特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年01月09日 10時00分 公開

MONOist 2019年展望:組み込みAIは必要不可欠な技術へ、推論に加えて学習も視野に (2/4)

[朴尚洙,MONOist]

先行するNVIDIAを追うインテルとクアルコム

 ここからは組み込みAIに関わる企業の取り組みを見て行こう。

 AIへの取り組みで先行してきたNVIDIAだが、組み込みAIの分野でも競合他社を一歩リードしている。開発ボードとして「Jetson TX1」「Jetson TX2」を立て続けに投入した後、2018年10月には第7世代アーキテクチャ「Volta」をベースとするSoC(System on Chip)「Xavier(エグゼビア)」を中核とした「Jetson AGX Xavier」の展開を始めている。ユーザー企業として、コマツやファナック、ヤマハ発動機、キヤノン、パナソニックが名を連ねていることは、組み込みAIのリーダーであることを示している※)

※)関連記事:NVIDIAのフアンCEOが日本で初披露、組み込みAI向け新製品「NVIDIA AGX」

「Jetsonシリーズ」のラインアップ 「Jetsonシリーズ」のラインアップ(クリックで拡大) 出典:NVIDIA

 その一方で、2017〜2018年にかけて競合他社の巻き返しもかなり進んできた。例えば、インテルやクアルコムは、NVIDIAのGPUが高価で消費電力も大きいことから「コスト当たり、消費電力当たりの性能が重要」と指摘した上で、組み込み機器やIoT向けでは自社のソリューションが最適としている。

 インテルは、CPUやCPUに統合されたGPU、FPGA、ASICなど、AIに関連するさまざまなデバイスを展開しており、用途に適したデバイスを用いる「ヘテロジニアスコンピューティング」戦略を推進している。特に、AIが注目を集める要因になった深層学習(ディープラーニング)が力を発揮する画像処理分野については、同社のデバイスで共通して適用できるコンピュータビジョンの開発プラットフォーム「OpenVINOツールキット」を無償で提供するなど、相当な力の入れようだ※)

※)関連記事:コンピュータビジョンにかけるインテル、コストとワット当たりの性能で勝負

インテルの「OpenVINOツールキット」の概要 インテルの「OpenVINOツールキット」の概要(クリックで拡大) 出典:インテル

 スマートフォン向けプロセッサで圧倒的なシェアを誇るクアルコムだが、スマートフォン市場が成熟しつつある中で、車載とIoTを成長分野に位置付けている。両分野とも重視するのはAI技術だ。IoT分野では、モバイル向けで広く採用されてきたSoC「Snapdragon」で利用可能な組み込みAI技術「NPE(Neural Processing Engine)」を展開している。NPEもインテルと同様に「ヘテロジニアスコンピューティング」をうたうが、クアルコムの場合はSoCを構成するさまざまな機能ブロックを組み合わせて活用する※)

※)関連記事:「IoT向け組み込みAIは1mW当たりや1ドル当たりの性能が重要だ」――クアルコム

クアルコムが提唱する「ヘテロジニアスコンピューティング」 クアルコムが提唱する「ヘテロジニアスコンピューティング」はSoCを構成するさまざまな機能ブロックを組み合わせて活用する(クリックで拡大) 出典:クアルコム

 そして車載分野でも、米国ラスベガスで開催中の「CES 2019」で発表した3世代目となる車載プラットフォーム「Snapdragon Automotive Cockpit Platform」において、「Qualcomm AI Engine」を投入している。

 FPGAも組み込みAIの有力な選択肢だ。ザイリンクス、そしてアルテラの事業を買収したインテルとも、FPGAがGPUと比べて低消費電力かつ低遅延の組み込みAIを実現できると訴えている。ザイリンクスが2017年3月に発表した「reVISIONスタック」※)や、インテルのOpenVINOツールキットはそのための開発環境だ。

※)関連記事:画像認識の機械学習アルゴリズムを容易に組み込める、ザイリンクスが新開発環境

 組み込みAIという観点では、ArmのプロセッサコアとFPGA回路を集積したプログラマブルSoCが採用の有力候補になる。例えば、インテルの「Cyclone V SoC」などを使って、組み込み機器向けの深層学習の実装を推進しているベンチャーのLeapMindはその事例になるだろう※)

※)関連記事:低コストFPGAで深層学習、コア技術をオープンソース化したベンチャーの狙い

 この他にも、GROOVE Xのロボット「LOVOT」が、ザイリンクスの最先端プログラマブルSoC「Zynq Ultrascale+ MPSoC」を用いて、深層学習による顔認識アルゴリズムを実装している※)

※)関連記事:LOVEをはぐくむロボット「LOVOT」は先端技術満載、デザインは根津孝太氏

 ただし、足元のAI関連のFPGA需要を見ると、クラウド/サーバ上におけるAIをはじめとしたデータ処理用途の引き合いが強い。組み込みAIとしての訴求を強化しているのは車載分野などに限定されているようだ。

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