4K・8K映像とインタラクティブ性の融合が製造業にもたらす新たな世界4K・8K映像基礎解説(1/3 ページ)

2018年12月に国内で4K・8K放送がスタートし、本格的な高解像度のテレビ放送の時代が始まった。本稿では、この4K・8K映像という新しい技術の概要や、インタラクティブ性との融合によって製造業にもたらされるであろう2020年代の新たな世界について解説する。

» 2019年02月28日 10時00分 公開

 2018年12月に国内で4K・8K放送がスタートし、本格的な高解像度のテレビ放送の時代が始まりました。2018年大みそかの「第69回NHK紅白歌合戦」は4K・8K放送も行われていたので、4K放送(50インチTV)と2Kの地上波放送(40インチTV)を同時視聴して見比べてみましたが、4K放送の映像の鮮明さには感動するものがありました。

2K、4K、8Kの比較 2K、4K、8Kの各映像の比較 出典:総務省

 筆者は、2020年代に、4K・8Kの高解像度映像技術とインタラクティブ性の融合で映像による技術革命が起こるのではないかと考えています。本稿では、筆者のこれまでの技術者としての経験を踏まえて、4K・8K映像という新しい技術の概要や、インタラクティブ性との融合によって製造業にもたらされるであろう2020年代の新たな世界について解説したいと思います。

NHK「BS4K・BS8K」のWebサイト NHK「BS4K・BS8K」のWebサイト。4K8Kの特長を紹介している(クリックでWebサイトへ移動)

1.映像技術の進化がもたらすスポーツのエンターテインメント性の変化

 4Kテレビは、2013年1月に米国ラスベガスで開催された消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2013」で紹介されてから、実用化までかなり時間がかかった印象があります。世界初の4K放送は、2017年に韓国で始まりました。2018年2月の平昌冬季オリンピックでも、韓国の主要地域で4K放送が実施されたとのことでした。日本では、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックをはじめとする2019〜2020年に開催されるスポーツのビッグイベントで4K放送が計画されています。このように、映像技術の進化はスポーツと切っても切れないものとなっています。

日本国内における4K・8K推進のためのロードマップ 日本国内における4K・8K推進のためのロードマップ(クリックで拡大) 出典:総務省

 IT技術、映像技術は、1960〜80年代に軍事向けに研究開発され発展しました。インターネットも、もともとは軍事利用するための仕組みであり※1)、商用化されたのは1980年代後半でした。しかし1990年以降になると、映像技術はスポーツ放送向けに開発された技術やシステムによって進化し、実用化されています。

※1)インターネットは、米国国防総省が出資したARPANET(Advanced Research Projects Agency Network:高等研究計画局ネットワーク)から始まったといわれています。

 特筆すべきものとしては、ビデオ判定システムと呼ばれる審判を補助するシステムがあります。世界最高峰のスポーツであり、全米No.1の人気スポーツであるNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のビデオ判定(インスタント・リプレイ)が最初といわれています。これは、審判が下した判定を映像によって検証するシステムであり、MLB(メジャーリーグベースボール)のリプレイ検証や、2018年のサッカーワールドカップで注目されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)制度などにも利用されています。プロテニスの試合に導入されているホークアイ(Hawk-Eye)では、球速200km以上のサーブやストロークショットのイン/アウトの判定結果が有効とされます。2019年1月の全豪オープンテニスにおいて、大坂なおみ選手が決勝進出を決めたポイントは、このホークアイの結果によるものでした。このビデオ判定システムの進化には、1000コマ/秒以上の記録が可能なハイスピードデジタルカメラの進化が寄与しています。

ホークアイによるテニスの判定結果の例(クリックで再生) 出典:Hawk-Eye Innovations

 ビデオ判定システムは、判定を「より公平に」「透明性を確保」するためのものでしたが、現在ではビデオ判定の映像でさえもエンターテインメント性を生む効果をもたらしていて、新たなスポーツの楽しみ方を演出しています。

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