特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年02月15日 11時00分 公開

製造業IoT:製品を売るだけでは「昭和の考え」、パラダイムシフトにどう立ち向かうか (1/2)

「第18回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2019)」において「超スマート社会におけるオープン&クローズ 戦略、知財マネジメント」をテーマとした特別シンポジウムが開催され、その中で産学連携推進機構理事長 妹尾堅一郎氏が「産業パラダイムの大変容を俯瞰する」と題し、第4次産業革命における産業構造の変革について語った。

[長町基,MONOist]

 「第18回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2019)」(2019年1月30日〜2月1日、東京ビッグサイト)において「超スマート社会におけるオープン&クローズ 戦略、知財マネジメント」をテーマとした特別シンポジウムが開催され、その中で産学連携推進機構理事長 妹尾堅一郎氏が「産業パラダイムの大変容を俯瞰する」と題し、第4次産業革命における産業構造の変革について語った。

優れた製品を売るだけのビジネスモデルは「昭和の考え」

 妹尾氏はまず「大型旅客機向けの大型エンジンメーカーはロールスロイス、GE、プラット・アンド・ホイットニーの3社だが、これらの企業はエンジンを売らずにもうけている。また、世界最大シェアのタイヤメーカーであるブリヂストンは、業務用タイヤは基本的にタイヤを販売していない。どうやって稼いでいるのか」とセミナー参加者に問いかけた。この答えは「稼働課金」となる。飛行した距離や出力パワーなどにより料金をもらうビジネスである(ブリヂストンはサービスパッケージ)。

photo 産学連携推進機構理事長 妹尾堅一郎氏

 さらに妹尾氏は「米国海軍は、ヘリコプターをどこから買っているのか」と重ねて問いかけた。この答えはITベンダーであるIBMである。

 これらの問いかけが示すように、これまでの商慣習や常識的な発想では思い描けないような現実がビジネスの現場に何が起こっている。この背景について妹尾氏は「産業生態系のパラダイムチェンジが起こっている」と指摘。そして、高い技術で優れた能力のある製品を開発し、それを売ってもうけようとするのは「昭和の考え」と切り捨てた。

 パラダイムは、日本語では「枠組み」で、言い換えると「常識」となるという。産業の常識や昭和の常識が変わっていることに対応するためには「パラダイムがどう構成されているのか」「パラダイムの過去、現在、未来はどうか」などを考える必要がある。

技術、制度、社会文化の3つの面で動くパラダイム

 パラダイムは技術、制度、社会文化の3つの要素が相互に関係して産業、市場を大きく変容させる。実際、産業革命は蒸気機関の発明などの技術で起こり、制度や、文化に影響を与えた。また、自動車の発明で社会は便利になったが、その進化の過程で排気ガスなどの公害が発生した。それを防ぐために排気ガス規制などの制度が生まれ、それに対応するために低公害車が開発された。さらに、交通事故に対してシートベルトが生まれ、法律で全ての車(乗員)で適用されるようになった。このように技術のイノベーションは「文化的安心」と「制度的安全」の2つの軸で大きく動くことになる。

 妹尾氏は「このパラダイム論を持ち出したのはこの3つに役者がそろってきたためだ」と訴える。技術面では「CPS(サイバーフィジカルシステムズ)」がある。さらに制度面ではSDGs(国連の17の持続可能な開発目標)がある。そして、社会文化面はSSC(サービス、シェアリング、サーキュラー)の動きがある。

 ドイツの考え方では現在は第4次産業革命の最中だという。第1の産業革命は18〜19世紀に起こり、水と蒸気が原動力となり「機械生産」が始まった。その後、電気エネルギーを動力とし、分業管理による「大量生産の時代」(第2の産業革命)が起こった。そして、電子技術やコンピュータの導入と活用による「自動生産」(第3の産業革命1970年代〜)が続いた。現在はCPSによる「新しい生産」(第4次産業革命インダストリー4.0)の時代が到来している。

 また、米国(GE)は産業革命を第1の波「フィジカル側の革命」として、第2の波が「インターネット革命」(コンピューティングパワーと分散機器、ネットワークの台頭などによるサイバー側の革命)そして、第3の波をフィジカルとサイバーが一緒になった「インダストリアルインターネット革命」(機器ベースの分析、自動化、予測など)としている。

 この2つに対して、日本では小川紘一氏(東京大学 政策ビジョン研究センター 客員研究員)が第1の経済革命を「経験の産業化」、第2の経済革命を「自然法則の産業化」、第3の経済革命を「論理体系の産業化」と位置付けた。こうした議論の上で日本(内閣府)は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、新たな社会として超スマート社会の実現を訴える「Society 5.0」を推進している。サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる、人間中心の社会実現を目指している。

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