スマート工場実現に向け進化するモーション制御ネットワーク、TSNにも対応スマートファクトリー

製造業ではスマート工場実現に向けた取り組みが本格化しているが、その中で工場内でより細かい粒度まで情報連携を実現することが求められている。そこで重要視されているのがモーション制御ネットワークである。新たに進化を遂げるモーション制御ネットワーク規格である「MECHATROLINK」の現状と方向性を紹介する。

» 2019年02月12日 10時00分 公開
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スマート工場化で鍵をにぎるモーション制御ネットワーク

 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの先進技術を活用し、生産性が高く変種変量に柔軟に対応するスマートファクトリー化への取り組みが本格化している。

 スマートファクトリーで目指すべき姿だとされているのが「マスカスタマイゼーション」である。マスカスタマイゼーションとは、一品一様のカスタム製品を大量生産(マスプロダクション)の生産性で実現する概念や仕組みのことである。機械が自律的な判断を行い、製造工程におけるさまざまな作業を人間による指示なしに自動で実現することで、時々刻々と変化する製造現場に合わせて変化し続ける工場が描かれている。

 例えば、消費者が色やオプション品などをカスタマイズした製品を発注すると、その受注に応じて、部品調達や生産計画などが策定され、工場では変化する生産ラインなどが、これらの個別に仕様が異なる製品群を自律的に判断して、最適な作業を行っていく。こういう形が実現できて初めて、大量生産の効率でカスタム製品が実現できる。

 これらの大前提として必要になるのが、工場内のあらゆる工程や作業の情報連携である。それも、従来取得できていた領域からさらに広げ、工場内の各機器が行う1つ1つの作業レベルで詳細なデータを活用できる形で収集する必要がある。そこで注目が高まっているのが、産業用フィールドネットワークだ。

 産業用フィールドネットワークは、製造装置などの内部で使用されるモーターやセンサー、I/Oなどの各種コンポーネントとコントローラーをつなぐ通信ネットワークだ。IoTにおいては、現場情報をどのように取得し、そして分析して得た知見をどのように現場で表現するのか、という両面で大きな役割を果たす。

 産業用フィールドネットワークにはさまざまな種類があるが、特にモーション(動き)の制御を得意とし製造装置内の制御で活躍するのが「MECHATROLINK(メカトロリンク)」である。MECHATROLINKは、2003年に公開された日本発のオープンフィールドネットワークだ。高速通信と同期性の保証が強みで、製造機械などの高速、高精度な動きの制御で貢献してきた。

photo 高速、高精度な同期制御が行えるMECHATROLINK(クリックで拡大)

新規格「MECHATROLINK-4」が描く世界

 MECHATROLINKにおいて、スマート工場化の動きに向けて新たな規格として2017年に発表したのが「MECHATROLINK-4」である。

 具体的には、3つの機能強化を行っている。1つ目は「伝送効率の大幅向上による接続ノード数の拡大」、2つ目が「複数伝送周期への対応による設計の自由度の拡張」、3つ目が「マルチマスターの採用」である。いずれも高速化や多重化などのネットワークとしての基本性能を高めつつ、IoT化によるさまざまな機器との接続や設定変更などにより、今後必要性が増す「柔軟性」への対応を強化している。

photo スマート工場 EXPO2019会場でのMECHATROLINK-4の複数伝送周期を同時に最適に扱うデモの様子(クリックで拡大)

 さらに「好評を得ているのがソフトウェアプロトコルスタックだ」とMECHATROLINK協会 事務局代表 下畑宏伸氏は述べる。

photo MECHATROLINK協会 事務局代表 下畑宏伸氏

 「MECHATROLINK-4 マスターソフトウェアプロトコルスタック」は、従来は専用のハードウェアが必要だったMECHATROLINK機器のマスターを、ソフトウェアのみで可能としたもの。産業用PCなどに同ソフトウェアプロトコルスタックを組み込むことで実現可能だ。

 「ユーザーの要望として、マルチプロトコル対応を求める声が高まっている。従来はハードウェアの開発が必要となり、機器に組み込む場合、産業用フィールドネットワークプロトコルも固定化されていた。ソフトウェアプロトコルスタックを活用することで、切り替えなども容易にできるため、適用するプロトコルを決めずに製品開発を行うことができる。期待感は高い」と下畑氏は語る。

photo スマート工場 EXPO2019会場でのMECHATROLINK-4 マスターソフトウェアプロトコルスタックのデモ。産業用PCにより制御を行っている(クリックで拡大)

デバイスレベルからの情報を活用できる「Σ-LINK II」

 一方、「MECHATROLINK-4」と合わせてスマートファクトリー時代に最適な通信規格として、MECHATROLINK協会が提案しているのが「Σ-LINK II」である。「Σ-LINK II」は、サーボアンプとサーボモーター間のエンコーダー用通信を発展させ、センサーなどのI/O機器の情報を取得可能としたもの。センサー情報を直接サーボアンプに取り込むことでセンサーデータとモーションデータの一元管理が可能となる。MECHATROLINKとの連携によりセンサーデータとモーションデータを同期させることもできる。

 下畑氏は「サーボモーターからのデータを簡単に取得できるために、ロボットや産業用機械などのさまざまなメーカーから良い反応を得ている。異常監視などにも活用できる他、省配線などにも貢献する」と手応えについて述べている。

photo スマート工場 EXPO2019会場でのΣ-LINK IIのデモ(クリックで拡大)

新たにTSNへの対応も

 新たに注目される「TSN(Time Sensitive Networking)」に対応していく姿勢も示している。TSNは「Time Sensitive Networking」を指し、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証し、リアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格である。IEEEなどの国際標準規格を複数組み合わせる形で実現している。時刻同期や優先的に通すデータを制御する機能などを加えることができるため、リアルタイム性を確保できる点が特徴だとされている。

 MECHATROLINKは製造装置や産業装置内のモーション制御を担う場合が多いため「マスタークロックとしてTSN対応を進めていく考えはあまりない」(下畑氏)とするが、「工場内のネットワーク環境がTSN対応する中で、製造装置内のMECHATROLINKネットワークを、工場全体のTSNネットワークで同期した時刻と合わせるような形に開発を進めていく」(下畑氏)としている。

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提供:MECHATROLINK協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月25日