日本の防衛装備技術の展示会、空気感は「CEATEC JAPAN 2018」に近い防衛装備庁技術シンポジウム2018レポート(2/3 ページ)

» 2018年11月27日 10時00分 公開
[林佑樹MONOist]

陸上装備研究所:CBRNに対応する遠隔操縦作業車両システム

 陸上装備研究所は、1つ先の土木現場的な展示があった。CBRN(Chemical、Biological、Rradiologica、Nuclear)対応遠隔操縦作業車両システムの研究だ。東日本大震災直後、福島第一原子力発電所とその周辺の放射能レベルが高く、障害物撤去や通路啓開などの作業や地上からの情報収集が困難だったそうだ。現場の情報が得られない環境での初動対応としては、安全な地点からの遠隔操縦による無人車両システムの確立が望まれ、本研究がスタートしている。

CBRN対応装軌車両の参考モデル CBRN対応装軌車両の参考モデル(クリックで拡大)

 作業車両に搭載されたレーザーレンジファインダーが得たデータを集め、俯瞰可能な3D地図を作成。それを作業車両間で共有し、遠隔操縦者は遠隔操縦に適した視点での作業が行える。CEATEC JAPAN 2018において、コマツは工事車両の自立走行とセンシングのデモを行っていたが※)、それにデータリンクと自由視点が加わったものとして見ると、理解しやすいハズだ。

※)関連記事:コマツの自律運転建機、AIは「適材適所」で採用

 また被災地での導入も視野に入っており、この場合は先にUAV(無人航空機)で地表データを得て、従来よりも効率的な運用も可能とするほか、隊員個人レベルでの共有も将来的には実現するだろうとのことだ。

CBRN対応遠隔操縦作業車両システムの研究のポスター「CEATEC JAPAN 2018」のコマツのデモ機内部 CBRN対応遠隔操縦作業車両システムの研究のポスター(左)と「CEATEC JAPAN 2018」のコマツのデモ機内部(右)。搭載するセンサーについては、あまり差はないそうだ(クリックで拡大)

電子装備研究所:防衛装備の高機動パワードスーツとは

 電子装備研究所、先進技術推進センター、先端技術ブースは1つの部屋にまとまっていた。先進技術推進センターから見ていくと、高機動パワードスーツのテストモデル展示が注目を集めていた。パワードスーツは、強骨格のようなものあれば、シマノの医療用アシストスーツ「STRONG HOLD」のように部分的に固定する目的のようなものから、電源を使用しないものまでと豊富だが、高機動パワードスーツは移動と負担軽減を目的にしたもので、腰から下に装着するタイプになる。

高機動パワードスーツの外観高機動パワードスーツの外観 高機動パワードスーツの外観(クリックで拡大)
高機動パワードスーツの脚部のアップ 高機動パワードスーツの脚部のアップ(クリックで拡大)

 研究の達成事項には、50kgを携行した状態で時速13.5kmでの駆け足と不整地での行動も確認しているほか、負荷軽減は30kg以上とあった。2019年度からは性能確認試験に入るそうだ。

航空機用ライフサポートシステムのポスター サポートスーツとしては、航空機用ライフサポートシステムのポスターも。JAXAと身体冷却技術研究を協力している。身体冷却については、昨今、日本の気候が亜熱帯化しており、酷暑作業用としても発表が続きそうなカテゴリーでもある(クリックで拡大)
光コムを用いた化学材及び生物剤の汚染状況を把握する可能性の研究 光コムを用いた化学材及び生物剤の汚染状況を把握する可能性の研究。車両やドローン、ポストセンサーを設置するだけでよく、工場や作業区域に採用されるほうが速いかもしれないと担当者は語っていた(クリックで拡大)
有用と考えられる光コム分光の原理 有用と考えられる光コム分光の原理(クリックで拡大)

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