特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年10月01日 11時00分 公開

インダストリー4.0:工場の「つながる化」を可能とする「管理シェル」とは何か (4/4)

[三島一孝,MONOist]
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管理シェルの意義と利点

 インダストリー4.0では、企業や業界、分野の壁を超えてバリューチェーン全体がネットワークでつながることが求められる。その実現のためには、通信(ネットワーク、プロトコル)、サイバーセキュリティ、データ保護、概念、専門用語、記号などの標準化が業界の垣根を超えて必要となる。同時に、各分野に既に存在する国際標準やコンソーシアムの仕様も考慮しなくてはならない。また、将来的に生じるだろう新たな要件にも柔軟に対応できなくてはならない。

 管理シェルはこれらの要求を満たすために必要となるインダストリー4.0実現のためのツールである。プラットフォームインダストリー4.0では管理シェルの利点として「情報を1つにまとめる包括的な枠組み」「異なる企業や業界の橋渡し」「拡張や拡大が可能」「アセットのライフサイクル全段階をカバー」の4つの利点があるとしている。

管理シェルが満たすべき要件

 プラットフォームインダストリー4.0では、管理シェルが満たすべき22件の要件などについても定めている。

  1. 管理シェルは、さまざまな技術分野の属性をそれぞれ異なるサブモデルに取り入れることが可能であるべきである。各サブモデルは(他のサブモデルに依存することなく)独自にバージョン管理や保守ができなくてはいけない
  2. 管理シェルは幅広い異なる技術分野の属性を取り入れることができ、それらの属性がどの分野に由来するのか特定できなくてはならない
  3. それぞれの技術分野の重要な属性を特定するために、国際標準、コンソーシアムの仕様、メーカーの仕様をそれぞれ満たす、さまざまなプロセスモデルを見つける必要がある
  4. ある1つのアセットに複数の異なる管理シェルがある場合、互いに参照し合うことが可能であるべきである。ある特定の管理シェルの要素は、他の管理シェルの対応する部分の「コピー」の役割を果たさなくてはならない
  5. 個々の管理シェルはその構造を保ちながら、1つの総合的な管理シェルに統合する(組み合わせる)ことが可能であるべきである
  6. アセット、管理シェル、属性、分類の関係の識別には、広く普及している識別子(IRDI、URI、GUID)を使用すべきである。可能であれば、世界中で一意識別できるようにする
  7. 管理シェルは、ある特定のアセットの識別子(ID)の代替識別子(GS1、GTIN)の検索も可能にすべきである
  8. 管理シェルはボディーとヘッダから構成される
  9. ヘッダは識別に関する情報を含む
  10. ボディーは各アセットに関する情報を含む
  11. 管理シェルに含まれている情報や機能は API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介してアクセス可能
  12. 管理シェルは一意識別子(ID)を持つ
  13. アセットは一意識別子(ID)を持つ
  14. 工場自体もアセットであり、管理シェルを有し、IDを介してアクセス可能
  15. 「タイプ(製品になる前の青写真や設計図、試作品など)」はタイプとして「インスタンス(製品)」はインスタンスとして特定されるべきである
  16. 管理シェルは、他の管理シェル、インダストリー4.0の情報へのリンク(参照先)を含むことができる
  17. 追加の属性(例えばメーカー独自の属性)も含むことが可能であるべきである
  18. 各管理シェルに必要な最低限の数の属性を定義すべきである
  19. 管理シェル内の属性やその他の情報要素は「タイプ」や「インスタンス」に適していなくてはならない
  20. 階層的で番号付けが可能な属性構造にすべきである
  21. 属性が(他の管理シェル内にある)他の属性も参照できるようにすべきである
  22. 属性が管理シェルのデータや機能を参照できるようにすべきである

インダストリー4.0における管理シェルの今後

 管理シェルの技術的な詳細についてはプラットフォームインダストリー4.0において現在開発中だと先述したが、同プラットフォームの作業グループ「AG1」において現在進められている作業は「管理シェルの詳細」と「具体的な管理シェル」という2つのプロジェクトで進められている。

 「管理シェルの詳細」プロジェクトでは、これまでに出てきたような、管理シェルの要件や構造、識別子、サブモデル、属性、OPC UA、AutomationML(Automation Markup Language)へのマッピングなどの要素を踏まえ、1つの構造にまとめて実装可能とする取り組みを進めている。

 2018年秋以降に「管理シェルの詳細(パート1)バリューチェーン上のパートナー間における情報の交換」とする文献を発表する予定としており、管理シェルに含まれている全情報をパケット(フェイルの束)として、あるパートナーから別のパートナーに伝送するために、どのように情報(データ)を編集、処理、整理すべきかという点を示すことを計画する。

 「具体的な管理シェル」プロジェクトでは、ユーザー企業が実際に管理シェルを利用できるようにサブモデルの具体的な内容を定めたり、管理シェルをデモンストレーター(インダストリー4.0のシナリオの具体例)に実装したりすることに取り組んでいる。具体的には、管理シェルとサブモデルの具体的な実装やヘッダの具体化、サブモデル定義の手引策定、自由サブモデルの具体化などに取り組んでいる。

 今後は2018年秋以降に新たな文献を発表予定としており、管理シェルに関する実用的なポイントをまとめる計画だという。サブモデルをどのように開発するかの解説や、基礎サブモデルの定義、サブモデルのテンプレートなどを盛り込む予定だとしている。

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