「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

クルマと人の“真の共生”実現に貢献する「ミリ波」の可能性自動運転技術(1/2 ページ)

パナソニックは100周年を記念して行う同社初の全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」を開催。その技術セミナーとして「安心・快適なモビリティ社会〜つながるセンサー」をテーマとし、独自のセンシング技術とその応用について紹介した。

» 2018年12月03日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 パナソニックは100周年を記念して行う同社初の全社ユーザーイベント「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM 2018」(2018年10月30日〜11月3日)を開催。その技術セミナーとして「安心・快適なモビリティ社会〜つながるセンサー」をテーマとし、パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社)プラットフォーム開発センター 無線技術開発部の入江誠隆氏、佐藤潤二氏、パナソニック コネクティッドソリューションズ社(CNS社)イノベーションセンター ネットワーク事業統括部 ITS事業開発室の中川洋一氏が、ミリ波によるセンシング技術とその応用について紹介した。

新たなモビリティ社会を支えるセンシング技術

 クルマや交通インフラがさまざまなセンサーを備え、モビリティの姿が新たな形へと変化しようとしている。パナソニックでは、これらのモビリティの変化に対して貢献できる強みの1つとして、センシング技術を挙げ、技術開発を強化している。

 具体的に、同セミナーで紹介したのが、ヒトの周りを検知するセンサーとして視界不良時でも周囲を見える化する「3次元測位ミリ波レーダー」と、状況を伝える手段として、ギガビットの大容量センサーデータの伝送を実現する「ミリ波通信」、センシングによる大容量データシェアで実現する用途として「ミリ波レーダーの路側センサー応用」である。

 「3次元測位ミリ波レーダー」は「人の周囲をいかに見える化するか」をテーマとした空間のセンシング技術として開発を行っている。ミリ波レーダーは、雨や雪などの耐環境性が強いという特徴がある。一方で、分解能は光学系のセンサーに比べて劣っている。ただ、これは周波数帯を上げることで分解能は向上する。さらに、レーダーの3次元化で分解能を高めることが可能だとする。パナソニックではこれらの課題を解決し、分解能を高める開発を進めている。

photo CEATEC JAPAN 2018で参考出展された3次元測位ミリ波レーダー(クリックで拡大)

 ミリ波レーダーは、これまでもクルマ社会で利用されてきたものだ。道路であればクルマなどモノの存在を判断することに使われていたが「今後は、クルマだけでなくセキュリティや産業機械など広い分野で空間のセンシングに利用するというニーズも増加しつつある」と佐藤氏は述べる。

 その場合、取り付ける位置もさまざまとなるために、機能として2次元ではなく、縦方向にも分解能を持つ3次元としてのレーザーセンサーの機能が求められる。さらに、視界がきかない中でも、物体の検出だけでなく識別についての要望も高まってきているという。

 現在の研究としては、アンテナの配置を工夫して、少ないアンテナの数で3次元に対応するような研究を行っている。アンテナの数が減ると分解能が低下するが、それをカバーして分解能を保つことに取り組んでいる。3次元になると「高さが分かるため歩行者の検出にしても、現在以上の高精度化が可能だ」(佐藤氏)とする。

 今後は「吹雪の中などの視界不良時でも同レーダー使うことで、リアルタイムに人の検出や、工事現場での安全性確保などへの利用が考えられる。また、物陰や壁の向こう側など物理的に見えない場所のモノの検出にも活用できるだろう」と佐藤氏は技術の発展性について述べていた。

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