物流崩壊から2年、ユニクロが全自動倉庫に取り組む理由(前編)サプライチェーン改革(1/2 ページ)

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングとダイフクは2018年10月9日、戦略的グローバルパートナーシップを結んだことを発表した。全自動倉庫を含む物流の抜本的効率化に共同で取り組む。本稿では前後編に分け、ファーストリテイリンググループの物流改革の取り組みと全自動倉庫の全容について紹介する。

» 2018年10月10日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ユニクロなどを展開するファーストリテイリングとダイフクは2018年10月9日、戦略的グローバルパートナーシップを結んだことを発表した。全自動倉庫を含む物流の抜本的効率化に共同で取り組む。本稿では前後編に分け、ファーストリテイリンググループの物流改革の取り組みと全自動倉庫の全容について紹介する。前編では、ダイフクとの協業の内容と前提となるファーストリテイリンググループの物流改革への取り組みを紹介する。

photo パートナーシップ構築で握手するファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井正氏(左から2人目)とダイフク 代表取締役社長 下代博氏(左から3人目)(クリックで拡大)

自動倉庫の世界展開

 ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井正氏は今回の提携の前提として「われわれはもともとは純然たる小売業だったが協業によって業容を拡大し成長してきた」と過去を振り返る。

photo 「自動倉庫を最短で世界展開する」と語る柳井氏

 まず、丸紅や三菱商事など商社などとの協業により、海外展開や中国での製造ルートの開拓などに取り組み、アパレル製造小売業(SPA)へと進んだ第1段階がある。次に「服でさまざまな差別化を図るには原材料が重要だ」(柳井氏)ということで、東レとの協業により独自製品を生み出すようになったのが第2段階である。フリース製品や独自の「ヒートテック」製品、「エアリズム」「ウルトラライトダウン」などをヒットに導いた。

 そして、グローバル化および新たな成長への取り組みに進んでいるのが第3段階である。グローバル展開を進める中で、韓国ではロッテグループ、タイとインドネシアでは三菱商事、フィリピンではSMグループ、シンガポールではウィンタイグループと組むことで海外進出を進めてきた。さらに、2018年7月にはニット商品の開発と技術革新に向けて島精機製作所と協業した他、2018年9月にはGoogleのクラウド部門であるGoogle Cloudと協業し「情報製造小売業」としての進化を進める方針を示している。

 これらの流れの一環として新たにダイフクと協業することを決めた。柳井氏は「グローバル化を進める上で間をつなぐ物流および倉庫の重要性は高まっている。自動倉庫の世界展開をやりたい。その中で世界一信頼できて最後まで一緒にできるところとしてダイフクとの協業を選んだ。最短で世界中に自動倉庫を作りたい」と語っている。

photo 「倉庫の自動化だけでなくさまざまな領域での変革に貢献する」と語る下代氏

 協業先となるダイフクは世界的なマテリアルハンドリング(マテハン)企業である。マテハンに関する主要な製品を自社で開発する他、インテグレーションやコンサルティングやアフターサービスまでを一貫して提供する。「1957年に日本で最初の自動車生産ラインの構築を担当して以来、自動車の量産に支えられて世界中の自動車メーカーに育てられた。23の国と地域に拠点がある」(ダイフク 代表取締役社長 下代博氏)としており、海外売上高比率が70%を超えるなどグローバル展開が特徴である。

 下代氏は「まずはUNIQLO CITY TOKYOにおける物流倉庫で世界最大級、最先端の物流倉庫を実現できた。さらに、ファーストリテイリングが情報製造小売業を目指す中で、ITと連携し全自動化した物流プラットフォームは必須となる。倉庫の自動化だけでなくグローバルパートナーとしてさまざまな領域での変革を担っていく」と述べている。

自動倉庫技術の確立と物流システム

 両社の協業内容は具体的には4点ある。1つ目はファーストリテイリンググループの国内外の倉庫自動化に向け、世界最新鋭の自動化設備を開発、構築する。2つ目は、ファーストリテイリンググループの倉庫自動化の実現に向けて両社から特別チームを編成し計画、実行、メンテナンスを進めていく。3つ目が自動化設備の導入に当たり、設計、機器、資材、専門的人材の調達、建設、試運転など、全過程における業務を一貫して推進する。4つ目が、物流システム全体の最適化に向け、必要なシステムの解発を計画、実行する。

 そもそもファーストリテイリングが、物流に大きく手を入れようとしているのは、もともとが「物流後進企業だった」(ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也氏)という反省があったからである。

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