Special
» 2018年12月03日 10時00分 公開

スマートファクトリー:ちょっと先の未来が見えるスマートものづくり、CPSによる可視化で実現

富士通の小山工場で、ネットワーク機器・装置・システムを製造する富士通テレコムネットワークスがスマートものづくりの取り組みを進めている。年間で最大2500品種にのぼる変種変量生産を特徴とする同社は、CPS(サイバーフィジカルシステム)に基づく可視化と生産の最適化を通して、スマートものづくりで目覚ましい成果を上げている。

[PR/MONOist]
PR

背景:スマートものづくりの更なる進化を目指すFTN

 富士通テレコムネットワークス(以下、FTN)は、富士通の小山工場(栃木県小山市)でネットワーク機器・装置・システムを製造する製造子会社である。1959年に開設され、間もなく60周年を迎える同工場は、2015年からFTNを中心にスマートものづくりの取り組みを進めている。2018年3月には、そのスマートものづくりをさらに進化させるべく、工場での取り組みを可能な限り可視化し、富士通・顧客企業などとの新たな価値共創(Co-Creation)が可能になる場として、スマートものづくり実践ラインに併設する「Connection&Creation Center(C&Cセンター)」を開設した。

 C&Cセンターとスマートものづくり実践ラインには既にさまざまな企業が訪れており新たな共創が始まりつつある。スマートファクトリー関連で自社の成果を惜しみなく他社に公開するという事例はあまりない。FTNはなぜこのような取り組みを進めているだろうか。

富士通テレコムネットワークスのスマートものづくり実践ライン 富士通テレコムネットワークスのスマートものづくり実践ライン

課題:2500品種もの変種変量生産にいかに対応するのか

富士通テレコムネットワークス 執行役員 生産技術・製造部門担当の寺内秀明氏 富士通テレコムネットワークス 執行役員 生産技術・製造部門担当の寺内秀明氏

 スマートものづくりを始める段階でFTNの課題となっていたのは、年間で2500品種にも及ぶ変種変量生産への対応だった。FTNは、光伝送装置、無線伝送装置、屋内基地局装置、宅内装置などを製造しているが、これらの製品は顧客要求に合わせてさまざまに仕様を変える必要があるため、2500種類という生産品種数になってしまうのだ。

 この生産品種数のうち、ほぼ毎週製造する品種は全体の約5%にすぎず、年間1〜9週しか製造しない品種が74%を占めている。さらに、最新〜レガシー装置、コアネットワーク〜宅内装置と幅広い生産のため、月ごとの生産変動が最大で3倍に達する。

 現在FTNが生産している装置は、かつて3つの工場で製造していたが事業環境が変化する中で、ものづくり力を強化するため小山工場に集約し変種変量生産が大幅に加速している。FTN 執行役員 生産技術・製造部門担当の寺内秀明氏は「実装ラインで製造する回路基板の品種に至っては、従来比で2倍以上の5000品種にまで増えました」と語る。

進め方:CPSの枠組みを通して49種類の可視化コンテンツを構築

 FTNのスマートモノづくりに向けた取り組みは、既存の実装ラインで約2倍に達する回路基板の品種数に対応するところから始まった。寺内氏は「まずは弊社の中で膨大な組み合わせが発生する表面実装(SMT)工程で、最適な流し方を実現する設備配置や段替えを最小化する実装基板の組合せに数学的手法を活用しました。その結果、3工場で各々製造していたSMT基板を設備・スペースを増やすことなく、ここ小山工場で製造可能としました。ものづくりに数理計画法、クラスタ分析を実践し生産性を向上させた事例としてはかなり早い部類に入るのではないでしょうか」と説明する。

 そして2017年以降は、バラツキ要因が多い人が作業を行う組み立てラインや試験ラインでも数学的手法を拡大。「実際に生産を始める数日前とライン投入直前で『事前最適化』し、さらに今は数分先のライン状況を予測することを実践しています」(寺内氏)という。

 また、寺内氏は「ものづくりすることで生まれる各種データの活用は、インダストリー4.0が広がりIoTデバイスが小型・LPWA(ローパワーワイドエリア)化し、安価になったことでさらに加速させるべきと考えました。そこで、実工場と仮想工場を密に連携し、事前最適化だけでなくリアルタイムな最適化も可能にするCPS(サイバーフィジカルシステム)の枠組みを構築し、さらに領域を広げるため多くの方々と共創するためにも工場をオープン化することを決めたのです」と説明する。

富士通テレコムネットワークスが目指すスマートものづくり 富士通テレコムネットワークスが目指すスマートものづくり

 現場からのデータ収集は段階的に進め、現在は「Raspberry Pi 3」をはじめ多くのIoTデバイスをライン内に設置するとともに、LTE技術を活用した切れにくい無線LAN(富士通グループ会社開発)なども先行導入し、データを広く・深く・動的に収集している。

富士通テレコムネットワークス 生産技術統括部 AI技術推進室 (兼) 共通基盤技術部 生産システム開発担当 室長の舞田正朋氏 富士通テレコムネットワークス 生産技術統括部 AI技術推進室 (兼) 共通基盤技術部 生産システム開発担当 室長の舞田正朋氏

 そして、2017年11月〜2018年3月にかけて、これらの収集したデータを基にした可視化の取り組みを行った。現在、C&Cセンターの中央にある大型ディスプレイに表示されているのがその成果となるダッシュボードだ。富士通の「FUJITSU Enterprise Application Intelligent Dashboard(以下、Intelligent Dashboard)」をベースにしつつ、BIツールを用いて、49種類ものコンテンツを用意し、今後は経営への活用を検討している。

 FTN 生産技術統括部 AI技術推進室 (兼) 共通基盤技術部 生産システム開発担当 室長の舞田正朋氏は「データは沢山あったが、それをどのように可視化するかは確かに簡単ではありません。我々はまず、製造工程とQCDE観点のマトリクス上に目的が明確な可視化コンテンツを整理した上で、コンテンツのユーザである現場と協力してそれらのコンテンツを一気に作り上げました。事前にスモールスタートで始めた一部のコンテンツ開発で得た可視化に関するノウハウを蓄積していたため、この作業はスムーズに進んだと思います」と説明する。

富士通テレコムネットワークスのCPSにおける「Intelligent Dashboard」とBIツールによる可視化 富士通テレコムネットワークスのCPSにおける「Intelligent Dashboard」とBIツールによる可視化

効果:「理想」と「現実」のギャップを埋め、未来も予測する

 FTNでは、ものづくりに関係するデータを集約、可視化したダッシュボードの完成に合わせて、スマートものづくり実践ラインでもさまざまな取り組みが進んでいる。

 FTNは変種変量生産における生産性向上を実現するために、組立から試験、梱包の工程までを、さまざまな品種を1つのラインで同時に生産する混流一個流しを行っている。その工数差は4倍にも達するため、工数の大きい製品が連続しないように順序をコントロールすることが重要である。スマートものづくり実践ラインでは、数理計画法を活用して、生産順の最適化を計画段階で実行している。しかし、実際の製造段階ではさまざまな要因が複合して、計画よりも生産性は低下してしまうのが一般的だ。

 この事前最適化における「理想」と、実際の製造における「現実」とのギャップを解消するために行っているのが、CPSを活用したリアルタイム最適化だ。IoTによって収集した人の情報、モノの情報からラインの状態をリアルタイムで把握しており、組立の順序を入れ替えるなどして「理想」に近づけるようにしている。

富士通テレコムネットワークス 生産技術統括部 共通基盤技術部 部長の市原康弘氏 富士通テレコムネットワークス 生産技術統括部 共通基盤技術部 部長の市原康弘氏

 さらに興味深い取り組みが「未来予測による改善」である。スマートものづくり実践ラインでは、ライン管理者が常駐するコントロールセンターが設けられている。ここでは、IoTによって収集したデータを用いて、過去の実績を基にした傾向の見える化と、ラインの現在の進捗状況をデータ化し、統計分析からラインの約10分後の状況を踏まえ、過去、現在、未来を可視化している。FTN 生産技術統括部 共通基盤技術部 部長の市原康弘氏は「ライン管理者は、過去、現在、未来の状況を見ながら、ラインで起きている問題を敏感にキャッチして改善に必要な情報を収集するとともに、遅れが発生しそうなときには問題の起こっている工程で対処法などを指示します」と説明する。

 なお、この未来予測による改善は、可視化の取り組みによって生み出されたものだ。「多くの人と可視化データを見ることで新たなデータ活用が発案でき、生産性向上につながっていると感じています。今回、可視化は人の発想をナビゲートする上でも重要だと思いました」(舞田氏)という。

スマートものづくり実践ラインに設けられたコントロールセンター スマートものづくり実践ラインに設けられたコントロールセンター。「未来予測による改善」を実現している

 FTNでは、2018年度から、各製造ラインに分散していた部材を部品倉庫に集約している。部品倉庫では、変種変量生産となり、リアルタイムに最適化された製造順序にあった製品の部品ピッキングを行っている。ここでもピッキングを行う人や部品から得られるあらゆるデータを収集することでCPSを構築している。そして、事前最適によって、部品のピッキング作業の動線短縮や“渋滞”が起きにくい部品棚の配置を行っている。また、実行段階おいて、円滑かつポカミスのないピッキング作業を支援するとともに、ポカミスしそうになった情報も収集された可視化するシステムも導入している。加えて、富士通の生産ラインシミュレーター「GP4(FUJITSU Manufacturing Industry Solution GP4)」を用いた作業負荷のシミュレーションを基にした、棚配置の最適化や作業負荷の均一化も行い、一見、相反する生産性向上と人にやさしいものづくりの両立を目指している。

今後:日本のものづくりの求められる一品一様の実現に貢献

 スマートものづくりに向けてさまざまな取り組みを進めてきたFTNだが、今後はどのような進化の方向性を見据えているのだろうか。寺内氏は「現在のCPSは、工場内におけるものづくりに関わるところにフォーカスしたものになっています。これを工場全体の情報を見られるCPSに広げていきたいですね。そして、富士通の開発部門、そして社外のサプライヤーやお客さまともデータをつなげて、新たな価値創造の実現につなげられれば」と展望する。

今後は広義のCPSの実現を目指す 今後は広義のCPSの実現を目指す

 このようにCPSの枠組みを広げていくには、現在のものづくり中心からECMやSCMなどとも連携する広義のCPSに作り替えていく必要がある。舞田氏は「スモールスタートで構築してきたCPSをより広げていくには、他のシステムとの連携がやりやすく、セキュリティなども確保されているITソリューションが必要になるでしょう。そこで、富士通のものづくりデジタルプレイス『COLMINA』を活用していきたいと考えています」と話す。

 また、FTNで培ってきた変種変量生産に対応するスマートものづくりの成果は、今後のCOLMINAの展開にも反映されていくことになりそうだ。2018年10月に発表したCOLMINAの新バージョン「COLMINA V2」の新機能には、FTNのノウハウが一部組み込まれているという。このほかにも、スマートものづくりの成果を汎用化し、COLMINAのソリューションとして外販する可能性も検討されている。

富士通テレコムネットワークス 事業企画統括部長 兼) 事業企画統括部企画部長の住吉正寿氏 富士通テレコムネットワークス 事業企画統括部長 兼) 事業企画統括部企画部長の住吉正寿氏

 また、今後のスマートものづくりで重要な役割を果たすのが、C&Cセンターとスマートものづくり実践ラインを活用した外部企業との共創だ。共創の推進を担当するFTN 事業企画統括部長 兼) 事業企画統括部企画部長の住吉正寿氏は「2018年11月初旬までで、既に1000人ほどの方に見学に来ていただいています。見学をきっかけに『うちの工場も見に来ないか』というお話もいただいています」と説明する。

 寺内氏は、「正直なところ、FTNのスマートものづくりが他社よりも進んでいるとは思っていません。だからこそ、外部企業の方にはどんどん見てほしい。そしてただ見るだけではなく、議論を重ねることで共創したいと考えています。CPSを活用しながら共創を重ねることで、進化され続けているでしょう。そしてまたその姿を見てほしい」と強調する。続けて同氏は「FTNの変種変量生産は、これからの日本のものづくりに求められるであろう一品一様を実現するのに役立つはずです。ものづくり領域のCPSをさらに進化させ、領域を拡大させて、より企業的・社会的価値の高いものづくりの実現に貢献していきたいと考えています」と意気込みを述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月16日