2019年は民間機による「宇宙旅行元年」となるか、はやぶさ2のタッチダウンも注目MONOist 2019年展望(1/5 ページ)

2019年は宇宙開発の話題が盛りだくさん。その中でも「有人宇宙機開発」「月・小惑星探査」「日本の新型ロケット」という3つのテーマに絞り、注目すべき話題をピックアップして紹介する。

» 2019年01月29日 10時00分 公開
[大塚実MONOist]
小惑星「Ultima Thule」の観測画像 小惑星「Ultima Thule」の観測画像。まさに雪だるまのよう(クリックで拡大) 出典:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

 2019年の宇宙開発は、1月から大きな話題が相次いだ。元旦には、米国の探査機「New Horizons」がカイパーベルト天体「Ultima Thule」のフライバイ観測に成功。太陽から65億kmも離れた天体での接近観測は史上最遠で、初めて間近に見る小惑星の様子に世界中が興奮した。今後発表されるであろう研究成果が非常に楽しみだ。

 続いて3日には、中国の月探査機「嫦娥4号」が月面への着陸に成功。嫦娥シリーズは3号機で既に同国初の着陸に成功していたが、今回着陸したのは南極付近の月の裏側だった。裏面への着陸は史上初。中国はこれを実現するために、事前に中継衛星まで打ち上げていた。月探査の最前列を走っているのは、今や間違いなく中国である。

着陸後、ローバー「玉兎2号」が活動を開始 着陸後、ローバー「玉兎2号」が活動を開始。ランダー内では、発芽実験も行われた(クリックで拡大) 出典:国家航天局

 他にも、2019年は宇宙開発の話題が盛りだくさん。本稿では、その中でも「有人宇宙機開発」「月・小惑星探査」「日本の新型ロケット」という3つのテーマに絞り、注目すべき話題をピックアップしてご紹介することにしたい。

民間による有人宇宙機が熱い!

 2019年、ようやく実現しそうなのが、民間開発の機体による宇宙旅行サービスである。

 2004年、米国Scaled Compositesの「SpaceShipOne」が、民間開発の有人宇宙機としては世界で初めて、高度100kmの宇宙空間に到達。商業宇宙旅行の実現を目指す英国Virgin Group傘下のVirgin Galacticは、SpaceShipOneをベースに大型化した「SpaceShipTwo」の開発を進めていたが、2014年に死亡事故を起こし、実用化が大幅に遅れていた。

「SpaceShipTwo」とその母船「VMS Eve」 「SpaceShipTwo」とその母船「VMS Eve」(クリックで拡大) 出典:2016 Mark Greenberg/Virgin Galactic

 同社の宇宙旅行ビジネスは、毎年のように「来年にも開始か?」という話が出ており、サグラダ・ファミリアのようにもなりつつあったが、今回ばかりはちょっと違う。2018年末に行われた試験飛行において、高度82.7kmまで到達したのだ。FAA(連邦航空局)の定義では80km以上が宇宙空間とされるため、同社はこれで「宇宙飛行に成功」としている。

宇宙空間に到達した「SpaceShipTwo」のフライト(クリックで再生)

 実際にいつ商業飛行を開始するのかという点について、Virgin Galacticからはまだ正式なアナウンスは出ていないものの、既に世界中から多数の予約を受けており、年末までに実現する可能性は高いのではないだろうか。なお1人あたりの料金は25万米ドル(約2750万円)。日本ではクラブツーリズム・スペースツアーズが公式代理店となっている。

⇒Virgin Galactic

⇒クラブツーリズム・スペースツアーズ

 宇宙旅行では米国のBlue Originにも注目だ。同社は宇宙船「New Shepard」を開発しており、これまで無人飛行を順調に重ねてきた。同社は秘密主義で知られ、開発状況はあまり明らかになっていないものの、海外報道によれば、年内にも宇宙旅行のチケットが発売される見込みとのこと。もしVirginが遅れれば、こちらが初の商業飛行となる可能性もある。

開発中の「New Shepard」 開発中の「New Shepard」。乗客は先端のカプセルに搭乗することになる(クリックで拡大) 出典:Blue Origin

⇒Blue Origin

 SpaceShipTwoとNew Shepardはサブオービタル用の機体であるが、米国では地球低軌道(LEO)でも民間開発が進んでいる。SpaceXの「Crew Dragon」と、Boeingの「CST-100 Starliner」は、ともにカプセル型の宇宙船。前者は無人飛行が2月以降で有人飛行が6月、後者は無人飛行が3月で有人飛行が8月と、ともに2019年内に実施される予定だ。

打ち上げ準備が進む「Crew Dragon」と「CST-100 Starliner」(クリックで再生)

⇒SpaceX

⇒Boeing

 2011年にスペースシャトルが退役してから、米国は自前の有人輸送手段を保有しておらず、宇宙飛行士の国際宇宙ステーションへの派遣は、ロシアのソユーズに依存していた。この状況を打破するため、NASAは「Commercial Crew Program(CCP)」を開始。資金を提供し、民間の開発を支援してきた。

 もう1つ触れておきたいのは、SpaceXの「Starship」である。将来的には火星まで見据えた巨大宇宙船なのだが、ZOZO社長の前澤友作氏が月を周回して帰ってくる宇宙旅行に使われるということでも大きな話題となった。既に垂直離着陸テスト用の試験機が完成しており、試験飛行を今春にも開始する模様だ。

⇒前澤友作氏の「#dearMoon」プロジェクト

 と、ここまでは米国の話題ばかりだったが、ちなみに日本ではSPACE WALKERが有翼機の開発を進めている。有人飛行の実現は2027年予定と、まだしばらく先なものの、宇宙空間に到達する無人機は2021年にも打ち上げる計画。2019年は米国で試験機による実証実験を行う予定とのことなので、開発動向に注目していきたい。

同社が開発するスペースプレーンのイメージCG 同社が開発するスペースプレーンのイメージCG(クリックで拡大) 出典:SPACE WALKER

⇒SPACE WALKER

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