のEV(電子自動車チーム)で、前回の総合4位からさらにランクアップとなった。静的審査(ドキュメントとプレゼンテーションの審査)の獲得点上位3位(例年では上位5校)を選定した「デザインファイナル」には2位入賞した。

 総合4位と5位には海外からの参加大学がランクイン。4位はオーストリア・グラーツ市のヨアネウム応用科学大学(U.A.S. Graz)。同校は2016年の14回大会では総合4位だった。5位は中国・上海市の理工系大学である同済(どうさい:Tongji)大学だった。デザインファイナルは、U.A.S. Grazが1位、同済大が3位と、3校中2校が海外の大学となった。また中国からは12チームがエントリーした内の6チームが参加。そのうち4チームはEVクラスでの参戦だった。

エンデュランスを見守るヨアネウム応用科学大学の学生たち

 総合6位には名城大学が入賞。同校の総合6位以内入賞は第10回大会以来、6年ぶりとなる(前回は総合8位)。前回は総合2位で、今回も動的審査の得点上位6チームで競う「ファイナル6」で出走して総合優勝も期待されていた芝浦工業大学だったが、残念ながら総合6位入賞とならなかった。

平成の終わりの学生フォーミュラは前例のない事態に

 会期初日である9月4日は、「25年ぶりに非常に強い勢力のまま日本上陸」と報道された台風21号が接近。その影響でスケジュールが大幅変更され、初日は車検の一部だけを実施し、静的審査の開催は2日目の9月5日午前からと延期になった。この影響で全体スケジュール進行も例年より半日程度遅れることになった。

たびたび豪雨に襲われた最終日

 最終日の9月8日も天候が悪く、時折襲う豪雨の中の進行となった。動的審査の目玉となるエンデュランスは、豪雨が襲うと中断しつつ実施された。ファイナル6のエンデュランス審査の開始は15時半以降となり、17時過ぎに走行が全て終了。デザインファイナルの審査も17時半以降の開始となった。

 当日の表彰式は中止し、総合成績は9日9日の深夜にWeb上にアップされた。また毎年恒例の全参加者を集めた全体写真撮影については、雨天の中、車両の運搬が難しいため、参加者(人)のみとなった。過去16年間開催してきた中で初めての事態だ。9月6日深夜には北海道で震度7の地震が発生し、急きょ帰宅する人も見られた。

 最終日のエンデュランスの午後のプログラムは雨天の中で実施され、ファイナル6のチームは雨が降る中の非常にウェットな路面で競うことになった。最悪な視界と路面にもかかわらず、ファイナル6でのラップタイムは1分6〜13秒前後をマークするチームが目立った。

 なお2018年6月18日に発生した大阪北部地震発生に伴い、学校から活動停止が命じられた一部のチームに対して、事前エントリー書類の提出期限の緩和措置が取られていた。今回優勝した阪大も地震のため2日間活動停止したことで該当した。

 平成最期の学生フォーミュラ大会は予期せぬ災害にたびたび見舞われながら終幕した。

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