「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

吉利とボルボが仕掛ける新ブランド、クルマを「買わずに」「安く」使うモビリティサービス(1/2 ページ)

吉利汽車とVolvo Cars(ボルボ)が共同出資で立ち上げたブランド「Lynk & Co(リンクアンドコー)」は2018年10月19日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)でセダンの新型車「03」を発表した。

» 2018年10月22日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
セダンの新型車「03」のローンチイベントの様子(クリックして拡大)

 吉利汽車とVolvo Cars(ボルボ)が共同出資で立ち上げたブランド「Lynk & Co(リンクアンドコー)」は2018年10月19日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)でセダンの新型車「03」を発表した。

 リンクアンドコーは2016年に発足。ボルボの車両技術をベースに新しいビジネスモデルを試すブランドだ。自社開発の個人間カーシェアリング機能を標準搭載する他、定額制や月極など、自動車の利用コストを下げる施策を展開していく。ディーラー網を使わない販売についても計画している。03は発表と同日から中国で販売を開始したが、日本での具体的な販売計画はない。2020年に欧州で、2021年に米国でも投入する。

 03は数字の通り、同ブランドが手がける3つ目のモデルだ。開発はスウェーデンにある吉利の子会社CEVT(China Euro Vehicle Technology)で行った。中国河北省の張家口にあるリンクアンドコー専用の工場で生産する。中国での販売価格は11.68万〜15.18万元(約189万〜246万円)。排気量1.5l(リットル)の3気筒ガソリンターボエンジンに、7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせる。インターネットに常時接続する車載通信機は、無期限で無料で利用できる。

新モデル「03」の外観(クリックして拡大)
プラットフォームはボルボのCMAを採用(クリックして拡大)

2分間で6000台売れた

リンクアンドコーが展開する3モデル(クリックして拡大)

 吉利は2010年にボルボの乗用車部門を買収。2013年にはスウェーデンに研究開発拠点としてCEVTを設立し、ボルボやリンクアンドコーを始めとする吉利グループのパワートレイン開発やバーチャルエンジニアリングなどの機能を集約して行っている。開発の成果は吉利グループで共有する基本方針をとる。CEVTでは2500人のエンジニアが働いており、半数がボルボ出身だ。リンクアンドコーで始める個人間カーシェアリングのユーザー登録や認証、決済システム、ユーザーと車両のマッチングといったインフラもCEVTで開発している。

 リンクアンドコーが現在展開する3モデルは、吉利とボルボのリソースを活用している。車両については「ユーザーが見て触れるデザイン以外のところ、ボディーやシャシーはほぼ100%ボルボ」という。エンジンやトランスミッションはボルボと吉利の共同開発だ。プラットフォームは、03だけでなく「01」「02」といった先行して発表したモデルも、ボルボの「XC40」と同じCMA(コンパクトモジュラーアーキテクチャー)を採用した。01はボルボが中国浙江省の路橋に持つ工場で、02と03は張家口のリンクアンドコーの工場で生産する。ボルボの工場を活用した欧州での生産も計画している。

 リンクアンドコーは2018年9月に1万4875台を販売し、3カ月連続で月間販売台数1万台を上回った。月間販売1万台というのは、トヨタ自動車の「アクア」「プリウス」、日産自動車の「セレナ」の2018年9月の国内販売台数と同水準だ。リンクアンドコーとして本格的な販売がスタートしたのは2017年11月から。同社が最初に発表したSUVの01は、中国で発売後2分間で6000台を売り上げた実績も持つ。

写真左からリンクアンドコーのアラン・フィッセル氏と、吉利汽車 デザイン担当シニアバイスプレジデントのアンドレアス・ニルソン(Andreas Nilsson)氏 (クリックして拡大)

 リンクアンドコーのエグゼクティブバイスプレジデントであるアラン・フィッセル(Alain Visser)氏は、既存モデルの販売について「若いユーザーをターゲットにし、しかも狙い通りに取り込むという、自動車業界のマーケティングのおとぎ話を極めた」と語る。武器になったのは、ボルボの技術に対する信頼感と、デザインやマーケティングで発信するブランドイメージだ。

 フィッセル氏はリンクアンドコーのブランド戦略について「今、新しい自動車のブランドは必要かという議論があった。さまざまなブランドがすでに存在している中、差別化を図るには全く新しい価値提案が必須だった。クルマをこれ以上進化させることよりも、消費者のニーズを満たすモビリティソリューションが求められていると考えた。NetflixやSpotifyのように、月極めでモビリティを利用できるクールなブランド、カスマターエクスペリエンスを提供していくブランドと位置付けている」と説明した。エンジニアの平均年齢は34歳で、「ミレニアル世代が乗りたいと思うクルマをミレニアル世代が作っている」(フィッセル氏)という。

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