特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
連載
» 2018年12月17日 11時00分 公開

AI自然言語処理で暗黙知に切り込む(1):シェアリングの時代だからこそ重要になるモノの価値、足りないのは何か? (1/2)

デジタル技術による変革が進む中、製造業にも非連続な変化を求める動きが広がりを見せている。その中でどのようなことを考え、どのような取り組みを進めていくべきだろうか。本連載では「AIによる自然言語処理」をメインテーマと位置付けつつ、製造業が先進デジタル技術とどう向き合うかについて取り上げる。

[山本直人/KPMGコンサルティング,MONOist]

 デジタル技術による変革が進む中、製造業にも非連続な変化を求める動きが広がりを見せている。その中でどのようなことを考え、どのような取り組みを進めていくべきだろうか。本連載では「AIによる自然言語処理」をメインテーマと位置付けつつ、製造業が先進デジタル技術とどう向き合うかについて取り上げていく。

100年に1度の生きるか死ぬかの変革

 「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保障はどこにもない。『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている」

 これは2017年11月の体制変更の際に、トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏の言葉である※)。デジタルテクノロジーの劇的な進化を背景として、自動車業界を含めた製造業は大変革の時を迎えている。本連載では、製造業および日本の置かれている状況を考察するとともに、デジタル技術、特にAI(人工知能)をいかに活用し、企業として取り組みを進めるべきかということを紹介する。

※)関連記事:トヨタがさらなる体制変更、「生きるか死ぬか」という瀬戸際の戦いに臨む

 日本の製造業が、世界のモノづくりにおいて、品質面でリードしている点については異論はないだろう。「壊れない」「使い心地が良い」「値崩れしない」など、改善活動などを通じて、モノづくりを磨き上げてきたからこそ、他の国が追随できないような高い地位を築くことができている。1つのモノの製造に皆が一丸となって取り組み、最高品質のモノを作り出せることこそが、日本の製造業の強みである。その源泉は何かといえば「同質性」にあると筆者は考えている。

「所有」から「共有」へ、そして多様なサービス化へ

 ただこうした強みがある一方で、エンドユーザーのニーズは「多様性」の方向にシフトしている。

 例えば、自動車でいえば、自動車そのものが好きで「次は何を購入するか」をいつも考えているユーザーがいる一方で、「自動車は移動の手段」と割り切り、費用対効果の面で所有から共有へという流れを求めるユーザーもいる。こうした必要な時に必要なだけ使う「共有(シェアリング)」で十分だと考えるエンドユーザーのニーズを以前は満たす手段がほとんどなかったが、テクノロジーの進化によって満たす手段が出てきた。それが現在の「MaaS(Mobility-as-a-Service)」への取り組みである※)

※)関連記事:世界を席巻する黒船「MaaS」が本格上陸へ、日本の自動車業界に迫る決断の時

 自動運転とモビリティサービスの組み合わせを中心として急速に発展しつつある自動車産業の破壊的革新は「都市の市場」ごとの単位で今後進んでいくと考えられる。

 KPMG 米国によるホワイトペーパー「Islands of Autonomy(アイランド・オブ・オートノミー)」では、「シカゴ」「アトランタ」「ロサンゼルスからサンディエゴ」を3つのアイランド(島)と見立てて移動距離区別に応じて現在の移動手段を調査した。その結果、それぞれの異なる消費者需要があることが分かった(図1)。

photo 図1:都市内の携帯電話データ(クリックで拡大)出典:KPMG米国「アイランド・オブ・オートノミー」

 これは、各都市圏における携帯電話端末の移動データをヒートマップで示したものだが、シカゴでは中心地から郊外まで徐々に密度が低くなる「日の出型」となっているのに対し、アトランタでは郊外でポイントとなる拠点がいくつか存在しそこから中心地とを結ぶような形の「スター型」となっている。一方で、ロサンゼルスからサンディエゴのエリアでは、中心地の密集が目立つ一方で、郊外にもさまざまなポイントで密集が起こっている「クラスタ型」といえる。

 自動車が所有から共有へと移り、さらにサービス化へと進むとすると、自動車のカタチにも変化が必要になる。

 例えば、シカゴであれば、市街から市街への移動が中心であり、乗り降りが容易なポッド型のモビリティが求められるだろう。一方で、アトランタは製造業が産業の中核をなしていることから、郊外に工場とともにオフィスを構えるケースが多い。そのため、郊外から郊外への移動が多く発生しており、移動型オフィスのようなモビリティが好まれるといえる。ロサンゼルスからサンディエゴのエリアでは、企業活動に加え、観光地としての顔が色濃く、ファミリー単位での長距離移動が目立つ。移動型リビングのようなモビリティがフィットするといえる。今後、自動運転やシェアリングが定着してくると、人々はニーズに即したモビリティを選択するようになる(図2)。

photo 図2:移動の特性に基づいた車両タイプの例(クリックで拡大)出典:KPMG米国「アイランド・オブ・オートノミー」

 こうした状況が生まれると、製造業も用途に沿った製品開発が今まで以上に求められるようになり、「同質性」に基づいたモノづくりだけではエンドユーザーが求めるニーズに応えられなくなると考えられる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.