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» 2018年10月30日 06時00分 公開

ドローン:ヤマハ発動機がドローン参入、強い下降気流で農薬を作物の根元に

ヤマハ発動機は2018年10月26日、農業用ドローン「YMR-08」を2019年3月から発売すると発表した。

[齊藤由希,MONOist]
2019年3月に発売する農業用ドローン「YMR-08」。写真左からヤマハ発動機 ソリューション事業本部 ロボティクス事業部 UMS統括部の遠藤征寿氏と、同統括部長の中村克氏(クリックして拡大)

 ヤマハ発動機は2018年10月26日、農業用ドローン「YMR-08」を2019年3月から発売すると発表した。同社がドローンを手掛けるのは初めて。これまでに展開してきた産業用無人ヘリコプターは、大規模な圃場で大容量の農薬散布に向けたものとなるが、ドローンは小規模な圃場で個人が手軽に利用することをターゲットとした。農薬散布に特化したドローンの教習も展開する。

 メーカー希望小売価格は275万4000円。年間販売計画は500台を目標とする。2021年には農業用ドローン市場のシェア50%を目指す。

 ヤマハ発動機は1988年から農薬散布用の無人ヘリを販売してきた。現在では農薬の散布はほとんどが無人機によって行われており、同社の無人ヘリによる農薬散布は、国内の水稲作付面積の40%以上をカバーしている。2017年末時点での同社製無人ヘリの保有台数は2700台を超えた。

 無人ヘリによる農薬散布が向くのは、大規模な圃場に大容量で散布する場面だ。また、個人ではなく複数の農家が共同で害虫防除を実施する場合に用いられてきた。市街地や住宅地、山間地にある狭小圃場に少量の農薬を手軽に散布するにはドローンが適しているが、ヤマハ発動機の製品ラインアップにはなかった。同社は無人ヘリとドローンの両方を展開することにより、農薬散布市場を幅広くカバーしたい考えだ。農業就業人口の減少に伴い、無人ヘリのオペレーターの減少と高齢化が進んでいることも、ヤマハ発動機のドローン参入の背景にあった。

 YMR-08の開発に当たっては、「ドローンである以前に農薬散布装置である」という考えの下、無人ヘリで培ったノウハウを生かし、狙い通りに農薬を散布できることを目指して開発した。小型で機体が軽いドローンは下降気流(ダウンウォッシュ)が弱くなりやすく、農薬を作物の根元まで行き届かせるのが難しい。これに対し、ヤマハ発動機は二重反転ローターで力強い下降気流を発生させて農薬を根元まで行き届かせる。さらに、薬剤の飛散を減らしながら、前進と後進のいずれも同等の散布品質を実現した。

強い下降気流を発生させることにより、農薬を狙った範囲に散布する(左)。自動ターン機能のイメージ(右)(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

 オペレーターやナビゲーターの操作負担を軽減するため、飛行速度を維持する機能や、圃場の端で散布スイッチをオフにすると自動でターンする機能を搭載している。これにより均一にムラなく散布することが可能になる。モーターは日本電産と共同開発した。温度が一定以上に上昇すると、保護モードが作動して焼損を防止する。

 バッテリーはTDKと開発した大容量高出力タイプのリチウムイオン電池を採用している。バッテリーは本体にワンタッチで着脱できるが、定格電圧が44.4Vと高電圧のため、端子のレイアウトの工夫によって安全性を高めた。通電する端子と駆動システムと通信する端子を、高さに差をつけて分散して設けることにより、ショートを防ぐ。駆動システムとバッテリーが接続しないと通電しない仕組みになっており、子どものいたずらなどでも感電しない。バッテリーマネジメントシステムも搭載した。バッテリーの定格容量は852Whで、15分間飛行できる。1haに農薬を散布できる飛行時間となる。農薬のタンク容量は10l(リットル)。

 機体は折り畳み式で、作業に使う車両にも積み込みやすいという。カーボン製のハイブリッドローターは、表面を樹脂でコーティングし、モノと接触した際に破片が飛散するのを防ぐ。

バッテリーはワンタッチで着脱可能。安全性も確保した(左、中央)。ローターは樹脂でコーティングし、モノと接触した場合に破片が飛散するのを防ぐ(右)(クリックして拡大)

 ドローンや無人ヘリを扱うヤマハ発動機のUMS(無人システム)事業部では今後、精密農業(スマート農業)に向けた技術やサービスの展開を強化する。そのため、ドローンや無人ヘリは飛行を自動化した製品を早期に導入する。また、地上を走行する無人車両や、農業用作業ロボットも製品ラインアップに加えていく。農薬散布サービスの効率化も推進する。

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