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» 2018年10月03日 10時00分 公開

製造業IoT:半導体工場を襲った40時間の生産停止、“工場IoT化”の壁をどう乗り越えるか

工場など製造業のIoT活用が加速しているが、現実化が進むほど効果を得るにはさまざまな障壁にぶつかるケースが多い。セキュリティ問題やネットワーク接続、データ連携の課題など、これらの課題に対する現実的な解決策を示すセミナー「Moxa IIoT Solution Day」が2018年9月に開催された。本稿ではその講演の様子をお伝えする。

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 製造業のIoT(モノのインターネット)活用は加速度的に広がりを見せている。特に工場では、改善活動の高度化や人材不足対策などを見据えて、IT(情報技術)およびIoT活用への積極的な取り組みが進んでいる。しかし、活用フェーズに入ったからこその課題があり、多くの製造業が実現に苦労をしているというのが現状だ。

 これらの課題解決に向けた取り組みを紹介する技術セミナー「Moxa IIoT Solution Day」(2018年9月6日東京会場、同年9月11日大阪会場)が、台湾の産業用通信およびネットワーキングのリーディングカンパニーであるMoxaによって開催された。Moxaは産業用イーサネットなど、工場を含む産業用ネットワーク関連機器の世界的な大手企業ではあるが、日本国内でセミナーなどを開催するのは初めてとなる。

 同社のグローバルでの知見を中心に、産業用IoTの現状の課題や、成果を得るために必要な考え方、課題解決につながる同社のソリューションなどが紹介された。本稿では、特に大きな課題であるセキュリティ問題やネットワーク接続、データ連携についてのポイントと、その解決策について紹介する。

photo 「Moxa IIoT Solution Day」(東京会場)の様子(クリックで拡大)

製造現場で広がるネットワーク問題とセキュリティ脅威

photo Moxa アジアおよび台湾ビジネスディビジョンディレクター チャールズ・チェン氏

 セミナーの開会にあたりMoxa アジアおよび台湾ビジネスディビジョン ディレクターのCharles Chen(陳昌林、チャールズ・チェン)氏は「産業用IoT技術とデータ分析の活用がスマートファクトリーを実現します。その一方、IoT技術の導入に課題を抱えるユーザーは少なくありません。Moxaではさまざまなスマートファクトリーの導入に関わり、多くの事例を備えています。こうした生きた産業用IoTソリューションを日本の皆さまに紹介したいと考えています」と開会の趣旨について述べた。

 製造現場への産業用IoTの導入が広がる中で、現実的な課題として大きいものの1つにネットワークの問題である。従来の製造現場はネットワーク的に閉鎖された環境である場合が多く、産業用IoTを活用するには新たなネットワーク環境を構築することが必要だ。製造現場ではこのネットワーク構築を安易に考える場合が多いが、多くのデバイスがネットワークに接続されることで、必要な帯域やデータ通信料は増加するなど、複雑性が増している。さらにネットワークセキュリティなどリアルタイムデータ通信の信頼性確保も重要な課題となってきている。

 こうしたネットワーク環境の課題と解決策について解説したのが、ネットワークインテグレーターであるネットワンパートナーズ ビジネス開発部 エキスパートの長澤宣和氏である。同氏は「Connected Industriesを進めた企業の具体的な課題と解決策」をテーマに講演を行った。

photo ネットワンパートナーズ ビジネス開発部 エキスパートの長澤宣和氏

 長澤氏はまず日本政府が新たな産業の目指すべき姿とする「Connected Industries」について紹介。ただ、これらの姿を実現する前に、現場では数多くの課題が存在すると指摘する。「IT(情報技術)とOT(制御技術)は従来つながっていなかったため、物理的な連携の問題が存在します。しかしそれ以上に課題だと考えているのが、組織的な連携の問題です。ITの担当部門とOTの担当部門それぞれが連携できる体制がないケースが多く存在するのです」と長澤氏は課題感について述べる。

 さらに、ネットワーク構築における「ルールの不在」なども長澤氏は述べる。「現在、製造業のIoTサービスのモデルではネットワークについて、いくつかの重要な要素が説明されていません。そのためルール不在な領域が存在するのです。例えば、センサーからゲートウェイまでのさまざまな工程におけるデータの取得方法や、ラインにおけるネットワークデザインや設計などです」と長澤氏は課題を示す。

 その中で長澤氏が主張するのが、ネットワーク機器を生産設備の一部だとしっかり捉え、その運用に気を配ることだ。「トラブルの原因調査を行った結果、ネットワークを管理するという概念がなく“何となく”つないでいたということが多くの原因になっています」と長澤氏は語る。

 加えて、セキュリティの問題も深刻である。ランサムウェア(身代金要求型不正プログラム)「WannaCry」の感染が報道されてから、工場のセキュリティに関する問い合わせが著しく増加したという。この問題に対して、長澤氏は「セキュリティの観点からいえば工場特有の運用課題があり、不正プログラムの感染や標的型サイバー攻撃などを完全に防ぐことは困難な状況も多くあります。被害の広がりをどこまで抑えられるかという観点が重要なのです。そのためにも、端末の防御とともに、ネットワークセキュリティは非常に大事なものとなっています」と述べた。

 そして、これらを推進するには、IT部門とOT部門の相互理解が必要であり、それらを支援するため「ネットワンパートナーズでは物理的にネットワークをつなぐだけでなく、人と組織をつなぐことにも取り組んでいます。実はそちらの方が重要かもしれません」と長澤氏は企業内での協力体制の重要さを強調した。

不正プログラムが招いた40時間の生産停止

 サイバーセキュリティの重要性については、Moxa リージョナルセールスマネジャーのCarrie Hsiao(蕭琳靜、キャリー・シャオ)氏も重ねて強調する。

photo Moxa リージョナルセールスマネジャーのキャリー・シャオ氏

 シャオ氏は「2018年8月に半導体受託生産を行う台湾の大手ファウンドリで、製造工程のPC端末が不正プログラムに感染したインシデントがありました。台湾各地にある複数の工場に影響があり、結果として同社は約40時間の生産停止に追い込まれ、約190億円の損失が発生したといいます」とサイバーセキュリティの問題が工場でも喫緊の課題となっていることを説明した。しかし、多くの日本の製造業では「工場のネットワークはインターネットにつながっていないから問題ないという認識の企業がまだ残っており、セキュリティに対する課題意識が低いままです」とシャオ氏は警鐘を鳴らす。

 ただ、製造現場でいざセキュリティ対策に取り組もうとしても、セキュリティ技術者やノウハウなども不足する中で、容易なことでは実現できない。こうした中で、まず取り組むこととしてMoxaが提案するのが、制御システムセキュリティの標準に対応した機器を導入することである。

 制御システムセキュリティの基準には、業種や業界に対応したものが現在整備されている。このうち産業用オートメーション向けのサイバーセキュリティ標準はIEC62443でカバーされている。このIEC62443がカバーする「セキュリティ管理」(定義済みポリシーと継続的なセキュリティ管理)「ネットワークセキュリティ」(IACSネットワーク向け多層防御サイバーセキュリティ)「デバイスセキュリティ」(組み込み型セキュリティ機能により強化されたデバイス)の3つの範囲に対してMoxaの製品群は対応機器を用意しており、これらを活用することで最低限のセキュリティ対策をまず始めることができるのだ。

 機器によるエンドポイントでの防御に加え、それぞれの分割したゾーンに合わせた多層防御なども可能とするが、シャオ氏は「Moxaの製品はOTエンジニア向けなので簡単に設定できる。OTエンジニアでも安全性を確保した上でネットワークを構築できる」と訴える。

トレンドマイクロとMoxaの提携

 これらの個々の機器によるセキュリティ対策に加え、Moxaではより強固なセキュリティを実現するためにトレンドマイクロと新たに提携。産業用IoT向けのセキュリティソリューションを強化する方針を示した。セミナーではこのトレンドマイクロからIoT事業推進本部の原聖樹氏が登壇し「制御システム向けのサイバーセキュリティ」をテーマにMoxaとの提携の狙いなどについて紹介した。

photo トレンドマイクロからIoT事業推進本部の原聖樹氏

 原氏は「提携の狙いは、スマート工場やスマートエネルギーといった産業用IoT(IIoT)を保護する最先端ソリューションの共同開発などにあります。トレンドマイクロでは以前から制御システム向けのセキュリティ製品を展開してきましたが、ソフトウェアだけでは実現できないこともあります。Moxaとの提携により、工場を中心としたセキュリティ領域で、エンドポイントプロテクション、ネットワークプロテクション、集中管理など個々のソリューションを強化し、さらにハードウェアなどを含めたソリューションを提供する考えです」と述べている。

エッジコンピューティングのカギを握るIIoTゲートウェイ

 さて、今回のセミナーでサイバーセキュリティと並んで製造現場でIIoTを活用する上で課題とされていたのが、「つながる化」である。「つながる化」には、データを自動で取得できるようにする仕組み、取得したデータの連携、これらを有効活用する組織の連携などが存在する。

 その中で特に「データ連携」を実現する上で重要性が訴えられたのが、エッジコンピューティングの中核になるIIoTゲートウェイである。IIoTにはITとOTの統合が前提となるが、OTが提供するデータをITで分析することで、現場の運用効率向上や新たなビジネスモデル創出が可能となる。両者を結びデータ連携をするこの重要な中継ポイントとなるのがIIoTゲートウェイとなるからだ。

 IIoTゲートウェイは、データの収集、転送、フィルタリング、ローカルインテリジェンスの提供などの役割が重要となる。この役割について説明したのが、Moxa シニアセールスマネジャーのJacky Chang(張彝懋、ジャッキー・チャン)氏である。チャン氏は「OTとITの統合に役に立つゲートウェイの運用方法」と題し、MoxaのインテリジェントIIoTゲートウェイの紹介を行った。

photo Moxa シニアセールスマネジャーのジャッキー・チャン氏

 チャン氏は「ITとOTが互いに理解できないのは、組織の壁だけではなくデータの扱い方、ノウハウ面でのギャップが大きいからです。この問題を解決しOTとITをつなぐスマートブリッジとなるのがIIoTゲートウェイだと考えます。IIoTゲートウェイによりITとOTがそれぞれの専門性を持ちながらシームレスに統合できます」とIIoTゲートウェイの重要性について述べた。

 IIoTゲートウェイの役割としては、クラウドへの接続(Azure、AWS)、ローカルSCADAへの接続、組み込み型ローカルインテリジェンスの運用、フィールドデバイスの接続などがある。運用に関してはそのシステムに最適なIIoTゲートウェイの選択が必要だ。その中で「MoxaのインテリジェントIIoTゲートウェイの特徴は、開発、導入、運用、メンテナンスという4つのライフサイクルを考慮した設計となっている点です」(チャン氏)とする。

 例えば、開発でみると、従来のIIoTゲートウェイはソフトウェアのプログラミングに大きな手間がかかっていた。一方、インテリジェントIIoTゲートウェイはプログラミングではなく、使いやすいUIを採用し、設定時間を大幅に低減することに成功した。また、実証されたOTタグやプロトコル変換機能を持ち、リソースもAPIを提供することで、顧客のソフトウェアに統合したり、拡張したりできる。

 チャン氏は「製品ライフサイクルのそれぞれで、セキュリティやスペックなどは満たしつつ、ユーザーの負担を低減し、簡単に導入し使いこなせるようにしていることがMoxa製品の特徴です」とMoxaの強みを述べる。

photo MoxaのインテリジェントIIoTゲートウェイ(クリックで拡大)

エッジコンピューティングとクラウドのハイブリッド型

 ただ、IIoTゲートウェイで「つながる化」することだけでは、スマート工場化で成果をえることはできない。さらに上位のサーバやクラウド環境でのデータと連携ができてようやく大きな成果を得ることができる。Moxaではこれらの領域についてはパートナーシップを積極的に活用する方針を示している。そのパートナーの1つがマイクロソフトである。

 マイクロソフトはIIoTゲートウェイのようなエッジコンピューティングの世界とクラウドを組み合わせた、ハイブリッド型での新たな価値を訴求している。日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 グローバルブラックベルトセールスの深尾将弘氏は「製造業におけるIoTとAzure IoT」とした特別講演で、同社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」と産業分野への取り組みとMoxaとの協業について紹介した。

photo 日本マイクロソフト クラウド&ソリューション事業本部 グローバルブラックベルトセールスの深尾将弘氏

 深尾氏は「IIoTにおいて、データの連携や成果の創出で難しいことの一因として、データにおける収集や蓄積、分析などのプロセスにおいて、ステークホルダーが複数いて複雑であることが挙げられます。マイクロソフトはとにかくこのデータ連携をシンプルに迅速に展開できることを目指しています」と語る。

 マイクロソフトが用意するAzure IoT Hubを中心としたIIoTソリューションのバリエーションは豊富である。迅速にコストをより抑えた状態で、IoTサービスを展開する「Microsoft IoT Central」(SaaS)、業種や目的別の事前構成済みテンプレートを自身のAzure上にボタン1つで展開できる「Azure IoT Solution Accelerators」(事前構成済みテンプレートのカスタマイズも可能)や、より複雑な処理を行うために機械学習やリアルタイムデータ処理エンジンなどのPaaSのパーツを組み合わせてIIoTを実現できるサービスなどを用意している。

 Azure IoT Hubは数十億のデバイスを双方向にセキュアに管理でき、エッジとクラウドの接続を文字通りハブ的にコントロールできるサービスである。またAzure IoT Edgeを使用することにより、クラウド上で稼働させていた機械学習やリアルタイムデータ処理エンジンをIIoTゲートウェイ上でも稼働させられる。リアルタイムでデバイス側のコントロールが可能になり、顧客の幅広い要望に応えることが可能になる。「これらのIoTの仕組みを使って製造業のデジタルトランスフォーメーションをけん引したいと考えています」(深尾氏)という。

 デジタルトランスフォーメーションを進める中でやはり重要になるのがデータを取得するための負荷を低減することだ。OCP UAなどのオープンスタンダードやMoxaのIIoTゲートウェイは重要な役割を果たしており、マイクロソフトではパートナー連携を深めている。Moxaもそのパートナーの1社であり、パートナープログラムの一環として取り組むジョイントソリューションとしてMoxaのゲートウェイとAzureのIoTを組み合わせて、顧客に提供するなどの取り組みも行っているという。

 「ユーザーが独自に一からシステム開発を行うのではなく、より早くIIoTで成果が出せるようにサポートするのが狙いです。そのためにはパートナーシップが非常に重要だと考えています」と深尾氏は述べている。

 この他、今回のセミナーでは、これらMoxaの取り組みを実証した事例も紹介。Moxa リージョナルセールスマネジャーのKenji Lin(林立揚、ケンジ・リン)氏が「IIoT導入に向けたファーストステップ」と題してIIoTの活用事例を披露した他、MoxaセールスリージョナルリプレゼンティティブのLeo Lin(林宥樺、レオ・リン)氏が「スマートファクトリーの実現」として産業用IoT技術とデータ分析を活用することでスマートファクトリーを実現した成功事例を紹介。さまざまな障壁はあるものの、グローバルでは既に数多くの成功事例が生まれていることを紹介した。

IIoTにおけるパートナーシップの重要性

 さて、IIoTで現実的な成果を得るためには、いくつかの課題が存在し、その中でもサイバーセキュリティの問題や、「つながる化」を実現するIIoTゲートウェイの重要性などについて紹介した。一方で、これらの取り組みについては、1社で実現することが難しいということについて紹介した。

 これらのIIoTの動きをグローバルで支援するMoxaもグローバルで強みを持つ産業用ネットワーク機器の展開だけでなく、マイクロソフトやトレンドマイクロ、ネットワンパートナーズとの協業など、カバー範囲を拡大し、それぞれのソリューションを高度化する取り組みを進めている。まさにIIoT実現の支援に向けた体制を拡充しているところである。もし、IIoT実現に向けた数多くの課題をクリアできずに苦しんでいるような場合は、ポートフォリオの拡大に取り組むMoxaのような企業に相談してみるというのも1つの手かもしれない。

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提供:Moxa Inc.
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年11月2日

関連リンク

Moxa IIoT Gateway Live Demo(日本語)