「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

Armは自動運転向けプロセッサの覇権を握れるか、本命は5nmプロセスArm最新動向報告(3)(3/3 ページ)

» 2019年02月14日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]
前のページへ 1|2|3       

2022年ごろに自動運転レベル4向けの5nmプロセッサが登場か

 当面Armは、これらCortex-A76AEとCortex-A65AEの組み合わせをADAS向けのソリューションとして提供していく方針であり、これに続くHercules-AEは2020年以降になる見込みだ。先ほど挙げたPhoto01/02には製造プロセスノードが載っていないが、こちらの記事※3)で示したように、Herculesの製造プロセスは7nm+(つまり7nmのEUV)もしくは5nmということになっている。

※3)関連記事:加速するArmのプロセッサロードマップ、ソフトバンクによる買収が契機に

 現在、TSMCとサムスンが7nm EUVのリスク生産を行っている最中であり、2019年後半から本格的な量産が始まる。最終的にSoCが出てくるのが2020年、5nmについては順調に行けば2021年中であるが、まぁ2022年くらいを予想しておくのが妥当なところだろう。これとこの推定(図6)を照らし合わせると、Cortex-A76AEとCortex-A65AEの組み合わせは、米国自動車技術会が定める「SAE J3016」に規定されたレベル3の自動運転がターゲットであり、次のHercules-AEは7nm+でプロトタイプ、量産は5nmを使ってレベル4の自動運転をターゲットにする形になると思われる。

図6 図6 これは2018年12月8日の記者説明会でロバート・デイ氏が示したもの。中央に自動運転レベルとそれぞれの要件が、その下に実現予定(もしくは実現した)の年が示されている。レベル3については、2018年9月に発表された「Audi A8」の第4世代がレベル3の自動運転を実装したので2018年ということになっている(クリックで拡大)

 この話は別のセッションでもあった。10月18日に行われた“Arm and TSMC Enable Automotive SoC Designs”の中で、Armは現在自動車向けのIPはTSMCの「16FFC」を提供中だが、今後はさらに微細化したプロセスに向けてIPを用意する、としている(図7)。

図7 図7 まぁArm自身、AE(Automotive Enhancement)は7nm以降がターゲットと明言しているから、事実上明らかではある(クリックで拡大)

 具体的に何、という話はArm自身言及していないが、Armに続いて登壇したTSMCがこういうスライド(図8)を出した時点でまぁ答えがでているとはいえる。

図8 図8 5nmについては、プレミアムモバイル及びサーバ&AIアクセラレータ向けに「Design Start」を用意するという話は出たが、車載向けにはまだ言及がなかった(クリックで拡大)

 ちなみに、TSMCは自動車向けに「TSMC9000A」というアセスメントを用意しており、7nmプロセスにもこれが適用される。恐らく、Armの7nmや7nm+/5nm向けのフィジカルIP/POP IPなど、TSMC向けのものはこのTSMC9000Aに準拠する形でリリースされるものと思われる(図9)。

図9 図9 非車載向けの場合、通常だとPre-Silicon/Siliconの2つのアセスメントを行った後にVolume Production(量産)に入る形だが、TSMC9000AはSilicon AssessmentとVolume Productionの間に入る形で、より厳密に車載向けの要件に合致しているかを確認する(クリックで拡大)

 7nmとか7nm+/5nmなどのプロセスは、デザインコストを含むNRE(開発コスト)が膨大な金額になるため、16/14nm FinFETの時に比べると移行の動きが遅いなどといわれている。しかし、ことADASに関する限りは7nm以下でないと実用にならない(5nmあたりが本命になりそう)ということもあってか、Arm自身もこの辺りのプロセスをターゲットに現在IPをそろえている真っ最中である、という動向が伺えたのがArm TechCon 2018の自動車関連の最大の話題としてもよいと思う。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.