ソニーから移管した村田のコイン電池、LPWA向けや最大容量品も登場組み込み開発ニュース

村田製作所は、「IoT/M2M展【秋】」(2018年10月24〜26日、幕張メッセ)で、IoT(モノのインターネット)などを対象とした産業向けコイン形二酸化マンガンリチウム電池(コイン電池)を展示した。

» 2018年10月25日 15時00分 公開
[松本貴志MONOist]

 村田製作所は、「IoT/M2M展【秋】」(2018年10月24〜26日、幕張メッセ)で、IoT(モノのインターネット)などを対象とした産業向けコイン形二酸化マンガンリチウム電池(コイン電池)を展示した。

 同社は2018年10月15日、コイン電池ラインアップに新しく「大電流タイプ」と「準耐熱タイプ」を追加したことを発表しており、同社ブースではこれら新製品に高い注目が集まっていた。

展示されたコイン形二酸化マンガンリチウム電池と酸化銀電池、アルカリボタン電池(クリックで拡大)

 コイン形二酸化マンガンリチウム電池は、正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを用いた小型一次電池。村田製作所は2017年9月にソニーから電池事業を買収しているが、同社コイン電池ラインアップもソニーから継承した製品がベースとなっている。今回発表された大電流タイプと準耐熱タイプは、事業移管後に村田製作所が初めて手掛けた新製品だ。

 大電流タイプは、特にLPWA(低消費電力広域)など短時間に大電流が必要な機器の電源として利用されることを想定し、パルス放電性能に特化した製品だ。最大パルス放電電流は50mAと、標準品と比較して約2倍の向上を達成。パルス放電の合計時間は従来品から約3倍延長し、電池交換頻度の削減を狙った。

 同社担当者は「大電流タイプの公称容量は同サイズの標準品よりも低い値であり、ここはパルス放電性能とトレードオフの関係だ。大電流品は標準品から電池内部の組成を変更しており、このパルス放電特性を得ることができた」としている。

大電流タイプと準耐熱タイプのメリット(クリックで拡大)

 準耐熱タイプは、使用温度範囲が−30〜70℃の標準品から、使用温度範囲を少し拡大し−40〜85℃とした製品だ。同社コイン電池のラインアップには既に使用温度範囲が−40〜125℃の「耐熱タイプ」が入っているが、「標準品の5倍程度の価格」(同社担当者)と高コストな製品だった。「顧客から標準品よりも少し使用温度範囲が広く、かつ低コストな製品を求める声が多くあった」ことから、同社は性能とコストのバランスが取れた準耐熱タイプの製品化を決定した。準耐熱タイプは、対候性が求められる屋外設置機器や車載機器、そして屋内機器でも内部に熱がこもりやすいキオスク端末など特殊なコンピュータへの利用を想定している。

 また、コイン電池では最大(同社調べ)となる2000mAhの公称容量を持つ「CR3677X」を、準耐熱タイプの製品としてリリースする。CR3677Xは、直径36.5mm、高さ7.7mm、質量20gと同程度の公称容量を持つCR17450などの円筒型電池と比較して、フットプリントが小さいことが特徴。電池搭載機器の小型化に貢献できるとしている。

 大電流タイプ、準耐熱タイプのどちらも現在サンプル出荷中で、CR3677X以外の製品は2019年1月の量産開始を予定している。CR3677Xは「コイン電池としては大型のため生産ラインの整備が必要」(同社担当者)として、2019年12月頃の量産開始を目指している。

コイン形二酸化マンガンリチウム電池と酸化銀電池、アルカリボタン電池の製品スペック(クリックで拡大)

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