設計と解析の融合で、今までにないブレークスルーに期待八千代工業はなぜダッソー・システムズを選んだか

CAEは、現在の製造現場にはなくてはならないツールとして広く認識されている。CAEの導入によって、製造の現場がどう変化し、どう効率化するのか。SIMULIA Abaqus Extended Packageの導入による効果と目的を燃料タンクやサンルーフなどの自動車部品を手掛ける八千代工業株式会社の担当者に伺った。

» 2018年09月28日 10時00分 公開
[川本鉄馬PR/MONOist]
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 八千代工業での導入事例を紹介する前に、ダッソー・システムズ(以下、ダッソー)について触れておこう。八千代工業が導入したのはダッソーの「SIMULIA Abaqus Extended Package」だ。現在はSIMULIAファミリー製品である「Abaqus」(2005年にダッソーが買収)は、40年前の1978年に登場したCAEであり、コンピュータを使った解析の世界で非常に有名な存在となっている。

「SIMULIA Abaqus Extended Package」の概要
ダッソーのシニア・ビジネスコンサルタント SIMULIA事業部パートナー営業部の博士(工学) 門傳徳久氏

 SIMULIA Abaqus Extended Packageは、有限要素解析ツールである「Abaqus」を核に、自動化・最適化ツールの「Isight」、ノンパラメトリック最適化ツールの「Tosca」、疲労解析ツールの「fe-safe」をパッケージ化したものだ。ユニークなのは、そのライセンス形式。合計4種のツールを1つのライセンスで利用できるようになっており、導入企業側の導入および運用コストを大きく下げられる。また、ユーザーにとっても、各ツール間でデータのコンバートが不要など、必要なツールを手軽に使えるメリットがある。

 このパッケージでは、ライセンスを追加することで、複数の異なるツールを同時に起動できる。ダッソーのシニア・ビジネスコンサルタント SIMULIA事業部パートナー営業部の博士(工学) 門傳徳久氏は「連成解析によって、今までは単に有限要素法の自動化だけだったものが、最終的に疲労処理も行い、さらにその結果を見て形状最適化や位相最適化をするところまで持っていける」とする。

ベテラン設計者が持つ暗黙知の形式知化に貢献

(左から)八千代工業 開発本部 生産技術部 デジタル開発推進ブロック 宇井英司氏、同樋高徹氏、同 日本機械学会認定 計算力学技術者国際上級アナリストの海老原寛氏。

 八千代工業がSIMULIA Abaqus Extended Packageを導入したのは、2017年4月のこと。現在は燃料タンクの設計関連に利用しているが、将来的にはサンルーフ、他の部品設計に利用したいとする。

八千代工業の樹脂製燃料タンク(Built-in Fuel tank System)

 八千代工業のSIMULIA Abaqus Extended Packageの利用スタイルは、ややユニークだ。同社には、フロー的に量産に近い過程の設計開発を行う部署が栃木にある。しかし、2017年4月にSIMULIA Abaqus Extended Packageを導入したのは、埼玉にある開発本部生産技術部だ。

 同社の生産技術部は、製品の設計そのものではなく、製品の設計に携わる開発者がCAEを効率的に使うための“ツール”を開発している部署だ。製品の設計には、CAE上で膨大なパラメーターを試す必要がある。これを効率良く行うための電子的なテンプレートのようなものをイメージすると理解しやすいだろう。

八千代工業 生産技術部の海老原氏

 このテンプレートを製造工程の下流にある量産品の設計部署に供給すれば、初心者にも熟練設計者と同じような品質で効率的に設計ができるようになる。もちろん、テンプレートには使いやすさへの考慮も盛り込むという。

 八千代工業 生産技術部の海老原寛氏は、SIMULIA Abaqus Extended Packageの利用目的の1つを「ベテランの設計者が持つ暗黙知の形式知化を明確にすること」だと語る。そのために、設計部門が使いやすいよう現場でのヒアリングを重ね、ツールの開発を行っているとする。

目指すは、シミュレーション主導の設計。ただ、導入には現場の意識改革も必要

 海老原氏は、設計とシミュレーションを分けるのではなく、「シミュレーションで設計する」ことへ意識を変えることが重要と語る。

 従来の製品設計は、設計者が経験や勘で形状を作り、そのデータをCAEの部門に投げていた。しかし、それでは確認のためのシミュレーションとなってしまう。「そうではなくて、ちょっと形状を変えたらどうなるかをシミュレーションで計算して、デザインプロセスにシミュレーションの結果を利用しようとしている」(海老原氏)。

 設計の初期段階に負荷を掛け、作業を前倒しで行うフロントローディングという手法があるが、シミュレーションをデザインプロセスに組み込む考え方は、これに通じるところがある。解析と設計を別々に捉えるのではなくトータルに考えて最適化すると、ゴールが見えやすくなる。また、場合によっては、これまでにはなかった新しい設計ができることもあるという。いわば人間にはできなかった新しい設計ができる可能性があり、これは製造過程のブレークスルーになる。

八千代工業 生産技術部の宇井氏

 「それ以前からも、社内で開発・設計プロセスへの問題意識が高まっていた」と八千代工業 生産技術部の宇井英司氏は話す。そのような問題を改善しようと、当時から社内のモノづくり技術向上の推進をリードしていたのが、同社の生産技術部長である安田哲(当時、現常務取締役/開発本部長)氏だった。海老原氏や同社 生産技術部の樋高氏は、安田氏にシミュレーション主導設計について提案した。「安田部長が了承してくれたことで計画はゴーとなり、今回のような具体的な動きをかけられる体制が組まれることになった」(宇井氏)。

CAEの導入には“人間”がポイントになることも

 八千代工業がダッソー製品の導入を決定したのには、いくつかの理由がある。部品供給先企業との関連から、以前からダッソーのCADソフト「CATIA」を使っていたことは大きな理由の1つだ。

 同じダッソー製品であるSIMULIAであれば、CATIAとのデータ連携が担保される。Abaqusを含めて一気通貫で最適化まで可能であり、データの信頼性を保つ意味でも、これは大きな安心材料となる。

 ちなみに、八千代工業では他社のレガシーなツールも継続して利用している。しかし、SIMULIA Abaqus Extended Packageに含まれる「Isight」を利用することでデータの連携が可能になるという。Isightの幅広い対応力も導入時のポイントだったようだ。

 もう1つ、ダッソー製品導入の決め手となったことには、解析ツール全般に非常に詳しいダッソーの技術コンサルタント工藤啓治氏の存在がある。前出の海老原氏は「シミュレーションは属人的な部分が強い。だから、デキる人に教えてもらいたかった」と語る。実際、CAEの選定に際して他社とコンタクトすると、システムを販売することが一義になっており、導入やサポート面で不安を覚える場面もあったようだ。

 導入前から、八千代工業では工藤氏によるレクチャーを受ける機会を設けていたという。このようなサポートを受けられるのも、CAE業界をリードするダッソーならではだろう。

スタートアップ企業にも利用しやすい“プロモーションパッケージ”

 現在、ダッソーではスタートアップ企業を含む中堅・中小企業を対象としたSIMULIA Abaqus Extended Packageのプロモーション版となる「Abaqus for SMB(※)」を用意している。これは、より低コストな導入と運用を可能にする特別なパッケージだ。

 スタートアップであろうと小さなメーカーであろうと、製品に求められる解析の項目や精度は大企業と変わらない。もし、あなたがコスト的にCAEの導入を躊躇(ちゅうちょ)しているのなら、一度ダッソーに問い合わせてみてはいかがだろうか。高い精度と連携性に優れた解析ツールはもちろん、その道のプロのアドバイスを受けるチャンスかもしれない。

:Abaqus for SMBの適用には条件があります。詳細はダッソー・システムズのビジネスパートナーまでお問い合わせください。

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