時速0-100km加速が1.9秒の国産EVが発表、6輪で出力2020馬力電気自動車

タジマEVは2018年12月14日、6輪独立制御で出力2020馬力を発揮する「世界最高の性能とスタイリングを持ったハイパースポーツカー」をうたう2人乗り電気自動車(EV)の開発を発表した。

» 2018年12月17日 08時00分 公開
[松本貴志MONOist]

 タジマEVは2018年12月14日、6輪独立制御で出力2020馬力を発揮し「世界最高の性能とスタイリングを持ったハイパースポーツカー」をうたう2人乗り電気自動車(EV)の開発を発表した。同社が東京大学 堀・藤本研究室と行っている共同研究の成果報告会で明らかにした。

ハイパースポーツEV「Monster E-Runner KODE6」の3Dモデル(クリックで拡大)

 今回発表されたハイパースポーツEV「Monster E-Runner KODE6」は、総出力2020馬力を発生する独自開発のパワーユニットをCFRPモノコックに収め、前輪2輪、後輪4輪の計6輪を独立で制御し強大なトラクションを受け止める。

 パワートレインではトランスミッションを排し、モーターとホイール間は減速ギアで直結する「ダイレクトドライブ」(タジマEV)を採用。減速ギアの減速比を顧客の好みに応じて変更することで、顧客が求める加速性能と最高速性能のバランスを追求できる。最も加速性能を追求した場合には時速0-100kmの加速時間が1.95秒にも達するとし、最高速度も時速300kmを超えるという。

Monster E-Runner KODE6の概要(クリックで拡大) 出典:タジマEV

 Monster E-Runner KODE6は、2019年夏に米国で開催されるモントレー・カー・ウイークで正式発表される予定だ。価格に関しては「正式に発表していない」(同社担当者)とするが、「世の中に既に出ている生産台数が10〜20台クラスのハイパーカーと同程度となる見込み」としている。

モンスター田嶋とKEN OKUYAMAのタッグで生まれたハイパーEV

 Monster E-Runner KODE6を開発するタジマEVは、レーシングドライバーとして有名な田嶋伸博氏が社長を務めるEV専業メーカー。2017年6月に解散した次世代EV専業メーカーのSIM-Driveや、タジマモーターコーポレーションより関連事業を集約し、2018年4月に設立された。

奥山清行氏

 同車両のデザインは、フェラーリ「エンツォ」やJR東日本「TRAIN SUITE 四季島」を手掛けた工業デザイナーKEN OKUYAMAとして知られる奥山清行氏が担当。奥山氏も成果報告会に登壇し、ボディーデザインや車両の基本設計について概要を説明した。

 まず奥山氏はMonster E-Runner KODE6のデザインコンセプトについて、「エレガントなデザインとしつつも、ボディーサイドから見るとクラシカル、シンプルな雰囲気になるよう設計した」と語る。同車両の全長は4964mm、全幅は2100mmと2人乗りクーペとしてはやや大柄な車両サイズとなるが、「後輪が4輪もある車両として見ると全長も短く、オーバーハングも可能な限り切り詰めた」(奥山氏)設計とした。また、車両重心についても配慮を施し、リヤヘビーになることを避けるべく「乗員の着座位置も車両前寄りに設定している」という。

Monster E-Runner KODE6の4面図(クリックで拡大)

 エアロダイナミクスにもこだわりを見せている。車両の運動性能に見合うダウンフォース量をフロアやディフューザーから得ることができるとし、一般的なスポーツカーに見られるリアウイングやスポイラー等を排した。一方で、車両後部に流れる空気の整流やスピン発生時の安定性確保、冷却風の排出を目的とし、キャビン後部に「センターフィン」を設けていることが特徴だ。

左:Monster E-Runner KODE6のデザインスケッチ 右:Monster E-Runner KODE6のシャシー4面図(クリックで拡大)

 車両後部に搭載されるパワーユニットの冷却には、フロントバンパーから導入した空気をキャビン横とセンタートンネルへ通すことで実現しており、「開口面積が多い設計でも剛性を確保しやすいCFRPのメリットが生きた」とする。また、奥山氏のプレゼンテーション資料より、同車両のサスペンション構造は前後ダブルウィッシュボーン式になると推察される。

Monster E-Runner KODE6のモノコック構造(クリックで拡大)

デジタル設計で「顧客にデザインエクスペリエンスを楽しんでもらう」

 Monster E-Runner KODE6の設計では「フロントガラス、ドアなど全ての車両コンポーネントの設計をデジタルで行った」と奥山氏は語る。

 その理由について、奥山氏は「デジタルを活用した設計はいまやどこでも行われており、開発費の削減や設計期間の短縮化などメリットはよく知られるところだ」と前置きしつつ、「デジタルを活用した設計によって、顧客の要望を反映した3Dモデルをリアルタイムで見せることができる」と説明する。「高級車では顧客が車両カラーや内装を特注で決定するものだ。デザインエクスペリエンスを楽しむという価値を顧客に提供できることも、フルデジタル設計を活用したこのクルマの長所」(奥山氏)とする。

スクリーンに投影されたMonster E-Runner KODE6の3Dモデル(クリックで拡大)

 奥山氏は同車が発表される予定のモントレー・カー・ウイークで、過去2年間に新車を2回発表しているため、「(顧客と想定される)アメリカの富裕層コミュニティとは密にコミュニケーションが取れている」とする。奥山氏は「顧客の声を聴き、顧客のニーズに合った車両設計をした後に製造を始めるこのプロジェクトはリスクゼロだ。販売台数はしかるべきときに発表するが、その結果が現れる台数となるだろう」と自信を見せる。

 加えて、奥山氏は「この価格帯のEVプロジェクトは世界でいくつも存在するが、市販化されたものは1つもない。このプロジェクトはかなり進行しており、現実的なものと考えてもらいたい」と語った。

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