特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年01月08日 14時00分 公開

IT業界の成功事例は製造業にとっては失敗事例? ヤマ発が語るデジタル変革の本質MONOist IoT Forum 東京2018(中編)(2/2 ページ)

[三島一孝,MONOist]
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今を強くする、未来を作る

 これらを踏まえた上で2018年1月にデジタル戦略部を設立。同部による取り組みは「2つの目的がある。1つは今を強くすることだ。既存事業を強化し、売上高や利益を改善する。データ分析により事業部や経営の判断のサポートなどを行う。もう1つが未来を作るということだ。新しい事業や新しい価値の創造に取り組む。製品とサービスを組み合わせたサービス化の実現である」(平野氏)とする。

photo ヤマハ発動機 フェローの平野浩介氏

 これらの中で4つのフォーカスエリアを絞り込み、デジタルマーケティング、コネクテッド(ビークルなど)、データ分析、スマートファクトリーの4つを重点テーマとして取り組んだ。これらの「今」と「未来」という2つのテーマ、4つの重点領域をベースとしてデジタル戦略部では約1年で26のプロジェクトに取り組んだという。

 「例えば、ヤマハ発動機の製品を使っているユーザーは、全世界で4000万人もいる。しかし、従来はディーラー経由のビジネスがほとんどであるので、ユーザーの生きた情報を得られていない。製品ありきのビジネスモデルが出来上がっている中で、あらためてデジタル戦略部ではバリューチェーンを考えて、データを価値につなげる取り組みを進めている」と平野氏は考えを述べる。

 その中で「マーケティングの強化やスマートファクトリーなどは『今を強くする』ということにつながる。一方で、顧客との直接的な新たな関係を構築しコミュニティー化を進めることは『未来をつくる』ということにつながる」(平野氏)とする。

スマートファクトリー化への取り組み

 取り組みの1つであるスマートファクトリーでは「現状の生産オペレーションを見るとExcelのバケツリレーの状況だがそれでも今のバイクは作ることができる。ただ、2030年にはこう変わるということを考えて強い決意で変化を進めることが必要になる」と平野氏は取り組む決意の重要性について語る。

 実際に取り組む中では「さまざまなスマートファクトリーや産業用IoTの基盤が出ているが、それを単純に使えば良いわけではない。生産ラインの業務改善をまずやってみて、それに合ったところからデジタル化を進めることが重要だ」(平野氏)とする。

 例えば、ラインの中で使っている産業用ロボットでは、関節部のグリス漏れなどで精度が落ちる状況がある。従来は保全員が定期的に検査を行っていたが、これを画像とAIの活用により自動化できるようにした。「AIの活用についてはトライ&ラーンの考えで積極的に活用する。現場のメンバーも自分たちで使えば、使えるポイントが分かってくる」と平野氏は述べている。この他、プリント基板のはんだ付けの検査なども画像解析とAIを組み合わせて取り組んでいるという。

 その他、工場の建屋間の資材や部品の移動については、ヤマハのゴルフカーに自動運転機能を付けて移動させているという。2018年秋から取り組みはじめて2カ月で実際に稼働させることに成功したという。「夜でも雨でも自動運転で走行可能だ。2019年春からは実用段階で使う計画」(平野氏)とする。

 平野氏は「最終的には完全なスマートファクトリーを実現したい。リアルとバーチャルがシームレスに連携する形を目指す。仮想環境でモノを動かし、変化を吸収することにより、リアルでの負担を軽減する。これをヤマハ発動機の1つの基盤とする考えだ。そのためには、既存のERPやPLM、MESを全て連携し、さらに柔軟性を実現する生産現場や体制、調達体制などを実現しなければならない。これには今後まだ数年間は必要になるだろう」と今後の取り組みについて語っている。

データサイエンティストを育成

 デジタル変革において重要になるデジタル人材の確保については「社内で教育するしかない」(平野氏)とし、「データサイエンティストブートキャンプ」とする研修などを実施。社内での育成に本格的に取り組んでいる。さらに、2018年6月には横浜に研究開発拠点「ヤマハモーターアドバンストテクノロジーセンター(横浜)」を設置し※)、グローバルのデータ分析の中心となる機能をもたせたという。

※)関連記事:ヤマハ発動機が新横浜に研究開発拠点、ロボティクスとITの先進技術人材を獲得へ

 平野氏は「約2年間の取り組みの中でうまくいったこともあれば、失敗したものもある。ただ、現在は『失敗はあるがとにかくやってみる』という発想で取り組んでいる。取り組むメンバーには多様性を求めており、さらに取り組んでいることを外部にもシェアし、オープンイノベーション化を進めている。デザイン思考で取り組み、外の力なども活用しなければ『箱の外』となる発想は生まれてこない」と取り組んできたことを振り返っている。

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