生産管理の標準化指標「ISO22400」とは何かいまさら聞けないISO22400入門(前編)(1/2 ページ)

製造業を中心にIoTの導入が活発になる中でよく耳にするようになった、生産管理の標準化指標「ISO22400」。本稿では、このISO22400とは何なのか、その内容と導入の効果などについて取り上げる。

» 2019年01月22日 10時00分 公開

 製造業を中心にIoT(モノのインターネット)の導入が活発になっている中、生産管理の標準化指標である「ISO22400」について耳にするようになりました。

 本稿「いまさら聞けないISO22400入門」では、このISO22400とは何なのか、その内容と導入の効果などについて取り上げます。また、製造業のIoT導入における生産管理指標として、何をどう見て行けば良いかという指標管理のポイントや、最近のトレンドとなる「物流総合効率」に目を向けた評価指標についても補足を加えていきます。今回の前編、次回の後編の2回構成で解説を進めていきます。

⇒本連載の目次はこちら

1.ISO22400とは?

 ISO22400は、業種/業態や企業ごとにバラバラだったMES※)領域の評価指標を標準化したものです。ドイツ、フランス、スウェーデン、スペイン、アメリカ、韓国、中国、日本などがこの取り組みに参画しています。

※)MES(Manufacturing Execution System)は製造実行システムのことを指します。工場の生産ラインの各部分とリンクすることで、工場の機械や労働者の作業を監視/管理するシステムです。MESは、作業手順、入荷、出荷、品質管理、保守、スケジューリングなどとも連携することがあります。

 データを収集し統合管理を行う範囲については、最小単位となる設備やライン単位に収集した情報を工程単位に集約し、生産拠点、事業体、企業全体で統合化する考え方をとっています。従って、設備→工程→工場→事業体→企業→企業間で統一したものさしで評価が可能となります(図1)。

図1 図1 ISO22400の機能階層図(クリックで拡大)

2.標準化によるメリット

 標準化することによるメリットは次の3点です。

生産性指標を標準化することによってベンチマーキングが可能となる

 社内の同一設備、工程における現場の実力値を客観的に評価することができます。

 他にも異なる設備、工程についてもボトルネックとなる箇所の把握が可能です。これは企業内にとどまらず、企業のM&Aを行ったり、企業間の新規取引を行ったりする際にも有効となります。

 例えば、ある大手欧州メーカーではサプライヤーとの取引条件として、ISO22400による評価指標がシステム化されて見えることが入っています。そうすることにより取引開始後にも、常にサプライヤーのモノづくりの実力値が客観的に把握することができます。そのような取引を継続していく中で、M&Aにより大手製造業の傘下になったり、複数の製造業が統合されメガサプライヤーとなったりする際に、ISO22400の指標が適用されていれば新たな標準化が不要となります。そういった意味でも標準化指標による管理は大きなメリットがあるのです。

生産性指標を定義することでセンサーや制御機器などから必要なデータを収集できるようになる

 評価指標とその算出式が決められるため、設備やシステムを提供する側もパッケージ商品化して提供しやすくなります。最近は、設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)を見る機能があらかじめ用意されている商品をよく見るようになりました。

経営情報と生産現場の情報を統合的に可視化することができる

 経営情報となる費目ごとの原価を製品別や工程別に見て、現場改善の目標値の設定や実績値の評価につなげることが可能となります。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.