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» 2018年12月19日 10時00分 公開

ロボット開発ニュース:LOVEをはぐくむロボット「LOVOT」は先端技術満載、デザインは根津孝太氏 (2/3)

[朴尚洙,MONOist]

「LOVEをはぐくむ」ための先進技術の数々

 LOVOTの特徴は「まるで生き物のような生命感がある」「信頼関係を結ぶことができる」「社会性を感じられる」「人間の仕事の代わりはしない」「人と人とのコミュニケーションを加速させる」などとなっている。これらの「LOVEをはぐくむ」ための特徴を実現するためさまざまな先進技術を搭載した。

 外形寸法は幅255×高さ430×奥行255mmで、重さは「生後1カ月の子供と同じ」(林氏)3.3kg。これらは、LOVOTを抱きかかえることを前提とした設計の仕様になっている。またLOVOTを抱きかかえて、おなかやあご下の部分をさすると、心を開いて安心し、寝るなどの反応を取る。さすることによる反応を実現するために、全身にタッチセンサーが備えられている。

「LOVOT」はほぼ全身にタッチセンサーを備える 「LOVOT」はほぼ全身にタッチセンサーを備える(クリックで拡大) 出典:GROOVE X

 LOVOTから生命感を感じ取れるよう開発に注力したのが目だ。まぶたも含めた視線の動き、瞬きの速度、瞳孔の開きまで緻密に設計し、6層構造のアイディスプレイへの映像投影で再現した。その投影パターンは10億通りに及ぶ。声についても、多くのロボットで採用している録音した音声の再生ではなく、気道のシミュレーションに基づいて音を動的に生成するプロシージャル生成を採用している。そのためのスピーカーも自社開発した。

6層構造のアイディスプレイを採用した目音を動的に生成するプロシージャル生成を用いた声 6層構造のアイディスプレイを採用した目(左)と音を動的に生成するプロシージャル生成を用いた声(右)(クリックで拡大) 出典:GROOVE X

 生命感については動きの良さも重要であり、そのためにインホイールモーターを用いた車輪による移動を採用している。時速2〜3km程度の速度で移動できるため、ユーザーを認識すると同時に駆け寄ってくるようなイメージの動きが可能だ。また、LOVOTで重要な抱きかかえの際には、車輪を本体内部に収納するので、ユーザーの服を汚すことはない。

 LOVOTの頭部にある特徴的な「センサーホーン」は、周辺認識などを行うための照度センサー、半天球カメラ、半天球マイク、サーモグラフィーなどを内蔵している。自社開発の半天球カメラの映像を使って行う人の検出は、ディープラーニングによる顔認識アルゴリズムで実現している。また、マーカーなどを使わずにカメラ映像によってSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)であるVSLAM(Visual SLAM)による3Dマッピングで、部屋の内部の状況を把握する機能も有している。

センサーホーンディープラーニングによる顔認識 「LOVOT」の「センサーホーン」(左)と人検出に用いるディープラーニングによる顔認識(右)(クリックで拡大) 出典:GROOVE X

 センサー類は、タッチセンサーやセンサーホーンの他にも、測距センサーや深度カメラ、気圧センサー、温度センサー、姿勢センサー、NFC、障害物センサーなど多数搭載している。インホイールモーターを含めた合計13自由度の駆動部により、「LOVEをはぐくむ」ためのかわいさを持たせるための動きを実現している。

「LOVOT」のセンサー配置 「LOVOT」のセンサー配置(クリックで拡大) 出典:GROOVE X

「Core i5」に加え「Zynq Ultrascale+ MPSoC」も

 これらの「LOVEをはぐくむ」というコンセプトを実現する機能を制御しているのが、頭部に組み込まれているコンピュータで、メインボードとサブボードで構成されている。メインボードのプロセッサは、4コア構成のインテル「Core i5 8000シリーズ」と8GBのRAMを搭載するなどノートPC相当の性能を持つ。そして、サブボードは、ザイリンクスの最先端プログラマブルSoC「Zynq Ultrascale+ MPSoC」と4GBのRAMを搭載している。このZynq Ultrascale+ MPSoCのFPGA回路部をアクセラレーターとして、先述のディープラーニングによる顔認識アルゴリズムが実装されている。

 さらに、エッジサーバとLOVOTへの充電の機能を備える「ネスト(巣)」は、2コアのインテルプロセッサと8GBのRAM、1TBのストレージを搭載している。

「LOVOT」の制御ハードウェアの構成 「LOVOT」の制御ハードウェアの構成(クリックで拡大) 出典:GROOVE X

 これらの高性能ハードウェアを採用することもあり、LOVOT本体の消費電力は約50Wに達する。搭載するバッテリーの容量は89Whなので、45分間稼働、15分間充電という稼働サイクルになる。

 コンシューマー向けロボットにノートPCと同等のプロセッサを搭載することは異例だが、高価なプログラマブルSoCであるZynq Ultrascale+ MPSoCの搭載はさらに異例といえる。加えて、FPGAをディープラーニングのアルゴリズムのアクセラレーターとして用いるコンシューマー向け製品も、現時点ではほぼ存在しない。直接人に役立つ機能を持っているわけではないが、LOVOTは最先端テクノロジーが詰め込まれていると言っていいだろう。「妥協なく作ったが、それをほぼ製造原価と言っていい価格で販売する」(林氏)ことからも、かなりのコストがかかっていることが分かる。

 林氏は「LOVOTのようなロボットの産業は、自動車産業並みに大きく、ペット産業よりも大きくなると考えている。“LOVOT産業”を日本発の新産業にしたい」と述べている。

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