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» 2018年11月26日 08時00分 公開

Connected Industries Forum 名古屋:理想のスマートファクトリーに近づけるため今必要なこととは (1/2)

MONOistは2018年11月9日、名古屋市内で「Connected Industries Forum〜製造業のデジタル変革は『理想』と『現実』の両輪で実現せよ〜」を開催した。

[加藤まどみ,MONOist]

 MONOistは2018年11月9日、名古屋市内で「Connected Industries Forum〜製造業のデジタル変革は『理想』と『現実』の両輪で実現せよ〜」を開催した。

 製造業におけるデジタル変革への取り組みが加速しているが、マスカスタマイゼーションや完全自立工場などの理想を実現するまでの道のりは長く、堅実に小さな成果を積み重ねていくことが重要とされる。

 基調講演では三菱電機 FAソリューション事業推進部 FAソリューションシステム部 部長の大谷治之氏が「製造業におけるIoTとデジタライゼーション」のタイトルで講演し、元祖スマートファクトリーといえる「e-F@ctory」ソリューションの最新の展開やデータ連携などの課題への対処について語った。特別講演ではジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部 ラインコントロール技術部 部長の山口泰一氏が「ジェイテクトが取り組む『人が主役のスマートファクトリー』」のタイトルで講演し、人の成長を促す視点からのIoT活用事例について語った。

 これらに加えて、「製造業のリアルなIoTを実現するエッジ&クラウドによるハイブリッドIoTの実践例ご紹介」(日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 インダストリーマーケティングマネージャーの鈴木靖隆氏)、「IoT時代の生産準備改革と自動化推進」(電通国際情報サービス DER技術1部 部長の深堀竜也氏)、「製造業のサービス化戦略 『ものづくり×IoT』」(ユニアデックス DXビジネス創生本部 IoTビジネス開発統括部 サービス企画部 部長の村上義朗氏)、「初期費用0円で始めるIoT SaaSサービス『IoT GO』とその導入効果」(マイクロリンク 代表取締役社長の久野尚博氏)の4つのセッションを実施した。

元祖スマートファクトリーは横展開を強化

CIF名古屋 三菱電機の大谷治之氏

 三菱電機は元祖スマートファクトリーともいえるe-F@ctoryソリューションの提供を2003年に開始。同社の名古屋製作所にe-F@ctoryを適用したモデル工場を展開している。

 三菱電機の大谷氏は冒頭で、日本の課題として労働人口が減少していくことを指摘。一方、働き方改革を推進する動きにより就業時間も制限されており「このような逆境の中、労働生産性をいかに確保していくかが課題となっている。そこでIoTやAIなどの活用に期待が掛かっている」と語った。

 大谷氏は「e-F@ctoryはIoTやデジタライゼーションを活用したトータルソリューション。モノをより早く、安く作ることができ、不良品を作らず、人の安全確保といった効果を提供できる」という。

 その機能は、リアルタイム情報収集、分析、そしてフィードバックの3つからなる。ポイントは、現場とクラウドの間にエッジコンピュータを挟んで提供していることだ。現場とクラウドを直接つなげることは現実的ではないため、エッジコンピューティングによりデータ変換や不要なデータのフィルタリングを行う。またエッジコンピュータにより、現場のデータを素早く分析してすぐフィードバックすることが可能になる。

 生産性向上においてFAとITの両方が必要という観点から、e-F@ctoryの導入段階は3ステップに分けられている。ステップ1が人の作業支援、ステップ2が人と機械の協働、ステップ3が知能化と自動化である。それぞれのステップの事例として、ねじ締め工程における作業員ごとの作業時間の可視化や指示、多品種少量生産の電磁開閉器工場における「ロボット組み立てセル」、コネクターはめ合い作業のティーチングへのAI適用などを紹介した。いずれにしろ「設備投資はそれなりになる。何をどれくらいの予算で行うか検討することが重要」という。

 三菱電機は同社のFA機器と他社製品を連携させて顧客に最適なソリューションを提供するため、パートナープログラム「e-F@ctory Alliance」を構築している。同社のFA機器と連携可能なソフトウェアや機器を持つパートナーおよびシステムインテグレーターの約640社が参加する。「アライアンスによるシステム導入実績は世界で200社、7700件以上になる。欧米中に加え、最近は台湾、韓国でもアライアンス会を発足した」(大谷氏)という。

 大谷氏は「クラウドは長期的には必要だが、なるべくエッジコンピューティングで現場の処理をやっていこうというのが大きな考え方」だといい、エッジコンピューティングの共通基盤ソフトウェアである「エッジクロス」を紹介した。「まずIoTという手段の準備に手間が掛かる。通信規格は多くあり、それらをどうつないでいくかが課題」(大谷氏)であることから、収集されたデータをエッジクロスにより連携させる。エッジクロスを開発したエッジクロスコンソーシアムは7社のFAやITベンダーが幹事会社となり、220社以上の会員が参画している。データコレクタや基本ソフトウェア、エッジアプリはマーケットプレース上で入手することができる。

 最後に大谷氏は「IoTは手段であって目的ではない。導入時には目的、誰のためか、そしてコアコンピタンスについて必ず聞くようにしている。検討する際には改めて、目的と最適な手段を確認することが重要だ」と語った。

日本ではローカルサークルが徐々につながっていく

CIF名古屋 ジェイテクトの山口泰一氏

 特別講演に登壇したジェイテクトの山口氏は「今求められるのは、人が主役のIoT」だと述べた。そのため「IoTではなくInternet of Everything、IoEとしたい。これは正しい分析、学習を通じて人も含めて見える化を行うということだ」とする。

 世界の状況をみると、各国は積極的にデジタル化やITを用いて効率化を図っている。アメリカ、中国、欧州に加えて、タイも「タイランド4.0」を発表した。中国の「中国製造2025」では「人材育成も掲げているのが脅威であり、政府の後押しもありどんどん進んでいる」という。ジェイテクトの扱う工作機械でいえば、「製造の難しい5軸制御機は日本とドイツのお家芸だったが、中国も開発や発表を行うようになっている」と危機感を語った。

 ジェイテクトの親会社であるトヨタの「トヨタ生産方式(TPS)」の基本はジャストインタイムと自働化になる。「TPSは進化しながら今まで続いている。この基本となるのが目で見る管理であり、ここに大きな価値があると考える」(山口氏)。そこで山口氏はまず、つながる化、見える化を提案する。

 簡単な同社のソリューションを追加することにより従来設備をIoT化した例が、3色灯による現場の見える化だ。3色それぞれの箇所に電源を乾電池とするセンサーを貼り付け、各色のONとOFFを検出するものだが、これだけでも稼働状態が見えてくる。異常時間や回数のチェック、稼働状況の時系列での表示などを行い、異常をトリガーとして映像を記録することも可能だ。1台の受信機で50台の送信機が見えるようになっており、遠隔でも確認できる。

 ジェイテクトでは人の成長をうながす取り組みを重視する。同社が発表した「スキルアップナビ」では、個人の製品・作業時のスピードなどを記録し、得意・不得意が分かるため、効率のよい教育によって成長を促進することができる。また作業スピードが上がればアイコンで示すといった、やる気をうながす仕掛けもある。「人の管理ではなく、成長のためのポイントを浮き彫りにしていきたい。その結果、会社としても変化への対応力を身に付けることができる」と山口氏は語った。

 一方、「紹介したのは取り組みやすい例だが、いずれは全行程にまたがった仕組みが望まれる」と山口氏はいう。「ドイツは国が号令を掛けて進めているが、日本では個別にローカルサイクルがまずできていく。次はそれらをつなげることになるだろう。そうなればデジタルに対応できる会社が必要とされ、それが会社の強みにもなる」(山口氏)と話す。

 「日本には長い日本のモノづくりの蓄積があるが、海外は膨大なデータを駆使して距離を縮めてくる。しかし主役はあくまで人であり、大きな変革や改善には人の知恵が不可欠だと考える」と山口氏は語った。

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