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「日本型モノづくりのデジタル化」で勢いに乗る国産PLM、新基盤で海外対応強化製造ITニュース

NECは、導入が広がる独自のPLMソリューション「Obbligato」を強化する方針を示した。新たに基盤を刷新し、開発効率を30%以上高めた他、グローバル販売体制を強化していく。

» 2019年02月05日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 NECは、導入が広がる独自のPLMソリューション「Obbligato」を強化し、新たに基盤を刷新。オープンな標準技術の採用により開発効率を30%以上高めた他、対応CADソフトウェアを拡張。さらに海外の販売体制を強化し、グローバルでの導入拡大に取り組んでいく方針を示した。

「すり合わせ」に力を発揮する国産PLM

 「Obbligato」シリーズは、日本独自の「すり合わせ」によるモノづくりを支援する業務機能や、設計と製造の情報連携を実現するBOM(Bill of Materials)やBOP(Bill of Process)ソリューションを強みとしたPLM(Product Life cycle Management)ソフトウェアである。累計で900社以上の導入実績を持つという。

 現在は第3世代である「Obbligato III」を展開中であるが、第4次産業革命など製造業のデジタル変革の動きが加速する中、第4世代となる新基盤の開発を行うことを決めた。第4世代からは世代の番号を入れることなく製品名を「Obbligato」とし、適宜機能強化を進めることでビジネス変革に対応する考えだとする。

 新たに第4世代の「Obbligato」では、ユーザーエクスペリエンス(使いやすさ)、エコシステム構築などによる作りやすさ、つながりやすさの3つの点を強化した。

 ユーザーエクスペリエンスとしては、「業務ナビゲーター」など直観的に使えるユーザーインタフェース、企業向けSNS(Slack)と連携したコラボレーション機能を新たに提供する。

photo 「Obbligato」によるBIでの情報の可視化や「業務ナビゲーター」のイメージ画面(クリックで拡大)出典:NEC

 またAIを活用し、問い合わせへの自動応答や、蓄積された3Dデータから類似形状の部品が検索できるなど、設計業務の支援機能も搭載した。設計以外の他部門やパートナー、グローバル拠点でも展開可能なため、誰でもベテランの暗黙知などを活用できるようになり、トレーニングコストの削減などに貢献するという。

photo AI活用による設計ナビゲーション(クリックで拡大)出典:NEC

簡単な開発ツール

 作りやすさについては、サーバ側JavaScript環境「Node.js」や検索エンジン「Elasticsearch」など、オープンな標準技術の採用を推進。さらに「JavaScript」や「TypeScript」などカスタマイズ言語の拡張や、Obbligato用開発ツールの提供などにより、開発生産性を向上させた。これらにより、SIパートナーやユーザー企業の強みを生かしたソリューションを短期間で立ち上げられるようにした。

 さらに、グローバルで広く採用されているCADシステムの標準接続を強化。従来は「SOLIDWORKS」と「Inventor」への対応だったが、2019年秋に「NX」、その後「CATIA」と「Creo」にも対応する方針だとしている。さらに、OSSツール「Node-RED」の採用により、SFA、ERP、MESをはじめとした関連システムやIoT基盤などとプログラムなしに容易に接続可能とする。これにより、企業のビジネスモデル変革へ柔軟に対応できるようにする。

 OSSツール「Elasticsearch」や「Kibana」との連携なども実現し、Obbligatoとその他のシステムやIoTデータを組み合わせた情報の可視化、分析が可能となり、製造業におけるデジタルトランスフォーメーションへの対応や部門横断的な情報連携に貢献する。

photo Obbligatoがつなぐエンジニアリング基盤(クリックで拡大)出典:NEC

グローバル販売を強化

 グローバルでの展開も強化する。新たにグローバルでの販売パートナーシップなども結び、海外での対応を進めていく。従来はNECグループを通じての展開が中心だったが、今後はパートナーシップを生かした販売を拡大していく方針である。海外向けではまずキャップジェミニとパートナーシップを締結し、主に欧米に向けた提案を加速させていく。NEC ものづくりソリューション本部 PLMグループ シニアエキスパートの田上光輝氏は「従来は海外対応が弱いために、入札などで競り負ける機会も多かった。海外での展開力を強化することで、これらをカバーし、導入をさらに広げていきたい」と述べている。

 「Obbligato」の強みについて、田上氏は「もともと日本式モノづくりを体現するようなBOPの提案など、社内の設計や製造などの部門間の情報連携で評価を得てきた。デジタル変革の動きにより、設計や製造、保全の情報を一元化する動きが強まっており、さらにそれをグローバルで連携させる動きも出てきた。これらの流れの中でPLMを見直す動きが出ており、Obbligatoについてもあらためて高い評価を得ることができている」と語っている。

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