「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
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» 2019年02月04日 10時00分 公開

次世代モビリティの行方(3):「CES 2019」に見る、MaaSのインパクト (1/3)

これまでスタンドアロンな存在だった自動車は、自動運転技術の導入や通信技術でつながることによって新たな「次世代モビリティ」となりつつある。本連載では、主要な海外イベントを通して、次世代モビリティの行方を探っていく。第3回は、「MaaS」が大きな存在感を見せた「CES 2019」における、「5G」と「クルマ」についてレポートする。

[吉岡佐和子(情報通信総合研究所),MONOist]

 毎年1月に米国ラスベガスで開催されるIT技術イベントの「CES」。今回の「CES 2019」(2019年1月8〜11日)は「5G」と「クルマ」に注目が集まった。

 まず、「5G」とは第5世代移動通信方式で、「超高速・超低遅延・超大容量・同時多数接続」などの特徴を持ち、ありとあらゆるものがインターネットにつながることが想定された通信回線だ。誤解を恐れずにいえば、4Gがスマートフォン向けの通信回線であるならば、5Gはモノ(IoT:モノのインターネット)向けの通信回線といえる。

 日本では2020年に実用化される予定だが、米国では既にベライゾン(Verizon)やAT&Tが2018年中に一部地域において5Gサービスの提供を開始している。従って、CES 2019ではこれまでのようなコンセプトではなく、5Gを活用した具体的なデバイスやユースケースの登場に期待が集まった。

通信事業者やチップベンダーは5Gをアピール 通信事業者やチップベンダーは5Gをアピール(クリックで拡大)

 一方、「クルマ」については、例年通りの自動運転技術などもさることながら、「車内体験」や「MaaS(Mobility-as-a-Service:移動のサービス化)」あるいは「Smart Transportation」に話題が集中した。日本でもバズワード化しているMaaSだが、CES 2019の議論は、単なる「移動の最適化」だけでなく、都市計画の領域まで踏み込んでいた印象だ。

 本稿では、CES 2019における「5G」と「クルマ」について取り上げたい。

5Gに対する通信事業者のスタンスと業界の反応

 2018年10月より、世界に先駆けて5Gによる固定無線アクセスの商用サービスを展開開始した米国通信事業者のベライゾンは、CES 2019の基調講演において、5Gを「第4次産業革命の汎用技術」と位置付けた。つまり、第4次産業革命は、5Gがもたらす価値により実現可能であり、その5Gをプラットフォームとして提供するのがベライゾンである、ということだ。

 一方、2018年12月より米国12都市で5Gサービスを開始したAT&Tは、「法人市場が活性化すれば、コンシューマー市場も必然的に充実してくるであろう」として、法人向け重視のサービス展開を行っていく方針を示した。

Verizonが強調する5Gの「8つの価値」 Verizonが強調する5Gの「8つの価値(Currencies)」(クリックで拡大)

 通信事業者以外に目を向けると、サムスン(Samsung)は前回の「CES 2018」で、5Gを活用したFirst Responder関連のソリューションを紹介していたが、CES 2019ではベライゾンが採用した5G関連設備を全面に出していた。また、クアルコム(Qualcomm)は5Gチップを搭載したスマートフォンによるデモを行うなど、冒頭に述べた、5GがIoT向けの通信回線である、というインパクトを示すものではなかった印象だ。

 その中で少し未来を想像させるデモを行ったのが、韓国Naver傘下のNaver Labsだ。Naver Labsは、クアルコムの5Gチップのレファレンスデザインを搭載した「頭脳を持たないロボット」をデモ展示した。天井に取り付けたカメラとセンサーがロボット周りの状況を感知し、ブース裏にあるAI(人工知能)サーバが情報を処理してロボットに動作指示を送る。デモでは、ロボットによる棒を活用したバランス芸が行われたが、5Gを活用することによりリアルタイムに処理がなされ、棒を倒すことなく見事なバランスを見せた。Naver Labsは、「5Gを用いることでロボット本体と頭脳が異なる場所にあっても、リアルタイム遠隔操作が可能となる。これをさまざまな領域に活用していくべく、研究をしている」と語った。

Naver Labsの「頭脳を持たないロボット」天井に設置されたカメラとセンサー Naver Labsの「頭脳を持たないロボット」(左)。赤丸で示した天井に設置されたカメラとセンサーが目の代わりとなり(右)、ブース後方のAIサーバが情報を処理してロボットに戻すことで、ロボットはバランス芸を披露(クリックで拡大)

 また、フランスのヴァレオ(Valeo)は、VR(仮想現実)を活用した仮想自動運転車体験「Valeo Voyage XR」を披露した。クルマのカメラがとらえた景色を、別の場所にいる人と共有しながら一緒にドライブしているような疑似体験を提供するというものだ。例えば、入院中で外出できない人にVRゴーグルを取り付け、景色をリアルタイムに共有しながら会話もすることで、あたかも一緒にクルマに乗ってドライブしているかのような体験を共有するという利用シーンを想定している。ヴァレオの説明員は「その場にいない相手と一緒にドライブし、同じ景色を見て語り合えるようになる。このサービスを完成させるのが“5G”だ」として、5Gを切望する姿勢を示した。

 自動車領域における5Gはこれまで、V2X(Vehicle to X)通信などによる安全性の確保や緊急車両などへの対応といった活用方法が語られてきた。しかし今回のヴァレオの展示は、クルマによって実現可能な「体験」に関するソリューションが提案されており、5Gが既に身近なものでこれからさまざまなサービスが生まれてくるということをうかがわせるものだった。

ヴァレオの「Voyage XR」 VRゴーグルを装着することで、あたかもクルマの後部座席に座って一緒にドライブをしているかのような体験ができる「Voyage XR」。ドライバーとの会話も可能(クリックで拡大)
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