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» 2019年02月06日 11時00分 公開

AI自然言語処理で暗黙知に切り込む(2):シェアリングの時代だからこそ設計開発に求められるスピード、しかしその実態は? (1/2)

デジタル技術による変革が進む中、製造業はどのようなことを考え、どのような取り組みを進めていくべきだろうか。本連載では「AIによる自然言語処理」をメインテーマと位置付けつつ、製造業が先進デジタル技術とどう向き合うかについて取り上げる。第2回は製造業の現在の工程にどう手を入れるべきかについて論じる。

[山本直人/KPMGコンサルティング,MONOist]

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 デジタル技術による変革が進む中、製造業はどのようなことを考え、どのような取り組みを進めていくべきだろうか。本連載では「AIによる自然言語処理」をメインテーマと位置付けつつ、製造業が先進デジタル技術とどう向き合うかについて取り上げる。

 第1回では、シェアリングの時代だからこそ、サービスプロバイダーにとっては、不特定多数の人が利用するモノの品質が重要となることを紹介。製造業の競争力獲得のためには、日本品質の維持と市場投入までの圧倒的なスピードの獲得が重要であることを訴えた。これらシェアリングエコノミーが製造業にもたらす変化に対し、第2回では製造業の現在の工程をどう変化させていくべきかについて解説する。

シェアリングエコノミーの要件に合わない製造現場

 ITの進化を背景に、モノに対する要件の多様化、ライフスタイルの変化、規制の強化など、製造業を取り巻く市場構造は大きく変化している。特にシェアリングエコノミーの進展は、製造業に大きな変革をもたらすと予測されている。

 シェアリングエコノミーが行き渡れば、サービスプロバイダーはオンデマンドで人の体験要求に応じて、モノと“体験”を組み合わせて提供する時代である。ただ、人の体験要求は従来にないほど短いサイクルで変化する。製造業は、この変化する人の体験要求と、それを提供する価格感にフィットしたモノをいかにしてスピード感を持って投入できるかがポイントになる。

 しかし、振り返って現在の製造業の状況を見るとどうだろうか。製造現場に目を向けてみると、シェアリングエコノミーに要求されるスピード感の実現はかなり難しい状況であることが分かる。

 要素技術の進化、要件の多様化と複雑化により、モノづくりにおける検討項目や評価パターンは急増している。そんな状況にもかかわらず、製造現場では、人手による属人的な作業が中心となっているところが多い。「べからず集」を人力で参照し繰り返し評価を行い、デザインレビューでは熟練者が大部屋に集まり議論し、課題があれば人海戦術で対応する。

 今までは人手が潤沢で、製造現場に優秀な人材が数多くそろっていたのでそれでもよかった。実際に日本のモノづくりが強かったのはこの「現場の改善」のおかげであったのは間違いない。ただ、こうした人手を十分に確保できなくなってきているのが現状だ。知見を有した熟練者の引退が続き、開発現場のリソースが逼迫するような状況も生まれている。今後、人口減少が進む中で、これらの人手不足はさらに深刻化する。

 これらの結果、検討や評価に漏れが生じ、後工程で不具合として発覚し、大きな手戻りを生みだし、開発工数の肥大化を招いているというのが実際の現場の状況である。また、過去の知見が人の中だけに蓄積されている状況で、組織として活用できていないことで、初代製品の設計開発の際に発生した失敗や手戻りが、後続製品の設計開発でも多発しているのである。激変する時代において、製造現場で行われている作業は限界にきているのは言うまでもないだろう。

photo 現在の製造業で起こりがちな課題(クリックで拡大)出典:KPMGコンサルティング
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