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抜き取り検査がOKでも「保安基準満たすとはいえない」、スバルが6000台リコール製造マネジメントニュース

SUBARU(スバル)は2018年10月11日、国土交通省に9車種19型式のリコールを届け出た。リコールの対象となるモデルは、「レヴォーグ」「WRX」「インプレッサ」「XV」「フォレスター」「レガシィ」「エクシーガ」「BRZ」と、トヨタ自動車の「86」で、現在の生産車種全てとなる。2017年12月14日から同年同月29日の間に生産された車両が該当する。対象台数は合計で6124台で、スバルのリコール費用は約4億円となる。

» 2018年10月12日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 SUBARU(スバル)は2018年10月11日、国土交通省に9車種19型式のリコールを届け出た。リコールの対象となるモデルは、「レヴォーグ」「WRX」「インプレッサ」「XV」「フォレスター」「レガシィ」「エクシーガ」「BRZ」と、トヨタ自動車の「86」で、現在の生産車種全てとなる。2017年12月14日から同年同月29日の間に生産された車両が該当する。対象台数は合計で6124台で、スバルのリコール費用は約4億円となる。

 同年9月28日にスバルが発表した社外専門家による徹底調査の報告書では、完成検査工程の1つである全数検査において、ブレーキやステアリングの舵角などの精密測定が不適切に実施されていたことが明らかになった。本来は、自動車メーカーが自ら規定して国土交通省に届け出た通りの検査手順で完成検査を行うことによって、道路運送車両の保安基準を満たすと見なされる。しかし、不適切な全数検査が発覚したことが理由に保安基準を満たすと判断できないため、国土交通省はリコールの実施を決めた。

 今回のリコールでは、全車両に対し、指定整備工場で完成検査と同じ内容の点検と自動車検査員による確認を行う。道路運送車両の保安基準に関する不具合が認められた場合には是正することとした。

 リコールの対象期間が2017年12月14日からとなったのは、それ以前の期間の生産車両については2018年2月にリコールを届け出ているためだ。1回目の車検を終えた車両もリコールの対象には含まれない。この時のリコールは、資格を持たない検査員が完成検査を実施していたことによるもので、指定整備工場で完成検査と同等の点検を行う措置を実施済みだ。また、先述した社外専門家による調査で、不適切な完成検査の実施について得られた証言を基に、今回のリコールの対象期間を2017年12月29日までとした。

 社外専門家による徹底調査の報告書では、完成検査工程における全数検査で、ブレーキやステアリングの最大転舵角、スピードメーター、サイドスリップの精密測定が、国土交通省に届け出た方法通りに行われていなかったことが指摘された。機能検査工程や、シャシー周りの検査工程では、ずさんな検査が行われていることも明らかになった。このように検査が不適切に行われていたものの、スバルは当初、保安基準は満たしているとし、リコールの実施については明言しなかった。

 スバルが保安基準を満たしていると判断していた理由は、抜き取り検査にある。完成検査は、抜き取り検査と全数検査で構成されている。全数検査で行う精密測定は不適切な形で行われていたが、ブレーキや、最大転舵角と関連した最小回転半径の抜き取り検査は適切に実施されており、報告書でも「(全数検査の)手順の違反が直ちに保安基準適合性を損なうとまで認めるに足りない」と述べている。また、最大転舵角やサイドスリップ量については保安基準で定められた規定がない。

 しかし、全数検査の測定結果の記録が残っておらず、検査員の証言を基に調査が行われたため、保安基準への影響を明確に判定できない検査もあった。これらを踏まえて国土交通省は、届け出られた規定通りに全数検査が実施されなかったことを問題とし、リコールの実施を決めた。

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