クラウドからエッジまでカバー、ウインドリバーの自動運転向けソフトウェア製品群車載ソフトウェア

ウインドリバーは2019年2月22日、東京都内で記者説明会を開き、自動運転技術やコネクテッド技術を搭載した次世代自動車向けに、エッジからクラウドまでカバーするソフトウェア製品群「Chassis」について発表した。

» 2019年02月25日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 ウインドリバーは2019年2月22日、東京都内で記者説明会を開き、自動運転技術やコネクテッド技術を搭載した次世代自動車向けに、エッジからクラウドまでカバーするソフトウェア製品群「Chassis」について発表した。

 同製品群には、リアルタイムOS(RTOS)やLinux、AUTOSAR Adaptive Platform向けソフトウェアサービススタック、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)やソフトウェアライフサイクルを管理するソリューションの他、ECU(電子制御ユニット)向けのハイパーバイザーなどが含まれる。今回、インフラやデータセンター向けの仮想化ソフトウェアプラットフォーム「Titanium Cloud」も同製品群に統合した。

 これにより、次世代自動車のE/E(電気電子)アーキテクチャに求められるECUの統合を実現するとともに、車載ソフトウェアのOTAまで同社の製品群でカバーする。Chassisは現在、自動車メーカーやサプライヤーに試験的に提供され始めている。

ソフトウェア製品群「Chassis」と提供するサポートサービス(クリックして拡大) 出典:ウインドリバー

ECUを100個から3〜4個に減らす

ウインドリバーのマーカス・マキャモン氏(クリックして拡大)

 自動車は、コネクテッド化や自動運転化、電動化に向けた進化が進んでいる。その中では、車両の高度な制御にはECUの機能同士が高度に連携することが欠かせない。また、機能ごとにECUが独立して分散した現在のアーキテクチャは販売後に機能を拡張する余地が少なく、効率的で迅速なソフトウェア更新も難しい。

 そのため、ECUを統合して上位にドメインコントローラーやゲートウェイを置くアーキテクチャに移行することが必要になっている。これについて、ウインドリバー オートモーティブ担当バイスプレジデントのマーカス・マキャモン氏は「自動車メーカーは約100個のECUを、将来的に3〜4個に集約したいと考えている」と解説した。

 さらに、自動運転システムやコネクテッドサービスには、車両から得られるさまざまなデータを低遅延に処理することが不可欠だ。そのためには、全てをクラウドもしくは車両で処理するのではなく、クルマの中にエッジコンピュータを設け、エンドノードで大量に生成されるデータを処理するエッジコンピューティングを活用することが重要となっている。

 ウインドリバーは、ソフトウェア製品群のChassisと機能拡張によって加わったTitanium Cloudによって、車両からクラウドまでカバーする。通信や航空、防衛、産業用などミッションクリティカルなインフラでの長年にわたる実績を自動車向けに生かす。また、セキュリティアセスメントなど開発をサポートするソリューションサービスも提供する。

ECUの仮想化をサポート

ECUの仮想化からクラウド連携までカバーする(クリックして拡大) 出典:ウインドリバー

 Chassisは今後進むECUの仮想化に向けて複数のソフトウェアをカバーする。1つはRTOSだ。自動車向け機能安全規格ISO 26262で最も厳しい安全要求レベルASIL Dを満たし、幅広い業界で採用されている。また、ハイパーバイザーには、「エアリンク635」というソフトウェアを組み合わせることにより、軽量で高い処理性能を持たせているのが特徴という。ハイパーバイザーはユースケースごとに異なる仕組みを提供する。「ある一定のパラメータの設定で使えるようにするだけでなく、機能によってはフレキシブルかつダイナミックに変更できるようにする。これにより、HMIから車両の制御まで、ECUの仮想化を広くサポートする」(マキャモン氏)。

 ウインドリバーは、消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2019」(2019年1月8〜11日、米国ネバダ州ラスベガス)でルネサス エレクトロニクスのSoC(System on Chip)「R-Car H3」を用いてメーターとインフォテインメントシステムを統合制御するデモンストレーションを行った。

 メーターを動作させるウインドリバーのRTOSと、インフォテインメントシステムを動かす車載Linuxを、ハイパーバイザーによってR-Car H3に搭載されたGPU上で統合処理させるという内容だ。デモにはドライバーモニタリング用のカメラも組み合わせており、眠気を検知するとオーディオの音量を上げるなどの連携機能を実演した。

 マキャモン氏は、「自動車の開発は、分野ごとに分かれた現在の縦割りの組織から、水平統合を進めなければならない。水平統合が進むということは、自動車メーカーからサプライヤーまでソフトウェアについて知る必要があるということだ。さらに、自動車メーカーやティア1サプライヤーが担当する領域のアプリケーションほど、ソフトウェアが複雑で大規模なものになる。そこで発生する課題の解決に貢献していきたい」と語った。

縦割りから水平統合に組織を変えることが求められているという(クリックして拡大) 出典:ウインドリバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.