特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2019年02月27日 08時00分 公開

スマートアグリ:桃太郎トマトの収量を1割向上、創業180年の種苗メーカーが農業IoTに取り組む

NTTテクノクロスとタキイ種苗は、IoTを活用したトマト農家への新しい栽培アドバイスの方法を開発するために共同実験を行うと発表した。実験結果を基にした栽培アドバイスをトマト農家に行い、出荷品質を満たした収量を1割向上させることを目指す。

[朴尚洙,MONOist]

 NTTテクノクロスとタキイ種苗は2019年2月25日、IoT(モノのインターネット)を活用したトマト農家への新しい栽培アドバイスの方法を開発するために共同実験を行うと発表した。実験結果を基にした栽培アドバイスをトマト農家に行い、出荷品質を満たした収量を1割向上させることを目指す。

 今回の実験は、タキイ種苗が出資するTファームいしい(徳島県石井町)のビニールハウスなどで同年3月1日〜6月末まで行う予定。ビニールハウスなどの施設内に市販の温度湿度センサーを複数設置し、無線ネットワークを利用してデータを収集・蓄積する。また、収集したデータをスマートフォンでリアルタイムに確認できるアプリケーションを開発します。このアプリケーションをタキイ種苗の栽培アドバイスの担当者が利用しながら、農家にトマトのサイズや品質安定化のための適切な栽培アドバイス方法を検討するという。

共同実験を行うビニールハウス実験の対象となるトマト「桃太郎」 共同実験を行うビニールハウス(左)と実験の対象となるトマト「桃太郎」(右)(クリックで拡大) 出典:NTTテクノクロス
共同実験で使用するセンサー 共同実験で使用するセンサー(クリックで拡大) 出典:NTTテクノクロス

 実験の役割としては、NTTテクノクロスが農業現場での無線ネットワーク環境構築、センサーを用いたデータ収集、アプリケーション開発を、タキイ種苗がデータ収集に必要な栽培ノウハウ提供、アプリケーションを活用した栽培アドバイスの効果検証を担当する。無線ネットワークとしては、ビニールハウスなどの施設の広さがサッカーグラウンドほどあることからLPWA(低消費電力広域)ネットワークを活用する。センサーデータを集約した後の施設外との通信についてはLTEや光通信などを用いる。

 今回の実験では、タキイ種苗が開発したトマトの人気品種「桃太郎」を主な対象として実施する。桃太郎の結果を基に、他の品種への展開拡大も検討する。

 1835年創業のタキイ種苗は、高品質の野菜や草花の種子と苗を生産、供給しており、野菜種子の売上で国内トップシェアの種苗メーカーとして知られる。同社が開発した品種としては、桃太郎の他にも切花向けヒマワリ「サンリッチ」などがある。また、種苗の販売に加えて、これまでに培った農業ノウハウを基に農家への栽培アドバイスも行ってきた。

 ただし、この栽培アドバイスは、例えばトマトのハウス栽培の場合、使用するセンサーは1カ所だけに設置した有線センサーだけで、基本的には作業員の経験や感覚に基づくものだった。今回の実験では、施設内に複数のセンサーを設置してより正確な温度と湿度のデータを取得し、ヒートマップ表示などによってリアルタイムにデータを確認しながら適切なアドバイスを行えるようにすることを目的としている。

NTTテクノクロスとタキイ種苗による共同実験のイメージ NTTテクノクロスとタキイ種苗による共同実験のイメージ(クリックで拡大) 出典:NTTテクノクロス

 今後両社は、IoTによって得られる農業データを活用し、環境制御や生産管理による収量アップ、栽培データ分析による品質向上やブランド化、作業工程の見える化や自動化などによる省力化に取り組む方針。AI(人工知能)などの先端技術と栽培ノウハウを融合させた実験も実施し、さらなる農業の発展に貢献するとしている。

 近年、ビニールハウスなどの施設内の環境を測定する機器や制御機器が発展し、トマト栽培ではこれらの機器を用いた環境制御技術も開発され、収穫量の増加が可能となってきている。しかし、これらの環境制御技術だけでは、施設園芸内の環境を均一化し果実サイズ、食味、機能性などの出荷基準を満たした品質の果実を収穫することが難しいのが一般的な現状だという。

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