セキュア、省エネ、小型…… IoTに進化をもたらす東芝の最新ソリューションを一挙紹介ET2018レポート【東芝デバイス&ストレージ】

先端の組み込み技術やIoT(モノのインターネット)技術にフォーカスした総合技術展「Embedded Technology 2018/IoT Technology 2018」(ET2018)が11月に開催された。東芝デバイス&ストレージは、セキュアなIoTネットワークシステムを構築するためのプラットフォームや、省エネにつながるモータソリューションなどIoTの進化に欠かせないさまざまなソリューションを展示した。ここでは、ET2018で注目を集めた東芝デバイス&ストレージの展示を紹介していく。

» 2018年12月05日 10時00分 公開
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 先端の組み込み技術やIoT(モノのインターネット)技術にフォーカスした総合技術展「Embedded Technology 2018/IoT Technology 2018」(以下、ET2018)が11月に開催された。同展示会では、IoTのエッジ領域に向けたさまざまな技術/製品サービスが披露された。その中で、東芝デバイス&ストレージは、セキュアなIoTネットワークシステムを構築するためのプラットフォームや、省エネにつながるモータソリューションなどを紹介し、多くの注目を集めた。本稿では、東芝デバイス&ストレージのET2018での展示を詳しく紹介しよう。

東芝デバイス&ストレージが展示を行った東芝グループブース

IoT機器のファームウェア更新を安全に

 IoTの普及によって、さまざまな機器がインターネットに接続される。企業は収集した膨大なデータを分析し、それを活用することで価値の高いサービスを提供する。IoT機器に搭載されるマイコンにも、IoTネットワークシステムの構築に向けた機能が求められている。その1つが、不正なアクセスやソフトウェア改ざんなどを防止するための技術である。

「セキュアIoTシステム センサデバイスの概要」

 東芝デバイス&ストレージが提案する「MbedによるセキュアIoTプラットフォーム」は、Mbed OS搭載マイコン「TX04シリーズ」と「Arm® Pelion IoT Platform」を使用して、デバイスからクラウドシステムまで、比較的容易にセキュアなIoTネットワークシステムを構築することができるソリューションである。このシステムには、東芝デジタルソリューションズのクラウドサービス「SPINEX」も含まれており、東芝グループで一貫したソリューションを提供する。

 ブースでは、加速度センサやジャイロセンサ、温度センサなどを搭載した東芝デバイス&ストレージ製マイコンが搭載された評価ボード「AdBun」シリーズを用い、ボードの姿勢制御情報を収集して、モバイルルーター経由でクラウド側にデータを送信、PC画面上に基板の方位やピッチ、ロールなどのデータを表示するデモを行った。

「MbedによるセキュアIoTプラットフォーム」の概要

 IoTプラットフォームの差異化技術として、同社が強調するのは独自のセキュアシステムである。「セキュアファームウェアローテーション」と呼ぶこの技術は、既に出荷した機器のファームウェア更新時などに威力を発揮する。

 従来の組み込み機器は、ファームウェアの更新などを現場で行うことは極めて少なかった。組み込まれたソフトウェアを書き換える場合でも専任者によるオフライン作業がほとんどで、プログラム改ざんなどのリスクを心配する必要はあまりなかった。

 これに対してIoT機器は、遠隔地からネットワークを介して、ファームウェア更新などが容易に行える。このため、製品を出荷した後でも、ソフトウェア更新による新たな機能追加や不具合部分の修正などが迅速に行える。一方、ネットワークから機器に侵入して、内部のデータを破壊したり盗んだり、プログラムを改ざんしたりするサイバー攻撃の被害も増大している。

 セキュアファームウェアローテーションは、出荷済みIoT機器のファームウェアを現場で更新する時に、不正な書き込みを防止する技術である。この技術の仕組みはこうだ。機器に実装されたフラッシュメモリ内に複数(通常は2つ)のファームウェア格納領域を設けている。1つが通常の起動用で、書き込み禁止の状態に設定されている。もう1つは更新用に設けた書き込み可能な領域である。

「セキュアファームウェアローテーション」のイメージ

 更新用のメモリ領域に、ダウンロードしたプログラムが書き込まれると、これがデジタル署名された正規のファームウェアかどうかをマイコンが判断する。正当なファームウェアと確認できた時だけ、更新用領域と起動用領域を切り替えて、新たなプログラムを利用可能にする。

 マイコンが不正なファームウェアと判断した場合は、更新用領域に書き込まれていてもそのプログラムは採用しない。この結果、従来の起動用領域にあるファームウェアは保護され、安全性が担保される。仮に不正なプログラムがRAMに展開されて、内蔵マイコンが誤動作しても、いったん電源を切ってリセットすれば正常動作に戻すことができるという。

新たな制御方式で高効率モータ駆動を実現

 地球環境の保護や温暖化防止に向けて、エネルギー消費の削減や抑制への取り組みが不可欠となっている。日本では、エネルギー消費効率の向上を目的に、1999年より「トップランナー方式」が導入された。こうした中で、省エネに最も効果的と期待されているのが、モータの消費電力を削減することである。エアコンや冷蔵庫、洗濯機といった家電製品を始め、OA機器や産業機器など、さまざまな機器にモータが搭載されている。これらのモータが年間に消費する電力は、日本全体で消費される電力の半分以上を占めると推計されている。「全モータが消費するエネルギーを削減するだけでも、省エネ効果は大きい」という。

 そこで各社は、高効率モータの実現に向けて、新たな駆動方式や制御方式などの開発に取り組んできた。東芝デバイス&ストレージでも、東芝グループの研究所と連携して、モータを効率よく駆動させるための制御方式や、その処理に適したマイコンを開発してきた。

モータ制御用マイコン「TXZ4シリーズ」の製品ラインアップ (クリックで拡大)

 モータ制御用マイコン「TXZ4シリーズ(TMPM4K)」による低速センサレスベクトル制御もその1つだ。家電製品などで採用が増加している永久磁石同期モータ(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)は、回転子の位置に応じて電流を供給しなければならないため、磁極位置を検出する必要がある。

 センサレス制御においては、誘起電圧を用いて磁極位置を推定する方法が一般的に用いられるが、回転数が低いと誘起電圧が発生しないため停止・低速域において推定は困難である。そのため「強制転流方式」を用いるが、この方式だとモータが回り始めるときに大きな電流を供給しローターを回転させる必要がある。回転数が上がると誘起電圧が発生し磁極位置が推定できるため電流を小さくできるが、起動時の大きな電力消費が課題となっている。

 ローター位置の検知に「高周波パルスを印加する制御方式」も提案されているが、高周波による耳障りな音を発生するため、騒音を気にする家電製品などには向いていない。レゾルバやエンコーダーなど位置検出用センサを用いると、起動時の消費電流や騒音は小さくできるが、コスト高になるという。

 そこで同社が新たに考案したのが「低速センサレス制御方式」である。この方式は、モータ制御回路「A-PMD(Advanced Programmable Motor Driver)」とA-Dコンバーターを利用してインダクタンス成分を検出する。3つの相の比較器にはそれぞれ、三角波やのこぎり波など異なるパターンの基準波信号を入力することができ、そこから特殊な通電パルス信号を生成する。そのため意図的な電圧を印加することなくパルス通電中に変化する電流を測定でき、ローター位置を高い精度で検知する仕組みである。位置検出用センサを用いなくても、モータ停止時あるいは低速域での位置検出を可能にした。

「低速センサレス制御方式」(右)と他の制御方式との比較

 低速センサレス制御に最適なマイコン「TXZ4シリーズ(TMPM4K)」も用意した。CPUはクロック周波数が最大160MHzのArm® Cortex®-M4コアを搭載している。さらに、A-PMD機能やVE(ベクトルエンジン)をハードウェアで内蔵した。これによって、CPUコアの処理負荷を軽減している。

大電流、省面積のフォトリレー

 リレーは、入力側と出力側の回路を電気的に絶縁しながら信号を伝達したり、負荷を制御したりするために用いられるデバイスである。これまではメカリレーを中心に、さまざまな用途に活用されてきたが、近年は「フォトリレー」など半導体を利用したリレーの市場が拡大している。

 フォトリレーは、メカリレーに比べ小型で長寿命、低ノイズ、省電力、高速スイッチングといった特長があり、メカリレーからの置き換えが加速している。これまで、フォトリレーの課題といわれてきた、高容量化に対応した製品も登場している。

 今回、同社が参考展示したフォトリレーは、4端子P-SON(Power Small Outline Non-leaded)パッケージを採用した。外形寸法は2.1×3.45mmである。このサイズで、最大4.5Aの大電流に対応している。4A対応の同社製品は、6端子SOP(Small Outline Package)で供給されており、外形寸法は7.0×6.3mmである。参考展示品は実装面積を80%も縮小したことになる。

4端子P-SONパッケージを採用した最大4.5A対応フォトリレー(右)。従来の4A対応SOP6パッケージ品に比べ実装面積を80%削減できる

 小型化を可能にしたのは、新たに採用した微細プロセスでのチップ製造と、複数チップを縦に積層するパッケージ技術である。参考展示のフォトリレーは、MOSFETの上にフォトダイオードを積層し、その上に透明な絶縁樹脂を重ねLEDを積み上げる構造とした。素子製造からパッケージングまで全ての工程を東芝グループ内で行っていることが、製品開発の強みとなっている。

フォトリレーとメカリレーの比較デモ。ボタンを押すと、それぞれ直列に接続した200個のリレーを介して、上段のランプが点灯する。フォトリレー(写真奥)は、ボタンを押すと瞬時にランプが点灯するが、メカリレーは特有の音を鳴らしながらスイッチを行いランプ点灯までに2秒程度を要した (クリックで拡大)

 ブースでは、フォトリレーとメカリレーをそれぞれ直列に200個接続し、ランプが点灯するまでのトータルスピードについてデモを行った。これによると、遅延時間はフォトリレーが1個当たり1ミリ秒、メカリレーは同じく10ミリ秒であり、ランプ点灯までにフォトリレーは200ミリ秒で済んだが、メカリレーは2秒も要した。

 参考出展として、光絶縁型スマートゲートドライバカプラも紹介した。本製品は、パワーデバイスのゲートを駆動するためのICである。回路にバッファアンプを組み込んで設計することを前提に開発したという。同ICのピーク出力電流は最大2.5Aだが、バッファアンプを組み合わせることにより、ピーク出力電流は10〜20Aまで対応可能である。

光絶縁型スマートゲートドライバカプラの評価ボード

 これまでは実装するIGBTの仕様に合わせてゲートドライバーICを選択する必要があった。ところが、同ICは後段のバッファアンプを最適化することで、さまざまなIGBTに適用することができる。このため、「ゲートドライバーICの選択で悩むことがない」という。また、IGBTに異常が発生し過電流などを検出した場合に、IGBTのゲート電圧を緩やかにOFF(ソフトシャットダウン)させると同時に、FAULT信号を制御基板側コントローラへ返すことで、セットの緊急停止など安全動作制御を可能にする端子も備えている。

白物家電にも搭載可能な音声HMI

 リモコンやタッチパネルなど、電子機器を操作する手法は進化を続ける。人間が発する音声コマンドを認識して、ニュースを読み上げたり音楽の視聴を可能にしたりするAIスピーカーも注目技術の1つだ。音声を用いたヒューマンマシンインタフェース(HMI)は、「Amazon Echo」や「Google Home」の登場で、より身近な技術になりつつある。

 ただ、これらのシステムは、ネットワークに接続し、クラウド側で複雑な音声処理を実行するなど、大掛かりなシステムを必要とし、コストも高い。身近な白物家電や住宅設備機器に搭載するには、新たなコンセプトが必要である。

 東芝デバイス&ストレージが提案する音声HMIソリューションは、ネットワーク接続が不要で、スタンドアロンで利用を可能とした。しかも、外付け部品を極めて少なくすることで、導入コストを削減できる。

 具体的には、アプリケーションプロセッサ「ApP LiteTM(Application Processor Lite) TZ2100シリーズ」と、音声認識などを行うミドルウェアを組み合わせて、音声HMI機能を実現する。TZ2100は、動作周波数が300MHzまたは600MHzのArm® Cortex®-A9コアと、ワークメモリとして1MバイトのSRAMを内蔵した。表示機能として、2DグラフィックアクセラレーターやLCDコントローラなども内蔵した。

 音声HMI関連のソフトウェアは、東芝グループが開発した音声検出ミドルウェア「Voice Trigger」や、音声合成ミドルウェア「ToSpeak」などを用意した。特に、Voice Triggerは計算量やメモリフットプリントが極めて小さい。その上、ノイズに強く誤検出も少ない。登録した単語を認識する時間はわずか0.1秒*1)で、全くストレスを感じないほど高速である。

*1)東芝測定値

アプリケーションプロセッサ「TZ2100」による音声HMIソリューションデモの構成図 (クリックで拡大)
音声HMIソリューションのデモ動画。「エアコン冷房運転」などの音声指示に従い、瞬時に、ディスプレイ表示を変更する。

 多言語対応の辞書は現在、日本語や英語(米語)、中国語を用意している。ブースでは「炊飯器」「お風呂」など、トリガーワードとなる15単語をSRAMに登録したシステムで音声操作のデモを行った。「止める」「開始」といったトリガーワードに対応するフィードバック音声をROMに格納することで疑似的な対話型システムを構築した。

 導入コストが安価な点も大きな特長である。表示パネルを除き、音声HMIを実現するための部品コストは750〜850円を想定している*2)

*2)東芝調べ(月産1万台ベース)

 東芝デバイス&ストレージは、TZ2100を搭載した2種類のリファレンスボードを用意した。音声HMI開発スタータキットと位置付ける「RBTZ2100-6MA」は、OS非対応で音声HMIとLCD表示に用途を絞った。オーディオコーディックや外部DRAMを不要にするなど部品点数を削減するとともに、小型の2層基板で実現したこともコストダウンにつながった。もう1つの「RBTZ2100-1MA」はフル機能版で、Linux®などのOSに対応している。

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提供:東芝デバイス&ストレージ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月31日